ティモンディ前田裕太の“おとな”入門

【ティモンディ前田裕太の“おとな”入門】第16回 20代最後の特別回

ティモンディ前田裕太

法律の知識は役に立っていないけれど それが、ご覧の有り様である。 20代前半を軽く振り返ったけれど、大学院に入った23歳から、まるで全く異なる人生を歩んでいるように思える。 誰が想像しただろうか。 法律研究サークルで、他…

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お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代を目前にした前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう!
8月25日に30歳の誕生日を迎える前田さんにとって、今回が、本コラム20代最後の回となります。そこで、「20代最後の特別回」と題して、これまでの人生を振り返っていただきました!

散々だった20代の幕開け

ここでの連載では、この回が20代最後のコラムになる。

思えば、無茶苦茶な20代だった。

まず、20歳になった時は、成人式の日が歴史的な大雪だった。交通機関は止まったり遅れたりで、散々な20代の幕開けだった。

散々だ。

何よりキツかったのは、私の地元は神奈川県の相模原市なのだけれど、当時、住民票を世田谷区に移してしまっていたので、世田谷区の成人式に出席することになったことだった。

これは、普通に出席しなければよかった。

考えてみれば、そりゃそうなのだけれど、成人式の会場に行くと、見知らぬ新成人だらけだった。至るところで、自分とは全く関係のない感動の再会を目の当たりにするし、記念撮影大会が各所で開催されていた。

当然、縁もゆかりも無い私に居場所などない。

なんだか流れで、知らない人たちの輪に囲まれて、「みんなで記念写真撮ろうよ!」と声をかけられ、どこの小学校だか分からない人たちの集いに紛れて写真に写ったりした。

だから、世田谷区の誰かの成人式の記念写真には、赤の他人である私が苦笑いして写っていることだろう。

弁護士になると決めた大学時代

そんなイレギュラーな成人式を迎えてから、大学では法律の勉強に勤しんだ。

受講していない科目の授業にも出て、テストを受ける訳でもないのに、知識を得るために講義に潜っていた(当時、履修していない講義を受けることを”潜る”と言っていた)。

潜りすぎて、「潜水士」や「地底人」「モグラ」など、中には不名誉なあだ名で呼ばれたこともある。

在学中は、講義を受けるだけではなく、インターンで法律事務所へ行きながら、座学だけでなく、実務を勉強もしていた。

当時は、常に、『判例六法』と『ポケット六法』という、法律の載った本を2冊持ち歩いていた。

銃で撃たれても貫通しないであろう厚さがある本は、法律以外にも補足情報などが各出版社によって異なるので、引くほど重たいけれど、2冊とも、学んで疑問に思ったときに常に手の届くところにあるようにしていた。

学生時代、そんな私の姿を高岸が見たときには、「大学生とは思えない」と他人事のように言っていた。

君も同じ大学生なのだよ、と言おうとしたけれど、彼は彼で大学野球という特殊な畑でキャンパスライフを謳歌していたので、私からして見ても、彼は大学生とは思えなかった。

まあイレギュラーな大学生活を送っていたという点において、お互いが大学生と思えないのは、当然であってお互い様なのだろう。

彼は彼で大学生なのに制服じゃないと構内に居られなかったようだし。
変なの。

その後、法科大学院の入学試験を受けたらいくつかの大学院に学費免除で合格したので、どこかへ就職するのではなくて、これはもう院生になって、ちゃんと弁護士の資格を取りに行こうと決意したものだった。

法律の知識は役に立っていないけれど

それが、ご覧の有り様である。

20代前半を軽く振り返ったけれど、大学院に入った23歳から、まるで全く異なる人生を歩んでいるように思える。

誰が想像しただろうか。

法律研究サークルで、他人の駐車場に立ち入るのは、住居侵入罪にあたるのかとかを一週間ああだこうだ話し合っていた、あの時の天パ坊主が、北海道で冠番組を持たせてもらって、こうやってコラムを連載させてもらっているのだ。

20代前半に積み重ねてきたものが、何も役に立ってねぇじゃねぇか。

ロケに出れば、楽しい現場になるように努めたり、スタジオでは変な空気感にならないように気を張ったり、けれど、他の出演者の邪魔にならないよう引くところは引いたり、何も生かせていない日々を過ごしている。

法律どこ行ったよ。

まさか、北海道で冠番組を持って、愛媛でラジオ番組を持つことになることになるなんて。

でも、まあ、あれだな。

きっとこの先の30代も、過ぎてしまえば、また訳の分からない島に辿り着いてたりするんだろうな。

自分の思った通りの結果を目指して努力していても、辿り着く先は、全く異なる場所だったりするだろう。

今は20代前半の努力が役立たなくても、そのうち役立つ瞬間が来るかもしれないし。

法律の知識が役立つ瞬間なんて、決して来ないで欲しいけれど。

理想ばかり追い求めず、時には流れに身を任せて、30代を思い返した時には、また、色々と思った通りに行かなかったなあ、それでもまあ良かったなと思えるような、年の取り方をしていきたいと思う。

前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。

ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約25万人。

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