満吉(まんきち)くんは、各時代で話題となった存在と、時空を超えて交流できるという特殊な能力を持つ猫。この愛くるしいキャラクターの生みの親、マルチクリエイターの江戸家猫ハッピーさんが、満吉くんを主人公にした漫画で心が和らぐ物語を紡ぎます。第4回は「きんぎょ」編です。
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満吉くんは、江戸時代の生まれ
満吉くんが今回、タイムトリップする時代は、江戸後期。満吉くんの生い立ちに関することが少し明らかになります。
江戸家猫ハッピーさんによる満吉くん関連のサイト「猫満福庵」には、「江戸時代、日本橋で飼われていた猫。あの世で、遊んだり気持ちよく菩薩様の膝の上で寝ていたが、菩薩様にお手伝いを頼まれて、この世に戻ってきた」と、略歴が紹介されています。「きんぎょの巻」の中では、飼い主が歌川国芳(うたがわ・くによし)だったことが明かされました。
国芳は1798(寛政9)~1861(文久元)年、江戸で活躍した浮世絵師です。2021年に、没後160年記念の展覧会を開いた太田記念美術館(東京・神宮前)のホームページによると、「天保の改革の影響下における不安定な世情の中で、精力的に作品を描き続けたことで知られています。改革では、幕府によって庶民のさまざまな娯楽に厳しい統制が加えられ、浮世絵でも役者や遊女といった人気ジャンルを描くことが規制されました。そんな中、国芳が活路を見出したジャンルのひとつが戯画。擬人化された動物たちを描くなど、底抜けに明るくてユーモアたっぷりの戯画は庶民の間で大人気となります」と画風に触れています。
天保年間に、「金魚づくし」シリーズ
天保年間(1830~44)の後期に、国芳は戯画の「金魚づくし」シリーズを生み出します。擬人化された金魚がシャボン玉売りに扮したり、筏の船頭になったり…。なんともユーモアあふれる描写が魅力です。『金魚と日本人』(鈴木克美著、講談社学術文庫)によると、中国から渡ってきた金魚は18世紀に入ると江戸でブームになったといいます。江戸っ子の国芳にとっては、身近な題材だったのでしょう。
この時代の主な出来事は、海外ではアヘン戦争(1840~42年)、日本では天保の改革(1841~43年)など。国芳が亡くなった1961年には、アメリカでリンカーンが第16代大統領に就任、南北戦争(~65年)が始まりました。
6月になって季節は夏に入りました。漫画の中で、満吉くんは、「工芸品や風鈴や団扇手拭いとかいろんな物に描かれて日本の夏の主役だよ」と、金魚に語りかけます。日本の夏を強く想起させる金魚のお話を、満吉くんの漫画でお楽しみください。