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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「早い! 長い!
ドイツのクリスマス」

もうすぐクリスマス。ドイツでその日を迎えるふたりですが、そこに至るまで、日本人妻にとって驚くことがいくつもあったようです(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。

9月に耳にしたクリスマスソング

それは、9月に始まりました。

親族で近所の動物園に出かけたとき、いつもいかめしい顔の“ちょっと怖いパパ”な義兄が珍しく鼻歌を歌っていました。

フ~ンフフンフンフンフンフンフン フフフフフ~ンフフンフンフン♪

おや、どこかで聞いたことのあるそのメロディーは、ええと、そうそう『ひいらぎかざろう』です。
でも、『ひいらぎかざろう』はクリスマスソング。まだ半袖を着ているようなこの陽気のなかでは、とても違和感がありました。
夫の袖をひっぱり、
「ねえねえ、お義兄さん、クリスマスソング歌ってるよ。おかしいね」
とこっそり笑うと、夫はうれしそうに、
「ああ、そうだねえ。そろそろそんな季節だねえ」
と目を細めました。

日本でも、ハロウィーンが終わったと思ったら次は、と、年々早まるクリスマスシーズン。
しかし、本場ドイツはその上をいっていました。

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10月初旬からお菓子や飾りが並ぶ

オクトーバーフェスト後の10月初旬から店頭にちらほらクリスマスのお菓子や飾りが並び始め、11月になるとお義母さんから「クリスマスのプレゼントは何がほしい?」の質問。
夫もクッキーの型、ツリーの飾り、リースなどを少しずつ買ってはいそいそと持ち帰ってきます。

12月になればいよいよ本番。
広場のツリーに灯りがともり、「クリスマスマーケット」という可愛らしい市場があちこちで開かれます。
ドイツ人たちは、その市場でクリスマス用の飾りやお菓子を買ったり、友人と語らいながら「グリューヴァイン」と呼ばれるホットワインを飲んだり、定番のソーセージをかじったりしながら、めいっぱいクリスマスシーズンを楽しみます。

私はといえば、過去に何度かそのマーケットに足を運んだことはあるのですが、さすがはドイツの冬。とにかく寒い。マイナス気温のなか、のんびりと飲み食いをする気にはとてもなれません。
ゆっくりマーケットの雰囲気にひたりたい夫の腕をひっぱり、「ねえねえ、カフェに入ろうカフェに」と、夫の機嫌を損ねたものです。

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サンタクロースはやってこない

ところで、ドイツの正式なクリスマスは、私たちがよく知っているアメリカ式のクリスマスとはずいぶん異なります。
地域によって少しずつ違いがありますが、ここではミュンヘンがある南ドイツの典型的なクリスマスの過ごし方をざっとご紹介します。
まず、「クリスマス」はもちろん英語なので、ドイツ語では「Weihnachten」、ヴァイナハテン、と呼ばれます。どうでしょう、もう、この時点で「違う!」という感じがしませんか?

サンタロースもやってきません。
かわりに、12月6日にサンタの原型ともいわれる「聖ニコラウス」という白いヒゲに赤いマントを羽織ったおじいさんがやってきます。
金色の本に書かれた子どもたちの1年間の“所業”を読み上げ、良い子にはお褒めの、悪い子にはお叱りの言葉が飛んできます。
時には、ニコラウスがクランプスと呼ばれる怪物を引き連れていることもあり、悪い子は鎖ではたかれてしまいます。
子どもたちがおびえて泣き叫ぶ様子は、まるで秋田県のなまはげ。クリスマスのきらめきとはほど遠い雰囲気です。

そして、家庭のツリーの飾りつけを仕上げるのも、子どもたちがプレゼントを開くのも、24日の夜。
大人たちが子どもを別の部屋に追いやり、ツリーの根元に“精霊からの贈り物”であるプレゼントを置いて、できあがり。
ベルの音とともに部屋に入ることを許された子どもたちは、我先にとツリーに駆け寄り、おのおののプレゼントを開くのです。

「せっかく仕上げたツリーを、すぐに片づけなければいけないのはもったいないんじゃない?」
そんな声が聞こえてきそうですが、ご心配なく。
ドイツのクリスマスシーズンは、なんと1月6日まで続くのです。
1月6日、今度はイエスの誕生を祝ったとされる「東方の三博士」と呼ばれる3人の賢者、に扮した子どもたちがやってきます。そして各家庭の扉をたたき、社会福祉のための寄付を集めて回ります。

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日本のクリスマスに夫、嘆く

私が初めてドイツに遊びに来たのは12月末のことで、そのままになっているクリスマスの飾りを見て、「ドイツ人も意外に適当なのね。日本だと26日にはすっかりお正月の飾りなのに……」と思った記憶がありますが、そうではなかったわけです。

いずれのイベントも、宗教的で神聖なものだというのが、ドイツにいると肌身で感じます。
「日本ではね、カップルが高いホテルに泊まって高いフレンチを食べて高いプレゼントを贈りあって、家庭ではプラスチックのツリーを飾ってケンタッキーを食べるんだよ」
と自嘲気味に夫に言うと、「オーマイゴット……」と首を振られました。

ずいぶんと伝統の姿を残したクリスマス、もといヴァイナハテンを、ドイツ人は存分に愛し、楽しんでいる様子。
このコラムを書いているのも、まさにその真っ只中。いよいよ、その当日が待っているわけです。
もしフードファイトが勃発したら、お知らせしたいと思います。

イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年12月21日公開

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