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サバジェンヌが行く!

サバジェンヌが行く! by 池田陽子/2014年8月21日

サバジェンヌが行く! 第8回
ゴマサバが止まらない!
沼津の旬を喰らう

前回に引き続き、今が旬の静岡県沼津のゴマサバグルメを全さば連(全日本さば連合会)のサバジェンヌ池田がレポートします。「夏のサバ旅」に出かけたくなること必至です!!

サバ本来の旨みを実感!

『さえ丸おじさんの店』の「朝どり地鯖の刺身」(850円)。ゴマサバの底力を思い知らされる(上)「炙りしめ鯖」(950円)。こんがり、とろ~り。ゴマサバビアン~♪(下)

火が着いた“夏の日のゴマサバモード”はもう、誰にも止められない! というわけで、向かったのは、魚料理が自慢の『さえ丸おじさんの店』。

店主の益谷尚豪(ますたになおひで)さんは、もとは釣り雑誌の編集者。さらに魚を極めるために鹿児島県甑島(こしきじま)で漁師となったのが7年前。その後、出身地の沼津に戻りお店をオープンした。魚の目利きであり、魚を美味しく食べる技を身に付けた益谷さんが仕入れた沼津港水揚げのゴマサバを堪能できる。

「あちこちのサバを食べてきましたけれど、沼津のゴマサバ、とくに梅雨が明けてからのゴマサバは絶品です!」と太鼓判を押す益谷さん。さっそく、旬のゴマサバ料理をお願いした。

「朝どり地鯖の刺身」をいただく。うーん。やっぱりフレッシュで心地よい脂がスルリと、舌の上をすべっていく。そして、その後にしっかりと、ゴマサバの旨みがバシッと響いてくる。なんなんでしょうか、このゴマサバが奏でる“サバーモニー”は! 「炙りしめ鯖」も、魅惑の口内オーケストラが響き渡る。沼津のゴマサバは、脂のノリがあっさりしているぶん、サバ本来の旨みがしっかりと感じられるのだ。

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沼津から始まる“ゴマサバの逆襲”

「地鯖の開き」(850円)。“開きマニア”の全さば連サバニスト小林会長も絶賛

それを確信したのが、「地鯖の開き」。潮風をはらんだような、ほどよい塩加減の開きは、ふっくらというより、みっしりした感じ。もちろん固いわけでもないし、パサパサしているわけでもない。いわば、旨みがギューッとつまった、“噛み締めがいのある”味わい。“旨みのかたまり”である。焼いたときに出る脂が少ないぶん、じっくりとサバの旨みと対峙できるのだ。やるな、ゴマ!

サバの美味しさを言語化するときに「脂がのった」が定番だけれど、サバはサバ節にするほど旨みのある魚。沼津のゴマサバを食して、改めて「サバという魚の味わい深さ」を、しみじみ思い起こさせられる。

もちろん、脂がたっぷりのったマサバも最高だ。が、ゴマサバの「サバ本来の旨み」を実感する味わいも最高だ。全さば連的には「サバの種類なりのよさ」「産地ごとのサバのよさ」があると思っている。ワインや日本酒と同じだ。

「ゴマサバは、竜田揚げやオリーブオイルでマリネにしても美味しい。油を使う料理との相性がいいんですよね」と益谷さん。これもゴマサバの魅力のひとつだろう。

今回は、今、沼津の新しいご当地グルメとして、開発が進んでいるという「沼津さば魚~ざ」も特別に焼いていただいた。ゴマサバの身とキャベツ、ニラを具にした餃子は、ひと口かじるとサバの旨みが口の中で爆発する。こちらも注目だ。うーん、ゴマは化けるな。

まさに沼津で知る「ゴマサバの逆襲」!! ゴマサバにはゴマサバの魅力がある。

「沼津さば魚~ざ」(イベントなどで不定期販売)。ゴマサバの身、キャベツとニラ、味噌を隠し味に粘りが出るまでじっくり練り上げた具はもっちり、ジューシー

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スモーキーなサバがオイルの中で花開く

オイルサバディン用のサバ節。実はたまたまこのとき、冷凍されていたものをいただいたが、凍ったサバを口に入れると、ホロッと溶けてこれまた美味い! 夏のつまみにしたい! 「シャーベットサバ節」として夏の風物詩的な商品化を望む!

前述のように、沼津はサバ節の一大名産地だった。サバ節生産の地場産業として、沼津の町は発展してきた。昭和20~30年代ごろには何十軒もの加工業者があり隆盛を極めたが、時代が移り変わり、食生活の変化で次第に生産量が減り、衰退してきているという。

沼津に水揚げされる鮮魚の仲買を主な業務とする『かねはち』は、創業からサバ節の加工も手掛けている。サバ節造りの伝統の技を活かして、新しい食べ方を提案できないかと開発されたのが「オイルサバディン」。ゴマサバの燻製をオイル漬けにした缶詰だ。全さば連が開催する「S―1グランプリ」(さば缶グランプリ)でも大人気だった商品である。

サバの缶詰ではあるが、サバの水煮缶とはまったく別次元の缶詰だ。香り高く燻されたスモーキーなサバをオイルに閉じ込めることで、いぶし銀が華やかに昇華すると言おうか。まろやかな味わいで、凝縮されたサバの旨みをじっくりと堪能できる。そのままおつまみにしてもよく、ウイスキーやバーボンにも合う大人の味わい。ごはんの友にも、パスタに使ったり、サラダなどに使ってもイケる。これはもう、“オイルサーディン越え”である。

そもそもサバ節には、脂ののったサバが向かないゆえに、ゴマサバを使う。しかし外部の油の力で、開花する新たな味わい。これもまた、ゴマサバでしかできない芸当かもしれない。

『かねはち』の「オイルサバディン」。オリジナル、黒胡椒、ガーリックの3種類がある(3缶セットで1500円)

オイルサバディンに使われるサバは「サバ節造りの工程」から生まれる。サバを蒸し、冷まして乾燥させてから燻製室に入れて1尾まるごと燻製する。その途中でいったん燻製室から取り出し、不要な骨などの部分を手作業で除いたのち、さらに燻製加減を調整して旨みを引き出す。本来のサバ節は、ここからさらに乾燥させるが、オイルサバディン用のサバ節はここで完成。それでも身が締まっているので、さらに手作業でほぐして缶に詰める。『かねはち』が培ってきた、サバの味わいを引き出すための伝統の技術を踏襲し、じつに手間暇かけた作業から生まれた逸品なのだ。

「『オイルサバディン』の開発は、沼津で生まれ育ち、できたてのサバ節をつまみ食いしてきた社長が、『食文化が変わるなかでも沼津のサバをもっと世に送り出したい』という思いからスタートしたんです」と『かねはち』の小松正人専務は語る。

社長がつまみ食いしていた「サバ節」とは、まさにオイルサバディン用の「サバ節」である。「これです。まだ最終加工前の骨のついた状態ですが、食べてみてください」と小松さんが差し出してくれた。

むしゃむしゃ。うわっ、うまい! 噛み締めるたびに、ゴマサバのマイルドで奥深い旨みが、じわーっと口の中に広がる。やはり、沼津のゴマサバは“噛み締めがい”があるサバなのだということを、しみじみ実感する。

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ワイン心を一気に着火するサバのスモーク

沼津のゴマサバは、ワインバーでも楽しめる。地元の採れたて野菜や、沼津港水揚げの魚を使った料理と、豊富にそろったワインが人気のワインバー&レストラン『aiai』で人気なのが「自家製鯖のスモーク」(550円)。

沼津出身、東京、フランスでの修業を経て、お父さんがオーナーであるこの店でソムリエを務める立川大介さんは「じつは、沼津はアジの町だと思っていました(笑)。でも『かねはち』の小松さんから沼津のサバの魅力を聞いて、ぜひ沼津のゴマサバで何かできないかなと思って考案したのが『自家製鯖のスモーク』です」と語る。

『ワインバー&レストラン aiai』の「自家製鯖のスモーク」(550円)。豊富に揃ったワインと一緒にどうぞ

スモークサーモンに近いものをとイメージして、桜のチップで半生の状態に燻製。表面をバーナーで炙って提供する。

飴色に輝く燻製は絶妙のレアな燻し加減。口に入れるとホロリとやさしく、じっくりしたコクがたまらない。「添えてあるクリームチーズと一緒に食べるのも、美味しいですよ」と立川さん。ふむふむ。おおっ! やさしい味わいの燻製ゴマサバにクリームチーズの酸味とコクが加わると、さらにゴージャスな風味に。ワイン心を一気に着火する味わいだ。立川さん、ワインはどんなものが合うでしょう!?

「サバのスモークには、赤ワインでもワイルドな味のものがいいと思います。フランス南部とか、スペイン、チリ、アルゼンチンあたりがおすすめです」
スペイン「ホアン ジル シルバーラベル」×サバスモーク

きゃー! 赤ワインがサバのスモーキーなコクと一体化して、口の中がバラ色の芳醇化現象。うわー、サバもワインも止まらなくなる!

「サバとシェリーもいいですよ」(立川さん)
「ハーベイ シェリー ブリストル クリーム」×サバスモーク

ひゃー! シェリーの独特の芳香が、サバをなんとも官能的な味わいに転ばせる。やばい。なんなんだコレは。危険な組み合わせすぎる!  

サバとワインのめくるめくマリアージュ。ぜひ“サバリエ”(勝手に命名)・立川さんの指導を仰いで、沼津のアツいゴマサバナイトを楽しんでいただきたい。

ああ、もうお腹一杯! あ……なんだか酔っ払ってきた……。

へべれけになっても、沼津から東京への終電は22時ごろ。日帰りでも「夏のプチ沼津サバ旅」は可能である。

そんな沼津のサバを東京で存分に楽しめるチャンスがある。9月6日(土)、「全さば連」が定期的に開催している、日本各地のサバを楽しむイベント「鯖ナイト」で、沼津とのコラボレーションが決定。沼津のサバを使った料理を味わい、全さば連による沼津のサバレポートも行われる。

もちろん、この夏休みには「沼津サバケーション」も、ぜひ!


■さえ丸おじさんの店
住所:静岡県沼津市町方町26/電話番号:055-951-6760/営業時間:11時半~14時、17時~23時L.O.、土17時~23時L.O./休み:日・祝

■ワインバー&レストラン aiai
住所:静岡県沼津市大手町3-5-4 2F/電話番号:055-962-1549/営業時間:17時半~23時L.O./休み:無休

■かねはち
電話番号:055-952-0001
http://oilsabadines.com/

■「鯖ナイト沼津」の詳細/申し込みは「全さば連」まで!


●池田陽子(いけだ ようこ)/
サバを楽しみ、サバカルチャーを発信し、サバで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動し、イベント「鯖ナイト」を実施する「全さば連」(全日本さば連合会)広報担当「サバジェンヌ」。本業は薬膳アテンダント/食文化ジャーナリスト。本誌では「元気になる若返り薬膳」を連載。著書に『ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『春夏秋冬ゆる薬膳。』(扶桑社)。


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