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サバジェンヌが行く!

サバジェンヌが行く! 第24回
山間のサバグルメ! 岡山県新見の郷土料理を堪能

鯖グルメは海沿いの町だけではありません! 山には山のサバグルメ! よって山にもサバジェンヌは現れる! 全さば連(全日本さば連合会)サバジェンヌ池田が、「山系サバグルメ」を追いかけて、岡山県新見市を訪ねました。

備中を代表する「鯖寿司」

趣のある昔ながらの町屋が残る新見市御殿町。毎年10月15日に開催される「土下座まつり」(御神幸武器行列)には、多くの観光客が訪れる

岡山の寿司といえば「ばら寿司」のイメージがあるが、それは「備前」とよばれる県南の話。県北部の備中を代表する郷土料理は「鯖寿司」。鳥取県・境港で獲れたサバに塩をした「塩鯖」は、中国山地を越えて山間の町まで運ばれた。いわば、鳥取~岡山の「鯖街道」があったのだ。

塩鯖を使った鯖寿司の歴史は古く、新見藩の参勤交代の際には武士たちの弁当とされたともいわれている由緒ある料理。いまでも、県北エリアではお祭りや祝い事では欠かせないごちそうだ。

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お頭、しっぽ付き! 伯備「鯖の姿寿司」

もともとは食堂として開業した『伯備』。後述する鯖寿司以外にも、いのしし料理や、チョウザメ料理、新見キャビアなどの地元グルメが堪能できる

岡山県西北部に位置し、鳥取・広島と接する新見市では、そんな歴史ある鯖寿司を楽しめる店が揃う。

備中の食材を使ったさまざまな料理が楽しめる『伯備』でも、鯖寿司は昭和4年の創業時からの人気メニューだ。社長の佐藤直人さんは「かつては各家庭で鯖寿司が作られ、それぞれの家の味を食べ比べたりしたものです」と語る。

「備中お祭り寿司 鯖の姿寿司」(1720円)。迫力のお頭付き!

『伯備』の「備中お祭り寿司 鯖の姿寿司」は、新見の伝統的なスタイル。鯖を一匹、まるごと背割りにして、中にもち米入りの酢飯をたっぷり詰め込んである。「その昔、武士たちが首を切ったら『首切り』、腹を割いたら『切腹』という縁起を担いで、お頭付き、背開きにしていたようです」(佐藤さん)。

上質な脂ののった寒鯖を使った塩鯖は、適度な加減まで酢で塩抜きをして一昼夜、特製の甘酢に漬け込んで締める。「季節によって、酢の浸かり加減を調整しています」と佐藤さん。その後、酢飯をべたつかせないために一晩おいて水気を完全にぬいてから、骨をとって皮をむき、酢飯をつめて、重石をのせてさらに一晩おいてなじませる。「作ってすぐより、鯖と酢飯の味がなじんで美味しくなります。3日目くらいが、いちばん美味しくなります」と佐藤さん。そもそもは保存食。昔は「カビが生えてこそ旨い!」という強者もいたらしい。

また酢飯には、もち米が入っているのが新見の特徴。「もち米をブレンドすることで、日が経っても酢飯が固くならないように、という工夫なのですが、それだけでなく粘りのある酢飯の食感が鯖寿司に合うんです」と佐藤さん。とにかく「粘り」は大切と、佐藤さんが強調する。なにせ、酢飯をつくる時点で、粘りがでるまでご飯をもむ、というほどだ。

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まるで“おはぎ”のような食感にジェンヌ感動!

目の前に出てきた、お頭付きの鯖寿司は壮観のひと言! そして肉厚なサバの隅々にまで酢飯が詰め込まれている。

「サバにたっぷり酢飯を詰めるのも大切なポイントなんです」と佐藤さん。「頭からしっぽまでギューーーーッとご飯を詰めこみます」。というわけで、頭の中にも、みっちり酢飯が詰まっている。その姿はもはや、鯖寿司界における「イカめし」状態である。

ひと切れがボリューミーな鯖寿司をひと口食べる。ここではじめて佐藤さんの「もち米入り粘り酢飯」力説の意味がわかった。

うわっ。

でた! 「サバおはぎ」!

酢飯の食感が、まさに「おはぎ」的。そして、これがムッチリしたサバのコクのある風味とじつにバツグンの相性。ほのかに甘く、ほどよく粘りのあるもっちりした酢飯とサバが、口の中で一体化してとろけるような味わいになるのだ。米がサバの「おまけ」になっていないのである。

そして、このおはぎ的鯖寿司の真打は「ヘッド」にある。
「頭の部分が好きだというひとが多いんですよ」と佐藤さん。頭につまった酢飯が美味しいんです。食べてみてください」(佐藤さん)

ジェンヌ感動の鯖寿司の「頭」。詰まった酢飯がウマい!

頭の部分の身をかじりながら、酢飯を食べる。うおー。衝撃のサバヘディング! ボディ部分よりも、酢飯にサバの旨みがしみこんで、極上の味わい!
「頭は脂がのっているせいか味がしみ込みやすいんですよ。各地で開催される物産展で鯖寿司を試食で提供するときには、『残った頭のところを絶対とっておいて!』という従業員もいるくらいです」と佐藤さんが笑う。

「鯖寿司は日が経ったら焼いたり、衣をつけて天ぷらにするのもおすすめですよ」と佐藤さん。焼けば魅惑のサバヘッドの身も美味しく食べられるそう。北海道産の白板昆布を使用し、バッテラ風に仕上げた「鯖の棒寿司」(1230円、要予約。記事のトップ写真参照)もおすすめ。ぜひお試しを♪

■伯備
住所:岡山県新見市西方469-1/電話番号:0867-72-3125/営業時間:11時~20時L.O. /休み:元旦
※「備中お祭り寿司 鯖の姿寿司」はテイクアウトもあり。
通信販売のほか、大丸東京店でも販売。

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おしゃれな寿司カフェで楽しむ鯖寿司

女子会利用も多い『寿司一』。夜はおつまみセットなど一品料理も充実

創業50余年、新見市で最も長い歴史を誇る寿司店『寿司一』でも鯖寿司が人気商品。その『寿司一』が昨年リニューアルして、装いも新たにカフェスタイルの『新見の庄&Cafe寿司一本店』としてオープン。スタイリッシュな店内で、旬のネタを使った寿司や、鯖寿司をコーヒーやスムージー、夜はカクテルなど豊富なドリンク類とともに楽しめる。

「従来の寿司店の概念にとらわれない店にしようとリニューアルしました。寿司店には入りづらいと思っていた方や、女性にも気軽にお越しいただけたら」と、倉敷の建築家が手掛けたおしゃれな店内で微笑むのは社長の加谷芳樹さん。旧店舗の昔ながらの格子窓や小上がりをいかした内装、寿司カウンターだった一枚板を使ったテーブルなど、歴史を残しながらスタイリッシュな雰囲気に仕上がった空間は、コンセプト通り女性客にも好評。市外から訪れる人も多い。

「金棒すし さば包み」(1835円)。洗練された味わい

寿司一創業時から作り続けられている鯖寿司「金棒すし さば包み」は、「サンドイッチ」スタイル。酢飯をおろしたサバ2枚でサンドした「サバサンド」寿司だ。大阪、岡山市内のデパートでも人気で、地方発送も行い、日本各地からリピーターが絶えないという。

「脂が強すぎず、弱すぎず、適度な脂のり」の身質を追求して厳選した、冬の真サバの塩鯖を「薄味のほどよい加減」(加谷さん)まで、調味した酢で締める。酢飯は、握りでも使っている「朝日米」。岡山県だけで本格的に作られ、粒が大きく、適度な歯ごたえがあるのが特徴だ。ただし、鯖寿司用に握りよりも水を多くして、やわらかく粘りが出るように炊き上げる。

サバの身の上に、酢飯をのせて、さらにサバをのせたら、酢飯がつぶれすぎないように程よい加減で、空気を抜くようにきっちり締めて1日おく。「サバと酢飯がしっかり一体化してうまくなじんでこそ、美味しい鯖寿司になります」と加谷さん。やはり「なじみ」は大切だ。

老舗寿司店の鯖寿司は、シャープな印象。フレッシュな締め具合のサバは、やさしい脂のり、軽やかな爽やかさ。サバとなじんだピカピカの酢飯は米粒の食感もほどよく寿司職人の手による、リズムのいい「軽快な鯖寿司」は、いくつでもあっさり食べられる。

新見は岡山から特急で約1時間。サバファンなら、ぜひ足を延ばしていただきたい。フレッシュな鯖寿司もいいけれど、山の「なじみ系」鯖寿司も素晴らしい。ビバ! マウントサバ!


■「新見の庄 Cafe寿司一本店」
住所:岡山県新見市高尾2479-11/電話番号:0867-72-0710/営業時間:11時半~20時半(日曜~17時。ただし予約の場合、営業)/休み:月曜日、第3日曜日
※「金棒すし さば包み」は、テイクアウトもあり。
タカシマヤ大阪、タカシマヤ岡山でも販売し、地方発送も行っている。


2015年4月16日公開


●池田陽子(いけだ ようこ)/
サバを楽しみ、サバカルチャーを発信し、サバで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動し、イベント「鯖ナイト」を実施する「全さば連」(全日本さば連合会)広報担当「サバジェンヌ」。本業は薬膳アテンダント/食文化ジャーナリスト。本誌では「元気になる若返り薬膳」を連載。著書に『ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『春夏秋冬ゆる薬膳。』(扶桑社)、「ゆる薬膳。」はじめたらするっと5kgヤセました!(青春出版社)。


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・「「サバジェンヌが行く!」一覧

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