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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

日本人妻、ドイツで
お米に一喜一憂

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともに公開。今回は、日本人の主食・お米のお話。日本人妻がドイツでお米に一喜一憂する様子をご覧ください。

日本人妻、“スシライス”にガッカリ

「お米ひと粒のなかには7人の神様がいるんだよ」
私たちは、そう親や先生に言い聞かされて育ってきました。いや、3人、それとも10人だったかな……? とにかく、日本人にとってお米はそれくらい特別な食べ物です。

ドイツに引っ越してきた当初、ごく普通のスーパーで「Reis(ライス)」と書かれたコーナーを見つけたときには、「ああ、ここにもお米文化が!」と、それは感激したものです。しかし見れば、タイ米、インドのバスマティライス、ハーブが入ったリゾット用のお米……と、多種多彩なラインナップの中にあって、わが日本米がさっぱり見当たらない。よくよく探してみれば、隅のほうに「SUSHI REIS」という、のっぺりしたかっぱ巻きの写真がくっついた、なにやら怪しげなものだけが小袋で売っています。

「これは日本米なのかな……?」と、家に帰ってその“スシライス”を試してみれば、寿司職人でなくともため息をついてしまうような、ぽそぽそとした、やや臭みもある代物。“正しい日本米”を味わいたければ、やはり日本食スーパーやアジア食材店に出かけて行き、輸入されたものを日本の約2倍の値段で買うしかない、という結論に至りました。
(同じ売り場にやや安値の欧州産コシヒカリなどが売られているのも発見したので、こちらは目下試してみなければと思っているところ……)

つまり、ご飯は私にとって何よりのご馳走。炊き込みご飯やチャーハンにしてはもったいない。1合だけを大切に炊いた、白いご飯と、お味噌汁。1膳目はそのまま、2膳目は梅干しや昆布と一緒に。そんな食事が、何より幸せなひとときだったりするのです。

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ドイツ夫と日本人妻の炊飯器ファイト

しかし夫には、そんな私の小さな幸福など理解できるはずもありません。週に1度か2度だけ作る和食の夕食の際には思い切って2合のお米を炊いて、残ればしめたもの、明日の私の朝ごはんか昼ごはんになります。しかし翌朝、久しぶりの和朝食……なんてほくほくとキッチンに行けば、油断も隙もありません。炊飯器の保温スイッチが前の晩のうちに勝手に夫に切られていて、ご飯がひんやりと炊飯器の中で固くなっている、なんてことが何度もありました。

カッとなって、
「またエネルギーの無駄使いだって言うんでしょ! でも、冷たくなったご飯はチャーハンやお茶漬けとかにするしかないんだよ」
「なんで、チャーハン美味しいじゃない」
「美味しいけど、白いご飯とはぜんぜん違うものなの! 私は白いご飯を朝ごはんに食べたかったのに、ひどい!」
そんな風に言い募っても、白いご飯の真の価値がわからない夫のハートには届きません。冷凍しておくという手もありますが、せっかくのお米はやっぱりそのままでいただきたい。夫と私の炊飯器保温問題はいまだ未解決のままです。

ご飯を残すことにもそれほど抵抗がない夫。お米粒が残ったままの茶碗を食器洗い機に入れている背中に、「7人の神様がね……」なんて無駄な説明を試みるも、「へえ、面白いねえ」なんて言いながら、改善の様子はなし。

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夫作・お米入り具だくさんスープの秘密

こんなこともありました。夫が料理担当の日、「ドウゾ~!」と呼ばれて席についてみれば、なかなか美味しそうな具だくさんスープが食卓にのっています。珍しく炊飯にもチャレンジしてみた様子。さっそくスープを食べてみると、おや? 細かく切られたニンジンやキャベツに交じって、米粒が入っています。
「へえ~、お米を具材としてスープに入れてみたの? 面白いね」
なんて感心すると、
「あ、ううん。あれでスープをかきまぜたから」
と、調理台の上のしゃもじを指さします。

つまり、
ご飯を炊く→しゃもじを水で濡らさないままかきまぜる→しゃもじにご飯粒がたくさんつく→そのままのしゃもじでスープをかき混ぜる→スープにご飯粒が入る
という、信じられない過程を経て、スープに米粒が「異物混入」していたのでした。なんとも雑で、お米にリスペクトがない。悲しくなる事件でした。

ところが、あるとき日本の友人たちから「遅くなったけど結婚祝いに」となんと「魚沼産こしひかり」がどどんと届いたのです(彼らこそが神様!)。さっそく炊いてみれば、つやつや、ぴかぴか、香りからあきらかに違います。「こんなよいお米を夫に食べさせてはもったいないかな」なんて意地悪を思いつつ食卓に出してみれば、なんと、ひとくち食べた夫が目を丸くして言いました。
「このお米ぜんぜん違う。美味しいねえ! もうスシライスは食べられないよ!」

続いて、偏食気味の夫の従姉を食事に招き、カツカレーでもてなした際には、
「これが日本のライスなの? 素晴らしいワ! ライスは苦手だったけど、これなら食べられる」
と絶賛。「そうでしょう、そうでしょう。やっとお米の素晴らしさをわかっていただけましたね」と深く頷く私。

ドイツのスーパーの仕入れ担当さま。ライスの種類には、コシヒカリはじめ、素晴らしい日本米もあるんですが、どかんと仕入れて安値で売ってみてはいかがでしょう?

イラスト/なをこ

2015年4月12日公開

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