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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「日本人妻の母が見た
ドイツの七不思議」

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにお届けします(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。


この秋、私の両親がそろってドイツに滞在していました。

石川県からやってきた60代も後半になる彼らが、ミュンヘンを拠点にうろうろ、おろおろ。
「珍道中」としか呼べないような約1ヵ月の旅でしたが、私たちの暮らす国をじっくり見せてあげられ、遠く離れて暮らす親不孝気分も少しは薄らいだように思います。

とくに海外旅行経験の少ない母は、私にはすでに普通のことになりつつあるさまざまな光景に感じ入った様子。
ドイツに限った話ばかりではありませんが、今回は私の母がとても驚いたという日常風景をご紹介します。

その一、犬がいい子

「ドイツの犬はなんであんなに大人しいのかしら? 電車にバス、レストランや高級デパートのなかでも、大きな犬が従順にご主人さまの足元に控えているのは本当にびっくり!」

→私も、当初これには驚きました。子牛ほどの大きさの犬がルイ・ヴィトンの店内にいるのを見たときには、どこかの“セレブ”が買い物に来て、特別に許されているのかと思いましたが、どうやらそうではないらしい。

実は、ドイツでは動物の売買が法律で禁止されていて、ペットを気軽に店舗で購入することはできません(ネズミや鳥、ウサギなどの小動物をのぞく)。
犬を手に入れるには、ブリーダーや知人から譲り受けたり、施設から引き取ったりするしかなく、お気に入りの犬に出会えるのを何年もかけて待つ人もいるそうです。
おまけに、犬を飼う人には特別な税金も課せられるそうで、はじめから犬を飼うことへの心構えが違うわけです。

もちろんたまにはちょっとやんちゃな犬も見かけますが、ご主人さまにしっかりしつけられた犬たちは本当にマナーがよく、公共の場にいても迷惑なんてことはありません。
私は勝手にドイツ名物のひとつだと思っています。

その二、子どももいい子

「まだ小学校にもあがらないような子どもたちが、美術館でまじめに作品を見ているのね! ちっちゃな耳にオーディオガイドまでつけちゃったりして……すごいわ~」

→この場面もよく見かけます。
ミュンヘンの近代絵画美術館「ノイエ・ピナコテーク」では、かの有名なゴッホの「ひまわり」を観ることができるのですが、その「ひまわり」を4歳くらいの男の子が地べたに転がってのんびり眺めているのを見て、「なんて贅沢者!」と嫉妬したものです。
多くの美術館は広々として来館者もそれほど多くないので、両親も子どもを連れてきやすいのでしょう。

もっとも、夫はこれには異論あるらしく、「うちの姪っこ甥っこにはぜったいムリだね!」と断言していますが。

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その三、路上駐車上等!

「ここではどんな小道でも、両脇にぎっしりと路上駐車してあるのね。上手に縦列駐車ができない人は車を持てないわね~」

→都市部に限った話ですが、街並みや古い建物を保存するために駐車場を確保できないことが多く、住民たちは、それぞれの住居近くのエリア内であれば路上駐車が許可されています(料金は1年に30ユーロ程度 ※地域によって異なります)。
住民以外のドライバーは、「有料路上駐車スペース」を探してあっちへ行ったりこっちへ行ったり。苦労してスペースを見つけなくてはいけません(20分で20セント程度 ※同)。

もちろん、ぎりぎりの隙間に車を滑り込ませる縦列駐車のテクニックも必須。
ドライビングセンス皆無の私は、ドイツの都市部にいるうちはぜったい免許を取らないと決めています。

その四、トイレがいろいろ困る

「便座は位置が高くて冷たいし、トイレットペーパーは固いし、ウォシュレットもないし。これにずっと毎日座らなきゃいけないなんてあなた、かわいそうに……」

→ラップや綿棒、サニタリー用品など、日本製品のほうが圧倒的にすぐれている、と感じるものはいくつかありますが、トイレ回りもそのひとつです。
ドイツ人はお尻の皮が厚いのでしょうか、ゴワゴワのトイレットペーパーや、毎回「ひゃっ」と声をあげたくなるような冷たい便座に座らせられるのは正直つらい。
(あたたかい便座は日本発で、外国では一般にはほとんど普及していないので、日本人のお尻の皮が薄いのかもしれません)

我が家では便座カバー導入にあたり、清潔の面からカバーをはめたくない夫と「トイレットファイト」しているところです。

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その五、日曜日はお店が定休日

「日曜日はお店がみんな閉まっちゃうのね! お休みの日に買い物に出かけたいと思うのが日本人の心情なのに……」

→レストランやカフェ、パン屋をのぞいて、ドイツでは日曜日の商店の営業は基本的に禁じられています。
(ミュンヘンはとくに厳しく、逆にベルリンやハンブルクでは24時間ショップなどもあります)
土曜の夜に「あっ、あれが切れてたんだっけ」と思ってもときすでに遅し。
唯一開いている中央駅構内の商店まで行くか、月曜の朝までなんとかやり過ごすしかありません。
おかげで土曜の夕方のスーパーマーケットなどは大変な混雑。商品の棚も品薄になります。
そんなに一生懸命買い物しなくても、たった1日のことなのに……とも思いますが。

その六、キセルが簡単?

「ドイツの駅には改札がないのね。バスや路面電車でも切符をチェックされることもないし……。切符をまじめに買っている人がバカを見ちゃうんじゃない?」

→そう、私も初めてドイツに来たときには、「あれ? 切符売場と改札はどこ?」なんて思って歩いているうちにホームに到着。滑り込んできた電車に乗って、再び何事もなく下車してしまったことがありました(ごめんなさい)。
切符販売機は駅の隅にぽつんと置かれていることが多く、改札替わりの刻印器も、「え、これが?」というようなちゃちで小さなもの。

マンスリーチケットなどを持っている住民たちはどんどん素通りをしていきますし、ルールを知らなければ、見逃すなというほうが難しい。
ですが、きちんと切符を買って乗車するのは当然の義務。
もちろん、たまに警察が見回りをしているので、有効な切符を持っていないとなったら大変! ミュンヘンでは言い訳の余地なく40ユーロの罰金を払わなくてはいけません。

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その七、電車内のベビーカーに優しい

「電車のなかで、ベビーカーと一緒のお母さんを本当によく見かけるわよね。どの男の人も気持ちよく手伝ってあげているようだし。日本でもこういう風にならないかしら?」

→近ごろ日本でも議論が盛んなベビーカー問題。
ドイツでは、日本のものよりずっと巨大なベビーカーを混雑した車内に持ち込む母親たちをよく見かけますが、それに対して苦情を言う人に出会ったことはありません。
もっとも、東京のような極端なラッシュアワーがなく、車内も大きめにできているせいもあるでしょう。
それに、もし母親たちに苦情を言う人がいたら、「私たちは正しいことをしている。なんか文句あるのか!」と返り討ちに遭うに違いありません。


以上、私の母が驚いた「ドイツの七不思議」でした。
お城や美術館、観光名所にもたくさん行ったのに、彼女が気になったのは日常の風景ばかりのようで……。


イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年10月26日公開

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