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世界一周“仰天肉グルメ”の旅 最終回

世界一周“仰天肉グルメ”の旅 最終回
おしゃれなマカオで
カエル・スイーツ!?

新しい大型ホテルが次々とオープンし、大変貌を遂げている高層都市マカオ。古いものと新しいものが混在するエキゾチックな街で出合った衝撃のデザート! 最終回は、カエルの卵巣ココナッツミルクがけを紹介します。

あなたには指紋がありません!

海外旅行に行くとき、空港で必ず通るのが出国審査。出国する人の顔を見て怪しいか怪しくないかチラ見してスタンプをポン! と押してくれるあの審査が今は、機械で自分でできるようになったのを、ご存知だろうか? 

スーパーでいうところのセルフレジみたいなもので、セルフ出国審査では、指紋を照合したりするらしい。一度、指紋登録しておけば、もう長い列に並ばずに済むので登録することにした。

しかし、だ。国の機関に指紋を取られるということは、もし、自分が悪いことをしたときにすぐに捕まってしまうのではないか。やっぱり、やめとこ……と後ずさりを始めたら、係員のおばちゃんが、「ほら、ここに指を置いて」と手招きする。

ま、その時はその時だ。人差し指をペタッと読み取り機に置くと……おばちゃん、なんだか険しい顔。私まだ何も悪いことはしてないよ!

「あなた……指紋が……ない」
「そ、そんなバカな!」
「うーん、じゃあ、中指!」
「ど、どう?」
「ない! 次、薬指! ……あ、だめだ!」
「えーっ、ちょっと待って! 親指なら自信があるの!」
「出てこない!」

なんと、一番、指紋が出ている親指さえも。
「もっと、ぎゅーーーっと!」
「荷物、そっちに置いてリラックスして、ハイッ!」
「腕を直角に!」とあらゆる指導を受けて何十回も指紋登録に挑んだが、ふたりとも最後にはゼイゼイと疲れきり、「あなたの指は全部、指紋が薄すぎる。登録できません」という悲しい結末に!

指紋がとれないとわかると、今度は私が誘拐事件に巻き込まれたとき、指紋をたどって刑事さんが来てくれないかもしれないと心配に。ため息をつく私に、おばちゃんは、「そうねえ、マカオに行くのよね? もしかしたら美味しいものを食べて、肌がプルプルして指紋が出てくるかもしれないから、申請用紙はとって置くといいかもね」と気の毒そうにパスポートを返すのだった。

いったいマカオで何を食べたら、指紋が濃くなるのだろうか?

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カエルのデザート「雪蛤」とは?

指紋を濃くするのは、やはり脂肪であろう。マカオに着いた私を待っていたのは、たくさんの肉料理たち。スパイシーなマカオ料理に中華やポルトガル料理と、この国には美味しいものがいっぱいだ。ピーナッツソースがかかったアフリカンチキン、前回ご紹介した皮がパリパリのハト料理、プルプルの豚の角煮……コラーゲンたっぷりの肉料理の数々に除々に指紋が浮き出てきたような気がする。

最後の夜、何を食べようかと考えていると、マカオに何度も来ているというお姉さんが驚きのスイーツを教えてくれた。それは、なんとカエルのデザート。カエルなら、中国で鍋にして食べたことはあるけれど、デザートとはこれいかに?

「肉の部分じゃなくて、確か卵巣か卵か子宮とかだったような気がするんだけど……」
「うえー、美味しいの?」
「タピオカみたいにプルプルしているし、コラーゲンもたっぷりよ」

なんだか生臭そうだけど、肌には良さそうだ。広東語ができないので、お店で何と注文したらいいのか調べてもらうと、「雪蛤(ハシマ)」という名前が付いているメニューを選べばいいらしい。雪蛤とはカエルのどの部分なのか?

「雪蛤って何? 脂肪? それとも卵巣?」と広東語で紙に書いてもらい、それを握りしめて店に向かう。果たして本当にカエルのデザートは存在するのだろうか?

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カエルの正体はいかに?

地図を見ながらテクテクと大通りを歩いていくと、原宿のアイスクリーム屋さんのようなポップでキュートなスイーツ屋さんが現れた。耳の遠いおじいさんがいる古びた漢方薬局のような店を想像していたのだが全く違う。店内は若いカップルでいっぱいで、マカオのおしゃれ男女はデートにカエルのスイーツを食べるのかと思うと、なかなかワイルドだ。

さっそくウエイトレスのおばちゃんに「雪蛤って何?」と書いた紙を広げると、おばちゃんは、「きゃー! これ何?」と同僚たちに見せながらキャッキャッと大笑い。そんなことを聞く人はいないのだろう。

しかし、サラサラと何やら書いてくれた文字を見て驚愕! 大きな文字で「青蛙」!! 小さい頃、捕まえて遊んだ青蛙を思い浮かべてしまい、うろたえる。蛙の種類はあんまり知りたくなかったような。

「ええと、青蛙のどの部分なの? 脂肪? それとも……」

おばちゃん、「これだ、これだ!」と自分の子宮あたりをポンポンと叩き、紙に書かれた「卵巣」という文字を指さした。

「やはり卵巣なのか!」
「そうそう。それで、雪蛤はホット? アイス?」
「卵巣もコーヒーみたいに選べるんだ。じゃあホット」

それにしてもカエルの卵巣を最初に食べようと思った人はどんな人なのだろう。そして卵巣に「雪蛤」なんて、ずいぶんロマンチックな名前をつけたものだ。もしかしたら、一生懸命、デザートを作ったのに「カエルの卵巣」と言って出したら、誰も食べてくれなかったのだろうか。

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根性のあるカエルだけがデザートに

5分ほど待つと、さきほどのおばちゃんが、ココナッツの殻をお椀がわりにした雪蛤を運んできた。ココナッツミルクと豆乳プリンがタプタプに入っている。そこにプカプカ浮かぶ透明な塊……これが雪蛤なのね! 

スプーンでホカホカの雪蛤をすくって、もぐもぐもぐ……ふーむ、これは確かにタピオカ。それも煮すぎてフニャフニャになったタピオカといえばよいだろうか。雪蛤自体に味はないけれど、ココナッツミルクとの相性は抜群だ。

なぜ日本のスイーツ屋さんはカエルは出さないのかしら? 後で聞いたところによると、このカエルたちは、中国の北に生息する厳しい冬を乗り越えた根性のあるカエルたちなのだそうだ。

立派な“越冬カエル”だけがスイーツになると思うと、ちょっとかわいそうだけど、その分、栄養がありそう。おかげで指もプルプルしてきたよ。女子力も向上した気もします。……気のせいかもしれないけど。

ありがとう、越冬ガエル! これで指紋登録できる!とウキウキして帰国したら、なぜか入国審査の横には登録ブースが見つからない。そんなあ…と指を見つめながらガッカリしたけれど、これは、「またマカオに来なさい」ということかしらね?

【ご挨拶】
今回で最終回となりました「世界一周“仰天肉グルメ”の旅」。
8回で終わりのつもりだったので、「がんばって続けて」と編集さんに言われたときには、「そんなにたくさん変な肉は食べてない」とうろたえました。
ゲテモノが好きなわけではなく、虫もヘビも苦手なのですが、思い出して書いているうちに、思ったより様々な動物を食べていたことに気がつきました。
食は旅の一番の楽しみ。読んでくれた皆様が、「食べてみよう」と思う肉がひとつでもあれば、嬉しいです。下手なイラストとともに、丸1年、お付き合いいただきありがとうございました。

2015年6月3日公開

●白石あづさ(しらいし あづさ)/
旅と山と酒を愛するフリーライター。地域紙の記者を経て、南極から北朝鮮まで約3年間の世界一周旅行へ。帰国後、フリーに。芸能人やスポーツ選手の取材の傍ら、旅行雑誌などで執筆。著書に世界旅行中に遭遇した28人のへんなおじさんたちを取り上げた「世界のへんなおじさん」(小学館)がある。市場好きが講じて、最近、築地に引っ越し。魚三昧の日々を送っている。


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