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サバジェンヌが行く!

サバジェンヌが行く! by 池田陽子/2014年10月17日

サバジェンヌが行く! 第12回
「ノルウェーサバ」の
美味しさの秘密を直撃

 わたしたちがふだん食べているサバのうち、じつは、かなりのウエイトを占めているのが「ノルウェーサバ」。はるか北欧からやってくるサバ、そしてノルウェーのサバ事情について、先月、鳥取県鳥取市で開催された「鯖サミットin鳥取」に参加された、ノルウェー王国大使館参事官/ノルウェー水産物審議会日本事務所のヘンリック・アンデルセンさんに、全さば連(全日本さば連合会)のサバジェンヌ池田が突撃インタビューしてきました!!

ノルウェーサバの一大消費国は日本だった!

「鯖サミットin鳥取」にて。青森県八戸市、福井県美浜町、小浜市のサバ関係者と熱いトーク。全さば連も登壇

世界有数の漁業王国・ノルウェー。サバの漁獲量は年間約10万トンを誇る。じつは日本は、ノルウェーサバの最大消費国。ノルウェーで水揚げされたサバの4割を消費し、ノルウェーサバは日本国内で流通するサバの約50%を占めているのだ。

約40年前から日本への輸出が始まったというノルウェーサバは、塩サバやしめサバ、味噌煮、干物、缶詰などの加工品で、すっかり日本の食卓でおなじみの存在。

いつもお世話になってます。ありがとうございます。ぺこり(by サバジェンヌ)

サバファンの中には「輸入ものというと……」と思う人もいるかもしれないが、サバの加工品に携わるプロからは「脂のノリがバツグンのノルウェーサバ」の評価は極めて高いのだ。

日本各地のサバ、そしてノルウェーのサバを味わい、全国のサバ関係者のトークイベントなどを行う「鯖サミットIn鳥取」が開催された鳥取市の名物であり、全さば連的にも「究極の塩鯖」と称えてしまうほど絶品の「因幡の塩鯖」は、以前このコラムでも紹介したように、使われているのは、ほぼノルウェーサバ。それは「脂のノリがよいので、大変美味しく仕上がるから」という理由だ。またサミットに参加した福井県美浜町の伝統食であるサバのぬか漬け「へしこ」も、同様の理由でノルウェー産が多い。現地の関係者からすれば、むしろ「美味しいサバ加工品を通年とおして作り上げるには、ノルウェーサバが欠かせない」のである。

日本の伝統的なサバ加工技術とノルウェーのサバのコラボは、最強タッグとして「グローバルなサバ加工品」を生み出しているのだ。

とくに、焼いたサバの至福の喜びともいえる「ふくよかでジューシーな脂」の味わい。それはまさに、北の海で育ち、たっぷり脂ののったノルウェーサバのならではの「魅せどころ」。でもその美味しさは、環境だけが理由ではないらしい。

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「ノルウェーサバ」が美味しい3つの理由

ヘンリック・アンデルセンさん。来日して3年目。やさしくて、素敵で、お茶目なサバジェントルマン!

「サバは大好きです! そして大好きなサバに関わる仕事ができて幸せです。サバについて語るとうれしくなる。サバのことを語ると心の中から自信が湧いてくるんです!」とサバファイトみなぎる“ミスター・ノルウェーサバ”ヘンリック・アンデルセンさんは、日本にやってくるノルウェーサバの美味しさの秘密には3つの理由があるという。

1つ目はもちろん「ノルウェーの自然環境」。国土の半分以上が奥行きのあるフィヨルドに接し、山から溶け出した雪が冷たく澄んだ海に混じって、魚の成育に最良の塩分濃度となり、美味しい魚を育む素晴らしい環境となる。「冷たい水温から身を守るために、サバはたっぷりと脂を蓄えます」(ヘンリックさん)。その脂肪率は、身全体の最大30%ほどに達する。まさに“キング・オブ・オイリー”!!!

「恵まれた環境で美味しく育ったサバに携わることで、お給料をもらっているなんてラッキーです」と笑うヘンリックさん。「でも、ノルウェーサバの美味しさを作り上げているのは、それだけではないのです」。

2つ目の理由は「ベストシーズンに漁獲されていること」。ノルウェーサバは、9~10月ごろ脂が身に入り込み、「サシが入った霜降り状態」になる。日本に輸出されるサバはすべてこのタイミングで漁獲されたもの。まさに「北欧からやってきた松坂牛のようなサバ」なのだ。

そして、3つ目は「徹底した品質管理」。「水揚げから梱包までフルオートメーション」というノルウェーならではの最新鋭の漁業システムによって、身体に傷がつきやすいサバを「手で触れることなく」「生きたまま」工場に運び、スピーディに加工。鮮度を維持し、高品質なサバを提供しているのだ。

漁船はサバをフィッシュポンプで海水とともに吸い上げ、ほぼすべての漁船に供えられた冷却装置でマイナス2度に保つ。そして、すかさず船上でネットオークションを行い、漁船は落札された加工場のある岸壁にそのまま直行。ポンプから加工場のいけすに移し、オートメーションでサイズを振り分け、マイナス40度で急速冷凍。傷みやすいサバが、陸上でもたもたすることなく、水中からベストコンディションを保ち、フレッシュなまま日本までやってくるのだ。

子サバにやさしいノルウェー

冷たく澄んだノルウェーの海が美味しいサバを育む

「今年はもっと日本のみなさんに、ノルウェーサバを楽しんでもらえる予定です」とヘンリックさん。今季の漁獲枠が昨年の2倍近い約28万トンに決まったのだそう。

ちなみにノルウェーでは長期的な魚種資源管理計画のもとに、毎年の漁獲枠を設定し、魚を保護するために厳しい「漁獲管理」を行っている。

ノルウェーでは60年代の激しい乱獲で、80年代には漁獲量が激減。資源を守るために、漁船ごとに「個別漁獲量」を割り当てた。ただし、それは、たんに「獲るな」という話ではない。大きなサイズのサバに高い価格を設定。年間の漁獲量が決まっているなかでは、必然的に漁師は高く売れる魚を見極めて獲ることになるため、乱獲がなくなり、結果的には漁師の利益も確保されることになる。

だから漁師たちが、価格が安い小さなサバを獲ることはない。当たり前だが、「魚は獲ればいなくなる」。子サバを守ることで、サバという大切な資源を枯渇させない「持続可能な漁業」を目指しているのだ。ノルウェーは「美味しいサバ王国」であるとともに、「子サバにも優しい国」なのである。
きゅん。(by 子さば)

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ノルウェー人は日本人にサバ料理を学ぶべし

ではノルウェーのみなさんは、サバをどんな風に楽しんでいるのだろうか?「ノルウェー人もサバは大好きですし、山ほど食べますが主にはシンプルにそのまま『焼く、揚げる、煮る』。あとは燻製、トマト煮でしょうか。じつはあまり込み入った料理はないんです」とヘンリックさん。

よって、日本に来て「サバ料理のバリエーションの豊富さには、びっくりしました。そして美味しい!」。日本ならではのサバ料理でお気に入りなのは、しめさば、味噌煮。「ノルウェー人はサバの美味しい食べ方を、全然極めていない! これは日本に学ぶべきです!」と真剣に語るヘンリックさん。

ノルウェーは世界各国にサバを輸出しているが、これほどサバ料理がバラエティに富んでいるのは「日本ぐらい」だそう。日本人は世界的にも、すさまじい“サバ民族”らしい。

そしてヘンリックさんにとって、今回鳥取で新たにお気に入りが加わった。「こんがり焼けた『因幡の塩鯖』は最高の味わいでした。ノルウェーのサバが鳥取の伝統の技術で、こんなに美味しく仕上がるなんて感動です!」。そして、しみじみとヘンリックさんは語る。「脂ののった塩鯖は最高ですね。日本に来て気が付いてよかった……」。

ん??

実はノルウェーの市場に「塩鯖」は存在しない。なおかつ、ノルウェーで一般的に出回るのは、脂があまりのっていない「夏のサバ」。なんと日本人の大好きな「脂ののった時期のサバの美味しさ」をノルウェーの人々は知らなかったのである。

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フライパンで楽しむ「ノルウェー塩さばレシピ」

「ノルウェー塩さばのバジル風味」。バジルがさわやかなイタリアン! トマトもベストマッチ

ノルウェー水産業界のマーケティングを行うノルウェー水産物審議会では、サバのフィレや切り身を塩加工した「ノルウェー塩さば」の美味しさにもっと親しんでもらうため、「フライパンひとつでできるレシピ」のPRに取り組んでいる。

「ノルウェー塩さばは、おろす手間もなく、味もついています。グリルを使うのは面倒という方でも、フライパンひとつで手軽に調理できるのも便利です。もちろん、わたしの自宅の冷蔵庫にもいつも入っていますよ!」とヘンリックさん。

ヘンリックさんの十八番は「塩サバサラダ」。
「ちぎったレタスを器に盛り付け、その上にフライパンで焼いた塩サバをのせれば、完成! あっという間に忙しいときでも、DHAやEPAがしっかりとれて健康にいいサラダができあがります」

ノルウェー水産物審議会の制作したレシピブックには、塩さばのアクアパッツアやカレーなどカラフルなレシピが並ぶ。「あえて、わたしたちは和風でなく洋風のレシピを提案しています。最近、子供たちが魚を食べなくなったといわれていますが、これならお子さんたちにも喜んで食べてもらえるのでは」(ヘンリックさん)。

鯖サミットのイベント会場に設けられたノルウェー水産物審議会のブースでも、ノルウェー塩さばのバジル風味や、ノルウェー塩さばサンドがふるまわれ、老若男女が列をなし、大好評。

そして会場を歩くヘンリックさんも大人気だ。ノルウェーサバへの愛を語り、サバつながりを喜ぶサバ関係者や来場者に、ひっぱりだこ!

ノルウェーと日本をつなぐ「サバ」

「ノルウェー塩さばサンド」。カリッと香ばしく焼いた塩さばをサンド。冷めても美味しい! マスタードでグッと味が引き立つ

ヘンリックさんは鳥取滞在中、因幡の塩鯖の加工場に行き、昔ながらの手作業による徹底した血抜き、塩ふりを行う人々の姿に「歴史を感じるハンドクラフト!」と感嘆し、ノルウェーサバが欠かせないというサバ関係者の声を聞き「ノルウェーサバが大切にされていること」に感動し、日本各地に「豊かなサバ料理があること」を知って「サバはもはや文化だと思いました」と感想を述べる。

「サバを通じて、遠く離れたノルウェーと日本が近くなる。これはすごいことです」

鳥取で覚えた「サバ用語」でヘンリックさんは感動の気持ちを表現してくれた。

「サバらしい!!!!!!」

サバのダジャレはグローバルだった……。

ヘンリックさん、母国でもぜひ連発して、普及させてくださいね! あ。「お疲れサバです」と「ごちそうサバでした」もお忘れなく!!


●池田陽子(いけだ ようこ)/
サバを楽しみ、サバカルチャーを発信し、サバで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動し、イベント「鯖ナイト」を実施する「全さば連」(全日本さば連合会)広報担当「サバジェンヌ」。本業は薬膳アテンダント/食文化ジャーナリスト。本誌では「元気になる若返り薬膳」を連載。著書に『ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『春夏秋冬ゆる薬膳。』(扶桑社)。


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