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県民に聞いた!ご当地自慢のグルメ・お土産

ご当地自慢 by 白央篤司/2014年8月9日

県民に聞いた!ご当地自慢のグルメ・お土産
第18回 地元民推しスイーツ vol.7

横浜
『ありあけのハーバー』

 各都市ごとにある、地元ローカルのお菓子。
 おとなになってから、ふとそのお菓子と再会した時に感じる、懐かしさ。甘いものが誘う郷愁というのは、独特のものではないでしょうか。
 本誌連載「故郷レシピ」の取材を各地の方にするたび必ず、
「好きな地元のお菓子は?」
という質問を重ねてきました。今回は神奈川の人々の“ふるさと菓子”です。

港町ヨコハマのお菓子は船の形

『ありあけのハーバー』シリーズの代表選手「ダブルマロン」(1つ162円/税込)。カステラ生地の中には、栗のあんと刻んだ栗のつぶが入っています。この形は“港町ヨコハマ”らしく、船をかたどったもの。他にチョコ味などもあり

 神奈川県民に「地元ならではの味とは?」とアンケートを取ったところ、『崎陽軒のシウマイ』『鳩サブレー』と並んで名が挙がったのが、『ありあけのハーバー』でした。

「小さい頃、よく食べました!」
「記念品でもらうことも。会社の入社式でも配られてましたね」
 そして一番多かった声が
「県民なら、ほぼ誰でもCMソングを知ってると思います。夕方にアニメの再放送ってやってたでしょう? あの時間にかかってたんですよ」
というもの。

 私は取材中、このCMソングを覚えて、神奈川県民に出会うたび「ありあけ~の~?」と歌ってたずねてみましたが、全員が「ハーバー~♪」と歌って返してくれました。ものすごい浸透度、確認済みです!

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販売会社の倒産と、ドラマティックな復活

パッケージデザインはウィスキーの『トリス』でもおなじみ、柳原良平氏。横浜在住の柳原氏の絵は、神奈川の人々にとってなじみ深いものです。ちなみに県民なら「誰もが知ってる」CMソングは現在、由紀さおりさんが歌ったものが放映中(由紀さんも横浜育ち)

『ありあけのハーバー』は発売が1954年(昭和29年)と歴史のあるお菓子。しかし販売元『有明製菓』の急な倒産により、1999年(平成11年)にすべての製造がストップします。

 本来ならば、この船の形をしたお菓子は、その時点で“帰らない旅”に出たはずでした。

 しかし、状況は急転します。
 この経営破綻からしばらくして、当時町田市で菓子製造業を営んでいた藤木久三氏のもとに「『ありあけのハーバー』の商標権を買い取りませんか?」との相談がもちかけられました。熟考の末、藤木氏は買い取りを決意。「横浜銘菓の灯を絶やしてはならない」という思いが、後押しになったのだそう。
復活プロジェクトがここから動き出しました。
 
 2000年には「ハーバー復活実行委員会」を発足。
 経営破綻した以前の会社に勤め、開発にも関わっていたパティシエや、元従業員の方もこの事業に加わります。しかし一度生産ラインの消滅した「味の復活」は、たやすいものではありませんでした。

「倒産した会社の商品など、縁起が悪くて置けない」
 そんな営業上の苦労も体験しつつ、『ありあけのハーバー』は2001年4月に復活。フタを開けてみれば、当初販売を予定していた3日分の在庫を、1日で売り上げる大成功となったのです。

「二度と食べられないと思っていたのに……」
 涙ぐみながら「ありがとう」を繰り返すお客さんも。
慣れ親しんだ味の復活――二度と戻らない子供時代が一瞬、よみがえったような嬉しさに包まれたのかもしれません。

 現在では、年間1千万個以上を売り上げる『ありあけのハーバー』。地元の定番菓子でありつつ、神奈川在住の方が帰省する際のおみやげとしても人気です。今年はこのお菓子が誕生して、ちょうど60周年。親子四代にわたるファンも誕生しているよう。

◎横浜タカシマヤ、そごう横浜店など百貨店、各直営店で販売されているほか、取り寄せも可能。「(株)ありあけ


●文:白央篤司(はくおう あつし)/
東京都出身。フードライター。大学卒業後、編集者を経てフリーに。本誌『故郷レシピ』『死なないレシピ』を始め、食記事・レシピ記事を手掛けつつ、日本酒やアジア料理のイベントを企画している。

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