「あか牛」の肉汁滴るバーガーで腹ごしらえ、蕨のピクルスも◎ 乗馬体験の受付は、2023年3月に乗馬クラブ内にオープンしたカフェ「Littles」のカウンター席で行うことができる。まずは、体験前にこのカフェで腹ごしらえする…
画像ギャラリー世界最大級のカルデラを持つ熊本県阿蘇市には、今から約1,3000年前から存在していたと言われる、20,000ヘクタールもの雄大な草原が広がる。10月から11月には黄金色に輝くススキも見頃を迎え、まさに“おとなの絶景旅”を楽しむのにベストなシーズンだ。今回は草原に沈む幻想的なサンセットを鑑賞しながら楽しむ乗馬をメインに阿蘇ならではのアクティビティを楽しむ旅をお届けしたい。
西部劇に出てきそうな建物にときめく
熊本空港から車を走らせ、阿蘇外輪山の北西の稜線上を走る絶景道路「ミルクロード」を超えて1時間ほど。旅のはじめに向かったのは、標高850mの北外輪山に位置し、東京ドーム約32個分の広さを誇る乗馬クラブ、「夢☆大地グリーンバレー」だ。到着すると、まるでアメリカの西部劇のワンシーンから抜け出してきたような異国情緒漂う建物と、味のあるヴィンテージ感たっぷりの車が出迎えてくれる。
不登校の女の子を癒した「ホ―スセラピー」
国内の乗馬クラブでは最大規模というこちらでは、初心者でも30分から気軽にトレッキング体験(1人30分8,800円~)にチャレンジできる。因みにオーナーの梅木康裕さんは、乗馬することで心身を改善し、社会復帰などを目指すリハビリテーション療法、ホースセラピーの普及に努めている1人でもあるそうだ。
「ある時、いじめにあい、不登校になった女の子が両親と此処に来て、乗馬クラブからなら学校に行けそうと言ってくれました。その子を預かり、調教する馬の世話を日課にさせると、彼女も馬もやさしく成長し、最後は中学校に通えるようになりました。乗馬にはそれだけ人を癒す効果があるんです」(梅木さん)
筆者はこの日二十数年ぶりの乗馬体験だったが、このエピソードを聞いて乗馬にチャレンジしてみたいという気持ちがむくむくと湧いてきた。そうだ、久々に身も心も癒されたい。
「あか牛」の肉汁滴るバーガーで腹ごしらえ、蕨のピクルスも◎
乗馬体験の受付は、2023年3月に乗馬クラブ内にオープンしたカフェ「Littles」のカウンター席で行うことができる。まずは、体験前にこのカフェで腹ごしらえすることにした。店主が選りすぐったアンティーク家具が並ぶウッディな店内は、温かみのある雰囲気が心地いい。
長年沢山の馬に触れ、馬たちを看取った経験もあるスタッフの経験を元に、「天に昇った馬たちがペガサスになって大切な人に想いを届ける」というテーマを設けた同店には、随所に作家ものの馬のオブジェやアートが点在し、店内で商品を購入することもできる。
ここを訪れたら食べておきたいのが、「阿蘇LITTLESハンバーガーサンド」(1,500円)である。あか牛のオイルを纏わせた肉汁あふれる肉厚なパテと、阿蘇産のトマトやキャベツ、程よく焼きめのついた香ばしいバンズを合わせたジューシーなハンバーガーは、近隣で収穫した蕨を使ったピクルスの酸味が、程よいアクセントとなっている。
乗馬しながら阿蘇山と九重連山を一望!夕日が沈む大草原
そして、いよいよ乗馬体験の時間である。この日は夕日に染まる空を眺めながらトレッキングが楽しめる「サンセットロングトレッキング」に挑戦。ビデオで簡易的な乗馬レクチャーを受けたら、出発だ。小学生時代に一度乗馬したことがあるだけの筆者は、正真正銘の初心者なので、いざ進み始めると予測以上に馬が揺れ、内心ひやひやである。
とはいえ、インストラクターの指示のもと体と目線を進行方向に向け、胸を張って馬に乗るよう心掛けてみると、意外にも真っすぐ進み始めた。この乗馬クラブの最大の特徴は馬に乗りながら阿蘇山と九重連山を一望できる点だ。周囲をとりまく黄金色のススキや茜色に染まる空も相まって、身も心も癒されていく。
馬も生き物なので、ときどきその辺の草を思いついたように食べ始めたり、列から外れて違う方向に進み始めたりすることもあるが、人間が動揺せずに手綱を引き、進行方向を示すことで自然と元に戻り、また前を向いて歩きはじめてくれる。
「自らの心の持ち方が馬の歩みをすべて決めるのだな・・・」と思うと、草原という小宇宙の中で行う
乗馬は、まるで人生のようでもある。
千年前から続く壮大な景色と馬たちに癒される
時には急な坂を登ったり、草原を駆け抜けてみたり。初心者がこの広大な草原を馬と共に走るのは正直かなり不安だったが、インストラクターの方が声掛けしてくれるおかげで、思いのほか安定したトレッキングとなり、この上ない爽快感で満たされた数時間となった。「夢☆大地グリーンバレー」の乗馬体験は、経験者はもちろん初心者の人間にもぴったりのアクティビティなのだ。
目まぐるしく過ぎる日常や都会の喧騒にふと疲れたら、千年前から続く広大な草原とやさしい馬たちに癒されに、ぜひ阿蘇へ足を運んでみてほしい。
文・写真/中村友美
夢☆大地グリーンバレー
熊本県阿蘇市湯浦1674−18
090-1773-3366
担当:梅木
https://www.gv-aso.com/horse-riding