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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「ドイツ人男性は
甘いものがお・好・き」

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにご紹介。今回は、ドイツ人男性の甘いもの好きについて。日本で考えられない誕生日の不思議な習慣もお教えします(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。

ドイツ人男性に甘いもの嫌いはいない!?

「甘いものは苦手で」
そう言ってお菓子やデザートを断る男性を、日本ではしばしば目にします。
ところがドイツでは、甘いものが嫌いだと言う男の人にまだ出会いません。
試しに夫に「スイーツが嫌いな男友達いる?」と聞いてみたところ、「う~ん、ちょっと思い当たらない」との返事です。

たしかに、カフェでおじさんたちが巨大なパフェをつつく姿や、ビジネスマンが生クリームをたっぷり添えたケーキをほおばるシーンは、ドイツの日常風景。
“チョコレートモンスター”(第4回参照)の夫ももちろんその例にもれず、カフェなどに行くと、ケーキ、パンケーキ、アイスクリームにワッフル……コーヒーと一緒に必ず甘いものもオーダーします(私も甘いものは大好きですが、ドイツのものはとにかくビッグサイズ。夫が注文したものをちょっとつつくだけで満足してしまいます)。

「ドイツ人は甘いものが好き」というだけなら、まあそういう違いもあるだろうなあ、といったところなのですが、驚くのは、彼らがけっこう普通に自分たちでもケーキを焼くこと。

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食べるだけでなく自分で作っちゃう

日本で暮らしていたころ、夫がチェリータルトやりんごケーキ、ティラミスやクレープなどをしょっちゅう作ってくれていたのですが、甘いものが特に好きな夫だからそうなのだと、珍しがって笑っていました。

しかし、ミュンヘンに移り住んで以降、「あ、これは別に夫に特有の習慣じゃないのね」と気がつきました。
もちろん女性たちもせっせとお手製のデザートを作るのですが、男性陣もそれに負けず、気軽にケーキやクッキーを焼く。

ホームパーティーに招いた男友達が「ちょっと失敗しちゃった」なんて言いながらパウンドケーキを携えてきたり、語学学校の先生(長髪で、ズボンを腰履きするようなお兄ちゃん)がかぼちゃケーキを焼いてきてくれたり……。
消防士の義兄が「詰所のキッチンでお菓子作りするヤツもたまにいるよ」なんて言った日には、屈強な消防士がホースの代わりに泡だて器を握る姿を想像して、にやにや笑いが止まりません。

そしてどれも、きちんと美味しい。
下手をすれば、カフェのどっしりこってり甘いケーキより、身近な素材でささっと作られた甘さ控えめのお手製のもののほうが、素朴な味わいでついつい手が伸びる。
勧められるままに「ではもうひと切れ……」と食べ過ぎてしまうくらいです。

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ドイツ人は誕生日ケーキを自分で焼く

そして面白い習慣がもうひとつ。
ドイツ人は、自分の誕生日にも、自分でケーキを焼くのです。
誕生日当日に手作りのケーキを携えてオフィスに行き同僚に配ったり、前後の週末に手料理やお手製デザートでホームパーティーを催したり。

夫の誕生日のときも例外ではありませんでした。
「そろそろ僕の誕生日だから、どうするか考えなきゃ」
私にとってはとっても不思議な発言。
「なんで自分の誕生日に自分で用意しなきゃいけないの? あなたの誕生日なんだから、誰かに祝ってもらうのが普通なんじゃない?」
「いやいや、ドイツでは、自分の誕生日は自分でおもてなしをするの」
「え~、それってなんか、納得できない」
しかし、夫の次の言葉に目からウロコ。

「だって、1年に1回、自分のパーティーやればいいだけだから、ラクじゃん」

なるほど、そうか。
家族、親しい友人に、恋人。彼らの誕生日のために毎回頭を悩ませなければいけない日本と違って、ドイツでは1年に1度、自分の誕生日のためだけに準備をすればいいのです。
さすが合理的な国、ドイツ(もちろん、誰かのためのパーティーがまったくないわけではありませんし、子どものいる家庭では、親が準備をしなくてはいけないわけですが)。

「それはいいね!」
イベント事に張り切るタイプではない私は、一瞬でドイツ派に。
夕食後から、いそいそと自分のパーティー用ケーキを焼きだした夫の背中に「なんか手伝うことあれば言ってね~」と、心から声をかけられるというものです。

そして、誕生日直後の土曜日。
親族総勢8名がうちのアパートに集合し、おしゃべりを楽しみます。そしてテーブルの主役は、夫が焼いたりんごケーキ。
「う~ん、グアト!」(ミュンヘンがあるバイエルン地方の方言で、「美味しい」の意味)
「さすがは手練れね」(やっぱり夫はとくにしょっちゅうケーキを焼くタイプのようです)
と、褒め言葉をもらって、得意そうな夫。

「ところで、私の誕生日のときは、私が焼かなきゃいけないの?」
夫に小声で尋ねると、
「君が焼かなきゃ、誰が焼くの?」
ですって。それはもちろん、言わなくてもわかるよね?

イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年12月7日公開

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「パンとハムとチーズの無限ループ」
「デンジャラス!? 日本食に挑戦」
「きっかけはパスタ。声を荒らげて大喧嘩」
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「個性爆発! 自由すぎるドイツ語学校の生徒たち」

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