『おとなの週末Web』では、手作りの味も追求していきます。そんな「おとなの週末」を楽しんでいる手作り好きから、折々の酒肴を「季節の目印」ともいえる二十四節気にあわせて紹介しています。「寒露」の20回目。秋サケの生筋子でイクラ醤油漬けに挑戦してみました。
秋10月は皮のやわらかなイクラの季節
秋晴れの10月。日中は暑いくらいの日も続きますが、朝晩には秋の深まりも感じる頃。野山の草々は露を蓄えるなど確実に冬が近づいているのです。古くからの生活暦・二十四節気では「寒露」(かんろ。10月8日からの2週間ほど)と呼ばれる時期ですが、オイラの「手作り暦」では、イクラを仕込む季節でもあります。
さっそく魚屋さんで手に入れましたが、今年は値段がとても高いようです。ロシアのウクライナ侵攻の影響や物価高もあり、例年100gあたり600~700円で買えていたものが、9月のデパ地下では100gあたり2000円近くもし、さすがにぶったまげました。
イクラはロシア語で「魚卵」を意味するもの。さて、日本語ではなんと呼ぶのでしょうか? スーパーなどの表示では、「生筋子」のようです。秋サケのうち、主に白サケの雌が抱えているお腹の卵(卵巣=腹子)を、産卵のため川に遡上する前に沖獲りしたものです。腹子をその姿のまま塩漬けにしたものは筋子と呼ばれますが、加工なしの「生」のものは生筋子として区別されているということです。
生筋子はおおむね9月初旬から店先に並び始めますが、この時期のものはイクラ作りには適しません。卵の皮がまだ未熟で、筋子状態のものを一粒ずつばらしていく際に、卵がつぶれてしまうのです。オイラの過去の経験では半分くらいがつぶれてしまい、がっかりしたこともめずらしくありません。
では、いつ頃の筋子がイクラ作りに適しているのかと言えば、「9月末~10月中旬の筋子」の一択となります。オイラは北海道・釧路のイクラ加工業者さんから直接に生筋子を分けてもらっていたことがあるのですが、その業者さんはこう説明してくれました。
「知床の羅臼産のものが最高の卵。しかも、9月の秋分の日前後から、10月の半ばまでに獲られた秋サケの生筋子だけをイクラにしている。理由は、卵をもみほぐす際にもつぶれず、また皮もかたくないから」
それでも9月ちゅうは走りの時期でもあり、値段も高め。したがって価格の落ち着く10月の生筋子こそが、財布にもやさしくイクラ作りには最適なのです。これで「イクラドーン!」のイクラご飯も、イクラおろしもたっぷり味わえます。