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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「恐るべし……
ドイツの結婚式(前編)」

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにご紹介。ドイツの結婚式に初めて参加した日本人妻。日本とドイツでどこまで違うのか、想像を超える体験が待っていました(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。

バージンロードを歩いちゃダメ!はおかしい?

舞台は片田舎の農場。
牛やロバに囲まれて、民族衣装を着た男女がビアジョッキ片手にひと晩中歌い、踊る。
そんな結婚式に、まさか自分が出席することになるなんて……。

ある日、友人カップルから届いた結婚式の招待状の案内に従って、私たちはミュンヘンから1時間半ほど車を走らせ、時間通りの午前11時に小さな町の教会に到着しました。
集まってきた招待客のなかには、地方独特のかわいらしい民族衣装を身に着けた人の姿も多く見られます。

バージンロードを踏まないように回り込んで席についた私を見て、なんと日本在住だという後ろの席のドイツ人女性が笑いながら話しかけてきました。
「なんで日本人って新郎新婦以外はバージンロードを歩いちゃダメって思い込んでるの? 私も日本での結婚式に出席して、『その上を歩いちゃダメだよ』と注意されたことがあるのよね」
でもね、と彼女は一拍置いて、
「プロフェッショナルなのはワタシのほうデショー!!!」
と突然(日本語で)叫びました。どうやら日本でのその出来事が相当お気に召さなかったようです。

そんな挨拶を交わしているうちに、厳かなパイプオルガンの音が流れ、式が始まりました。

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新郎新婦は馬車に乗って披露宴会場へ

日本の友人たちの「キリスト教風」の結婚式には数えきれないくらい参加しましたが、正式なプロテスタントのセレモニーに出席するのは初めてのこと。
新婦は中国人で、2度目の結婚。5歳になる娘も一緒です。ふたりが乗り越えた数々の障壁を思うと思わず目頭が熱くなります。
讃美歌斉唱に、指輪交換、誓いのキス。
おなじみの流れですが、牧師さんの説教を聞いている(ドイツ語のためほとんど理解できないくせに)と、静かな感動が胸に広がります。

教会を出ると、なんと、2頭立ての馬車が新郎新婦を待ち構えていました。
招待客の車がクラクションを鳴らしながら、ふたりを乗せた馬車のあとについて、ゆっくりと披露宴会場へ向かいます。
(ドイツではお祝い事があると、車のクラクションを派手に鳴らしたてます。先のW杯優勝のときも、街はひと晩中大変な騒ぎでした)

到着したのは、一角をレストランに改装した古い農場。
大きな小屋でたくさんの牛たちが干し草をはみ、囲いのなかではロバが何を思うかじっと立ちすくむ。なぜか孔雀までうろうろとその辺を歩き回っています。
ラッパやアコーディオンを手にしたバンドがドイツの民族音楽を演奏し始め、さあ、ここからが結婚披露宴のはじまり。

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勧められるままに食べた結果、待ち受けていた現実

穏やかに照る太陽の下、まずはレストラン前の広場でシャンパンで乾杯!
大きなプレートにぎっしりとおつまみを乗せたウェイトレスが招待客の間を歩きまわり、「食べろ食べろ」としきりにすすめてくれます。
言われなくてもお腹はぺこぺこ! とりあえず全種類制覇……と、ハムやチーズ、フラムクーヘン(ドイツ式の薄焼きピザ)、こってりとしたナッツのケーキまで、パクパクといただきました。

男たちはさっそくビールに切り替え。
皆が2杯目を飲み終わったあたりで、「さあ、会場の準備が整いました!」と司会を務めるバンドの男性が私たちをレストラン内にいざないました。
……と、それぞれの席にはピカピカ光る銀器や真っ白なお皿が並べられてあります。
ひとりひとりの前に置かれたメニューを眺めてみれば「Lunch」の文字。

「ねえ、いまからランチなの……?」
とおそるおそる隣に座った夫に聞くと、
「そうだよ?」
と笑顔。
「ええ~! 私、さっきのおつまみでお腹いっぱいなんだけど!」
「だよねえ。僕もなんでそんなに食べるんだろうって思ってたけど」
「だって、ランチが準備されてるなんて知らなかったんだもん! 言ってよ~!!」
「え~、あのおつまみが結婚式のご馳走なわけないじゃん」

お品書きは、
・コンソメスープ
・仔牛のロースト
・豚ヒレ肉のキャベツ包み
・七面鳥のフライ
・パスタ
・ポテトグラタン
・パン
まさかの牛、豚、鳥のコンボに加えて、後方のビュッフェに並べられた野菜料理は食べ放題です。
ああ、空腹ならもっと美味しく食べられただろうに、とため息。
そして、おや? メニューにはさらに、「Dinner」の文字が。

「ねえねえ、これ、夜のメニューも書いてあるけど……」
「ああ、そうだねえ。このまま夜まで続くから」
「えっ、そうなの!? な、長いねえ……」
「ドイツの結婚式では普通だよ」

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昼から夜まで続くドイツの結婚式

日本の結婚式でも、式・披露宴から二次会・三次会まで参加すれば1日中ということはありますが、たいてい披露宴のあとには数時間の休憩があり、二次会以降は場所も大きく移動してまた違った雰囲気で行われるもの。
ひとつの会場で昼から夜まで延々とパーティーなんて、間がもつのか? と心配になります。

しかし心配はご無用、とばかりに招待客たちはテーブルの間を自由気ままに動き回る。
新郎が「どうぞ楽しんで!」と短い挨拶をしたほかは、なんの出し物もスピーチもないままです。
はじめのスープが運ばれてから次の料理が来るまで小一時間ほど経っても、退屈そうにしている人なんてひとりもいません。
とくに「親戚用」テーブルのお年寄りたちは、新郎新婦そっちのけで延々とおしゃべりを楽しんでいます。

「ああ、これがドイツの結婚式なんだ……」
もうこのあたりで、日本の結婚式と比べるのはやめにしました。

(後編へ続く)
イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年11月9日公開

・『フードファイト』の他の回もチェック!
「ドイツ人夫と日本人妻の『フードファイト』」一覧
「パンとハムとチーズの無限ループ」
「デンジャラス!? 日本食に挑戦」
「きっかけはパスタ。声を荒らげて大喧嘩」
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「恐るべし……ドイツの結婚式(前編)」
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<次ページへ続く>

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