新大久保“コリアンタウン”の本格韓国料理店6選【お店で使える韓国語付き】

『シンチョン ソルロンタン』 滋養に満ちたスープで胃袋を癒すソルロンタン コムタンにテグタン、さらに多彩なチゲ類と、栄養満点のスープ料理は韓国の食卓の中心だ。なかでも牛骨スープのソルロンタンに特化したのが同店なのだ。まず…

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韓国料理店が集まる街・新大久保。駅周辺にある若者向けのにぎやかな店とは一線を画し、路地裏などには喧騒から離れ、本国そのものの美味を提供する店も多い。今回は、本格韓国料理を大調査してきました。

『ナンマンゴギ』

進化する熟成肉で、初体験のサムギョプサル!

店の入り口で不思議な光景に出合った。水槽にたゆたうのは魚ではなく大きな豚の塊肉。奇をてらったディスプレイかと思いきや、常時0.5℃に保たれた塩水の中で、凍らせずにゆっくりと低温熟成させる独自の手法なのだとか。炭火の上で香ばしく炙った豚バラ肉はすっと歯が入る柔らかな口当たりで、噛むほどにすっきりとした甘みの脂がほとばしる。同じく低温熟成させた肩ロースはコクも風味も増している。

厚切サムギョプサル 1738円

『ナンマンゴギ』厚切サムギョプサル 1738円 スタッフが余分な脂を落としつつ丁寧に火入れしてカットしてくれる。まずは塩とワサビでシンプルに熟成豚肉の味わいを堪能したい

「最初はぜひ塩とワサビだけで食べてみて!」とスタッフに勧められた理由も納得だ。さらに焼くほどに旨みが増す熟成キムチに、サンチュやエゴマの葉、甘酸っぱい大根の漬物なんかと一緒に食べれば、みずみずしい野菜の食感や複雑味も加わって、ヘビー級の塊肉も軽やかに平げてしまう。新大久保にサムギョプサルを出す店はいくつもあるけれど、食いしん坊な大人の舌を満足させてくれる、間違いなしの1軒だ。

『ナンマンゴギ』

[住所]東京都新宿区百人町1-1-22
[電話]03-6457-3092
[営業時間]11時〜23時(22時LO)
[休日]無休
[交通]JR山手線新大久保駅から徒歩6分

『元祖 宋家 本館』

旨さ炸裂!老舗の矜持を詰め込んだカムジャタン

店の入れ替わりが絶えない新大久保で23年目というから、この界隈ではもはや老舗の域だろう。ここは創業時から今も変わらず豚の背骨肉とジャガイモの鍋、カムジャタンで勝負する専門店だ。目の前でグツグツと音を立てる鍋からスープを飲むと、のっけから心を掴まれてしまった!パンチの効いたコクと深みがありつつも、後味はどこまでもクリア。続いて骨に付いた肉にかぶりつけば、抵抗なくスルッとはずれ、肉の繊維の中からじゃんじゃん旨みがあふれてくる。

ウゴジガムジャタン 1800円

『元祖 宋家 本館』ウゴジガムジャタン 1800円 “ウゴジ”とは乾燥白菜のこと。2週間かけて干して甘みを凝縮させた白菜がスープを吸って絶品!鍋は他に辛さのない“白”と唐辛子入りの“赤”の計3種

大きくカットされたジャガイモだってホックホク。この味を作るのは、スープの素材となる豚骨の丁寧な下処理から火加減の微調整といった細やかな仕事の積み重ね。「カムジャタンの味がブレるから他の料理は増やさない」と店主の宋さん。サイドメニューはキムチなどの漬物やチヂミにジョンと少数精鋭だ。ちなみ昼からこの鍋を味わうならば、すぐ近くに構えた別館へ。

『元祖 宋家 本館』

[住所]東京都新宿区大久保1-12-28
[電話]03-3205-9555
[営業時間]17時〜23時(22時LO)
[休日]月(祝は営業し翌火休)
[交通]地下鉄副都心線ほか東新宿駅A1出口から徒歩4分

『タッカンマリ食堂』

無垢な旨みと柔らかな身をタッカンマリで堪能

外階段をえっちら登ってビルの最上階へ。まずは冷えたビールとキムチサラダで空腹をかわしていると、間もなく大本命のタッカンマリがやって来た。極めつきにシンプルがゆえに、素材の良し悪しが味に直結するこの料理。お手並み拝見とばかりにスープを飲めば、雑味のない澄んだ旨みにのけぞった。続いて骨つきの身に挑めば、ふわっと柔らかく、それでいて弾力もある。いわゆる普通の若鶏とは少し違った身質だ。

タッカンマリ 4400円

『タッカンマリ食堂』タッカンマリ 4400円 ベースとなるスープは鶏ガラを7時間かけて弱火で炊き、すっきりしたコクある味わい。セットには長ネギやモヤシ、トッポキなどがつく

「ウチでは成長しきる前の小ぶりな雛鳥を生で仕入れているんですよ」とオーナーのハンさん。サイズも細かく指定していて、900g〜1kg前後が最も良い頃合いだとか。ひとしきり食べたら、鶏の旨みが溶け込んだスープで韓国式のうどんやラーメンをクツクツ煮れば、最高のフィナーレだ。日本の鰻と同様に、韓国では鶏が夏の滋養食。この鍋でスタミナをチャージして、猛暑を乗り切ろう。

『タッカンマリ食堂』

[住所]東京都新宿区百人町2-3-20 ビション新大久保駅前3階
[電話]03-6877-6371
[営業時間]11時半〜15時半(15時LO)、17時〜22半時(22時LO)※土・日・祝は通し営業
[休日]無休
[交通]JR山手線新大久保駅から徒歩1分

『シンチョン ソルロンタン』

滋養に満ちたスープで胃袋を癒すソルロンタン

コムタンにテグタン、さらに多彩なチゲ類と、栄養満点のスープ料理は韓国の食卓の中心だ。なかでも牛骨スープのソルロンタンに特化したのが同店なのだ。まずは写真を見て欲しい。雪のように真っ白なスープは、牛のゲンコツやヒザ軟骨を何度も水を変えつつ丹念に血抜きしてから、じっくり5〜6時間かけて炊き上げたもの。舌の上へと流し込めば、すぅっと消えゆくあっさりとした味わいからクリーミーなコクも広がって、滋養が身体のすみずみまで沁み込む感覚。

ソルロンタン 1518円

『シンチョン ソルロンタン』ソルロンタン 1518円 スープには茹でた牛肉と素麺が入りご飯も付く。調味塩はまろやかさを生むため乾煎りするのもこだわりだ

それ自体には味付けされていないのも現地のスタイルで、テーブルに置いてある塩や胡椒で味を整えて、はたまた壷ごとやってくる自家製のキムチやカクテキを汁ごと入れ辛味を足してと自分好みに味変していくのも面白い。店は毎日午前11時〜翌朝6時までの通し営業で、ランチやディナーはもちろん、ついつい飲み歩いてしまった深夜の〆にも最高なのだ。

『シンチョン ソルロンタン』

[住所]東京都新宿区大久保1-11-2 エコロ新宿第5ビル2階
[電話]03-6457-3047
[営業時間]11時〜翌6時(翌5時LO)
[休日]無休
[交通]地下鉄副都心線ほか東新宿駅A1出口から徒歩4分

『トシオブ』

実力店のカンジャンケジャンに唸りっぱなし

新大久保で海鮮料理ならば迷わずこの店を選ぶべし。生け簀に泳ぐ魚をコチュジャンのタレで食す韓国流の刺身に、テナガダコの踊り食いなどなど魚介好きをわくわくさせるメニューがずらりと並ぶ。ちなみに店名も“トシ”=都市、“オブ”=漁夫の意味なんだとか。さて、そんな店の大看板がカンジャンケジャン。上質な渡り蟹の産地として知られる西海岸・延坪島産のそれを、自家製の醤油ダレに漬け込むこと数日間。鮮やかなオレンジ色のミソをチュッと吸えば、臭みゼロのピュアなコクが広がった。

カンジャンケジャンセット 3608円

『トシオブ』カンジャンケジャンセット 3608円 身もミソもぎっしり詰まった上質な渡り蟹を厳選。特製の醤油ダレに漬け込むことで、とろりとした身の上品な甘みも引き立つ

“飯泥棒”の異名も持つこの料理。ご飯に卵黄、トビッコなどが付くセットにして、ミソも身もたっぷり混ぜて食せば、その官能的な旨さに脳天を直撃される。加えて白身魚の刺身を甘辛酸っぱいスープにたっぷり浮かべた「ムルフェ」や、この界隈でも出す店は珍しい「ヌタウナギ炒め」など、どれも抜群。人気店ゆえ予約がベターだ。

『トシオブ』

[住所]東京都新宿区大久保2-26-1 地下1階
[電話]03-6457-6065(※15時〜17時がつながりやすい)
[営業時間]11時〜23時半(22時半LO)
[休日]無休
[交通]JR山手線新大久保駅徒歩4分

『美名家(みなや)』

家庭的&絶品!中でもポッサムは必食の味

店の扉を開けるなり「アニョハセヨ〜」と陽気なオモニの笑顔に迎えられた。今宵はきっといい夜になるに違いない。品書きを見れば、チゲに麺類、サムギョプサルとオールマイティな品揃え。どれにしようか迷っていると「初めてなら、まずはこれ!」と勧められたのがポッサムだ。国産の黒豚を鍋で火入れすること1時間半〜2時間。煮込み過ぎても味が抜け、煮込みが足りなくては硬さが残る、そのギリギリを見極めるのは長年のカンだという。

ポッサム 3800円

『美名家(みなや)』ポッサム 3800円 付け合わせには、塩漬け白菜、アミエビの塩辛、辛味ダレで和えた野菜などが付き、豚肉と共にサンチュに巻いて食す

千葉の農家から仕入れる柔らかな葉のサンチュに包んでパクリとやれば、とろりとした脂の甘みと力強い風味が一体となって押し寄せてきた。そこへすかさずオモニおすすめのマッコリをグビッとやれば黒豚の旨みがさらに膨らみ、もうため息。帰り際「カンジャンケジャンも鍋もおいしいのよ」とオモニ。そんな言葉を聞いてしまえば、2度も3度も訪れたくなるではないか!

『美名家(みなや)』

[住所]東京都新宿区大久保1-9-17 寿ビル2階
[電話]03-3203-4088
[営業時間]11時〜23時頃
[休日]月(祝は営業し翌火休)
[交通]JR山手線新大久保駅から徒歩6分

新大久保はなぜコリアンタウンになったのか

新大久保駅の改札を抜けると、平日にも関わらず待ち合わせする人々であふれていた。週末ともなれば、改札を出るのも困難になるほどで、韓国カルチャーの盛り上がりを実感せずにはいられない。しかし、そもそも新大久保はなぜコリアンタウンとして定着したのだろう?

始まりは1950年代。駅のすぐ近くに菓子メーカー・ロッテが工場を構えたのがきっかけで、多くの韓国人が移住し、現地の料理を出す食堂や食材店が生まれたそうだ。そして80年代のバブル期には歌舞伎町にアジア系クラブが乱立したことも起因して、そこで働く在日韓国人向けの飲食店がさらに数を増やしていく。さらに2002年のサッカー日韓W杯、その翌年の“冬ソナブーム”によって、日本人も本場の料理を目当てにこの街を訪れるようになっていった。

街を歩いてみると、そんな韓国系の飲食店や、食べ歩きスポット、物販店は、大久保通りと職安通りに挟まれた駅の東側に集中。特に若い男性がビラ配りをしているため「イケメン通り」と名付けられた(※諸説あり)通りは、コスメショップ、カフェ、映え系スイーツの店などが立ち並び、若者で大盛況。韓国ポップカルチャーの発信地ともなっている。

とはいえ、われら“おとな世代”だって、新大久保を楽しみたい!食べ放題や飲み放題、激安を謳う店でなくていいから、本物の韓国料理を堪能したい!そんな想いから立ち上がったこの特集。毎日、新大久保に通ってリサーチを重ね、おとなの舌を満足させる店を探してきました。

レストランで使える韓国語講座

【いただきます】チャル、モクケッスムニダ
食前のどのようなシーンでも使う日本の「いただきます」とは違い、誰かにご馳走になるときに使用する

【ごちそうさま】チャル、モゴッスムニダ
チャル=よく、モゴッスムニダ=食べたの意で、合わせて「ごちそうさま」となる

【おいしい】マシッソヨ
「旨い」と独りごちる際に使うのがマシッタ。誰かとの会話で話す場合は、こちらマシッソヨを使う

【おかわり】ト、ジュセヨ(チュセヨ)
ト=もっと、ジュセヨ=くださいの意。水やご飯などおかわりをしたい時に使う

【いくらですか?】オル、マエヨ?
オルマ=いくら、エヨ=ですか? の意。テイクアウトの店などで重宝しそう

【また来ます】ト、オルケヨ
ト=また、オルケヨ=来ますの意。おいしいお店に出合ったら、帰り際に使ってみよう

撮影/鵜澤昭彦(ナンマンゴギ、元祖 宋家 本館、タッカンマリ食堂、シンチョン ソルロンタン、トシオブ)、小澤晶子(美名家)、文/菜々山いく子

2023年9月号

※2023年9月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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