「食」のクイズ

4月12日は「パンの記念日」その由来とは? 「食」のクイズ(10)

人気連載「食」のクイズ第10回はパンの話題です。4月12日の「パンの記念日」には、歴史的な由来がありました。

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パン食普及協議会が記念日を制定

【問題】
1982年、パン食普及協議会によって、4月12日が「パンの記念日」と定められました。この記念日は、以下のどの出来事を記念して定められたものでしょうか?

(1)元和時代(1615~1624年)、長崎の伊藤小七郎が、南蛮人から製法の伝授を受けて、初めてパンを含む長崎名産の南蛮菓子の商売を始めた。

(2)天保13年(1842年)、江戸幕府の代官である江川太郎左衛門が、日本ではじめて兵糧パンを試作した。

(3)明治7年(1874年)、木村家の創業者である木村安兵衛と次男英三郎が、世界初となる酒種あんぱんを発明した。

答えは次のページ!

当時の世界情勢が影響

【答え】
(2)天保13年(1842年)、江戸幕府の代官である江川太郎左衛門が、日本で初めて兵糧パンを試作した。

江川太郎左衛門は、幕末の伊豆韮山代官で、西洋流兵学の権威として知られた人物でした。そのような人がなぜパン作りに取り組んだのでしょうか?それには当時の世界情勢が大きく関わっています。

当時清国がイギリスとアヘン戦争(1840~42)を行い、敗れてしまいます。次はイギリスが日本に迫ってくると考えた太郎左衛門は、幕府に進言して、江戸湾口の防備の強化、江戸近海の巡視、大砲鋳造などの防衛策を講じました。

また、陸上戦となった場合、敵前で炊飯するとその煙をめがけて敵の砲弾が集中し大損害を受けるため、兵糧パンを作る必要があると考えたようです。1842年4月12日、太郎左衛門は伊豆韮山の邸内に急造したパン焼窯ではじめて兵糧パンを試作しました。結果は上々で、その後各藩が競って兵糧パンを作り、有事に備えて貯蔵するという兵糧パンブームが起こったといいます。(参考[1]、p11)

「兵糧」に適しているという考えがあったんだね

(参考)
[1]「パンの明治百年史」(パンの明治百年史刊行会、1970年)
https://www.panstory.jp/pdf/hen1.pdf

キリスト教の普及とともに

【パンが日本に伝わったのはいつ?】
1543年に種子島に漂着した中国船に2名のポルトガル人が乗船しており、所有していた鉄砲(火縄銃)が日本に伝えられました。これが南蛮貿易のきっかけとなり、ポルトガル人を中心とする南蛮人が渡来するようになりました。

1549年にはフランシスコ・ザビエルが日本にやって来て、キリスト教を広めました。その後九州の諸大名や織田信長らの庇護も受け、キリスト教は順調に信徒を増やしていきました。キリスト教の儀式ではパンと葡萄酒はなくてはならないものでしたが、パンは日本でも生産できたため、キリスト教の普及とともにパンも大衆の中に浸透していったといいます。(参考[1]、p5)

【パンを最初に売り出したのは?】
キリシタン大名の大村純忠が長崎を教会領としてイエズス会に寄進したため、長崎は南蛮貿易の中心となりました。

『明治38年刊の長崎市役所編「幕府時代の長崎」によると、パンを含む長崎名産の南蛮菓子の元祖は元和時代(1615~1624年)に南蛮人から製法の伝授を受けて商売をはじめた伊藤小七郎なる人物だった』(参考[1]、p4)といいます。この時代、長崎ではパンはすでに決して珍しいものではなかったようです。

【パンが姿を消した鎖国時代】
島原の乱(1637~38年)以降、鎖国が始まり、キリスト教が禁止されると、日本全国に普及していたパンもほとんどその姿を消し去ったといいます。パンはキリスト教の儀式と不可分だったため、パンを食べることは隠れキリシタンと疑われても仕方のないことだったためです。(参考[1]、p6)

「パン祖」は?

【幕末に再びパンを全国に広めた江川太郎左衛門】
こうした中、再びパンが全国に普及するきっかけを作ったのが、前述の江川太郎左衛門でした。太郎左衛門は日本で初めてパンを作ったわけではありませんが、パン食が廃れた幕末期に、パンの効用に目を付け、日本中にパンが普及するきっかけを作った最初の人物だったことから、「パン祖」と呼ばれています。(参考[1])

【日本独自のパンが登場】
幕末から明治初頭の日本で、パン食は少しずつ普及していきました。しかし、イーストがなくホップで作られていた当時のパンは、食感が固く日本人の口には合いませんでした。そこで木村英三郎は日本人に合うパンの研究をした結果、酒種酵母を作り出すことに成功し、酒種あんぱんを発明しました。これが瞬く間に有名になり、大好評を得たといいます。(資料[2])

【「パンの記念日」と「パンの日」の制定】
江川太郎左衛門が兵糧パンの試作に成功した4月12日が、いわば日本のパン発祥の日であることから、パン食普及協議会は1982年に、4月12日を「パンの記念日」と定めました。
また、毎月12日を「パンの日」と定め、全国のパン屋さんがより一層のサービスに努める日としました。
パンの日には、割引クーポンをプレとゼントしているお店もあります。
お目当てのパン屋さんがあれば、パンの日にのぞいてみるのも良いかもしれませんね。

4月12日は「パンの記念日」です

(参考)
[2]「銀座木村家の歴史」(銀座木村家ホームページ)
銀座木村家の歴史 | 銀座木村家::あんぱんの元祖 http://www.ginzakimuraya.jp/history/

出題:三井能力開発研究所 代表取締役 圓岡太治

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