逆転合格!中学受験

ゲン担ぎで「とんかつ」を食べたのに不合格 入試の前日と当日にすべきこと、してはいけないこと

入試本番、最後の最後まで闘い抜く

試験が目前に迫った時期の準備とは 入試で注意すべきことは沢山あります。塾の先生方からも教えられるでしょうし、さまざまな情報が手に入ります。ここでは、特に重要度の高いことや見落としがちなことに重点を置いて述べます。 (1)…

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短期連載「逆転合格!中学受験」の第13回は、入試前日と当日の「すべきこと」「してはいけないこと」に焦点を合わせます。2月の“本番”が迫ってきました。受験生にエールを送ってきたこの連載も、今回で終わりです。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏が、長年の経験から得た数々の注意点をお伝えします。

「絶対合格するぞ」の賭け声は効果的なのか

今から数十年前、私自身の中学受験の入試当日のことです。試験会場に着いて教室の開場を待っていると、敷地にバスが数台入って来て、中から、「合格」と書いた鉢巻きを締めた、とある塾の受験生の集団が降りてきました。受験生たちはバスの横に集合すると、引率者に続いてコブシを天に突き出して「絶対合格するぞ」と掛け声を発し、気合を入れていました。その迫力に圧倒された記憶があります。ドラマではなく、実際の光景です。小学生でありながら、合格を目指してそれだけ必死に取り組んでいるのが中学受験のシビアな世界なのです。

気合を入れる言葉はもちろん大事です。それに加えて私が生徒にかけるのは、「今の実力で取れる最高の点を取りに行こう」という言葉。「今の自分の力を最大限発揮すること」を目標にすることで、そのためにはどのようなことをすれば良いかが浮かび上がります。

「自分が取れる点数を取るしかない」という潔さが生まれ、心の落ち着きにもつながります。そして、合格という結果が後からついて来るのです。

1点でも多く取りに行く「泥臭い執念」を持て

いよいよ入試直前、最後のメッセージとなります。今回、述べたいことは「試験本番での取り組み」と「入試までの数日間の取り組み」について。入試で明暗を分けるのは、1点でも多く取ろうとする「執念」です。試験本番で、泥臭くても1点を取りに行く方法をお伝えします。

(a)最後の1秒まで闘い抜く「終了間際にふっと答えが浮かぶ」

試験終了の合図があっても、1、2秒は、試験会場のどこかから鉛筆の音が聞こえます。最後の最後まで足掻いている受験生が実際にいます。

私自身も、試験終了間際にふっと答えが思いつき、ぎりぎり答えを書き込んだり、間違いを見つけて訂正したりした経験が何度かあります。最後まであきらめない執念が実を結びます。1点をもぎとるために、最後の1秒まで闘い抜いてください。

(b) 分からなくても何かしら解答を記入しておく「勘で構わない、数十%の確率で当たる」

記号選択問題でどれが正解か分からないときでも、とりあえず何か答えを書くことが大事です。おそらく違うだろうという選択肢は除き、残りの中からどれか1つを選べばよいのです。勘で構いません。

数十%の確率で当たるのですから、書くべきです。「後でまた戻って来て考えよう」はやめましょう。後回しにすると、忘れてしまったり、時間がなかったりします。ただし、とりあえず答えを書き込んだ問題はマークし、時間があったら戻って、もう一度考えてみましょう。

算数では、解けなくても、何かしらの数字を書き入れましょう。特に「場合の数」、「角度」、「速さ」の問題などでは、よく出てくる数字があります(6の倍数など)。実際に、テストで何度か当てずっぽうで答えを当てた生徒もいました。

(c) 制限字数がある記述問題は8割以上書く「受験界にある言い伝え」

国語の記述問題などで、制限字数がある場合は、「8割以上書かないと点数にならない」という言い伝えが受験界にはあります。

もちろん字数で点数が決まるわけではありませんので、必要なポイントが入っていなければ、0点です。しかし、少なくとも字数が足りないことで「採点対象外」となる危険性は避けましょう。

(d) 問題文で重要な箇所にアンダーラインを引く

点数を取るだけでなく、ミスによる失点を防ぐことが大事。それには「ミスをしない」という意識を持つことが必要です。

電車のホームで、駅員さんの指さし安全確認を見たことはあるでしょうか。まさに「初心忘るべからず」。「意識」というものは「意識的に持つ」ようにしなければ、薄れます。「指さし確認」は決まった行動を繰り返すことで、意識を保つ方法です。

試験にも「指さし確認」に相当する方法があります。それは「重要な箇所にアンダーラインを引く」こと。よくあるミスに、せっかく問題は解けているのに、答えるべきものを間違うケース(お兄さんの年齢を答えるところを、お父さんの年齢を答えた、など)があります。アンダーラインは、そのようなミスを防ぐことに役立ちます。

試験が目前に迫った時期の準備とは

入試で注意すべきことは沢山あります。塾の先生方からも教えられるでしょうし、さまざまな情報が手に入ります。ここでは、特に重要度の高いことや見落としがちなことに重点を置いて述べます。

(1)試験数日前からの準備

(a) 試験当日と同じリズムで生活する「勉強時間は9時から12時の間」

体調と同じように、頭の働きも、日や時間帯によって変化します。頭の働きが悪いときは、計算スピードが落ちたり、ケアレスミスが多くなったりします。そのような不調の波をなるべく抑え、入試時に良いパフォーマンスを発揮するために、数日前からは入試当日と同じリズムで生活することが大事です。

その中で特に大事なのが、起床時間と就寝時間。一日のリズム全体に大きく影響するからです。

次に、朝食時間と昼食時間。勉強時間は、多くの学校の試験が行われる9時頃から12時ごろまでにしましょう。

(b)持参物のチェック「マーカーを持ち込める中学も」

試験会場に持ち込めるものは、学校によって若干違いがありますので、よく確認しましょう。例えば、浅野中学(横浜市)では、マーカーを持ち込めます。マーカーを使えば、国語の文章を読むときの線引きや、算数の図形問題で図を描くときなどに色分けできるので、とても役立ちます。

しかし、これは募集要項ではなく、ホームページで公開されている資料に記載されており、見落としている方もいらっしゃるかもしれません。募集要項だけでなく、関係情報をくまなくチェックすることが大事です。特に、併願校で直前まで受験するかどうか分からない学校の場合は、見落としが起こりやすいので、早めの確認をおすすめします。

「前日、眠れなくても大丈夫」は本当か

(2)試験前日の過ごし方

(a) 前日は夕方には勉強を終える

試験直前まで頑張る気持ちは大事ですが、気を張り詰めすぎて、試験当日に疲れが出たという失敗談もあります。試験前日はゆとりをもって、気持ちを整えることを優先しましょう。前日は新しい問題や難しい問題は解かず、これまでの復習や見直しが大切です。

(b) 忘れ物対策で、試験に持っていくものは前日に必ずカバンに入れておく

忘れ物を防ぐため、入試当日に持つカバンと、その中身は前日に用意し、当日は出かける前に再確認しましょう。想定外のことが起こる可能性も、想定しておかなければなりません。入試当日に体調が悪くなるかもしれませんし、大雪や事故などで交通機関がマヒする可能性もあります。前日に心の準備をしておけば、そのような状況でも余計に慌てることがなくて済みます。入試当日に持っていくもののリストを画像で挙げておきます。

入試当日の持ち物リスト

(c) 前日眠れなかったらどうするか?「アドレナリン分泌で大丈夫」

経験上、前日にあまり眠れなくても、当日への影響をそれほど心配する必要はないと思います。人間は戦闘態勢に入るとアドレナリンが分泌され、脳神経や細胞が活発に働くため、実感としては多少の睡眠不足はそれほどハンディになりません。

実際、オリンピックで金メダルを取った選手が、「前日はあまり眠れなかった」とインタビューに答えていました。あまりよく眠れなくても、寝床に横になっているだけでもかなり疲労はとれます。前述のとおり、入試前は就寝時間・起床時間を調整しますが、計画通りにいかなくても気にする必要はありません。睡眠不足そのものよりも、そのことにとらわれて不安感を持つ方が、マイナスの影響は大きいと思います。

作り話のような“怖い”実話

(3)試験当日の注意

(a) 朝食「調子を崩さないよう、特別な食事は避ける」

朝食は、試験開始時刻から逆算して、少し時間に余裕を持つことが大事です。危惧されるのは、試験中にトイレに行きたくなることです。食べ過ぎると眠くなりますので、量も控えめが良いと思います。昼食も同様です。ただし試験中にお腹が空きそうなら、休憩時間に食べられるパンなどを持参しておくと良いでしょう。

試験だからと言って特別な食事をするのはやめましょう。試験当日はいつもとは異なる状態です。体調を崩す原因となりかねません。特に油物など消化に悪いものは摂らない方が無難です。

知り合いの女性Aさんのケースでは、高校受験の当日に「試験に勝つ」というゲン担ぎで、お母様が朝食に「とんかつ」を出しました。ところが、Aさんは試験の最中にお腹の調子がおかしくなり、何度かトイレに行くことになって、試験に集中できなかったそうです。その日は第一志望校の受験でしたが、結果は不合格。結局滑り止めの私立校に進学したそうです。作り話のような実話です。

(b) 休み時間の過ごし方「教材の見直しを、トイレも」

休み時間には、必ず次の試験科目の教材の見直しをしておきましょう。試験直前に見直しをしていたところが出題されたという話はよく耳にします。見直しをしたところが出なくても、次の試験のために頭を切り替え、ウォーミングアップする効果があります。それによりケアレスミスを防げる可能性もあります。

その他休み時間にしておくべきことは、主に下記の4点です。

・トイレに行っておく
・水分と糖分の補給(飴やチョコなどのお菓子を持参する)
・深呼吸をしたり、体を動かしたりして、血行をよくしておく
・体を冷やさないように気を付ける

(c) 服装「セーターは着ない」

試験会場は、寒い場合もあれば暖かい場合もあります。いずれの場合にも対応できるよう、着脱しやすい服を重ね着しましょう。当日、非常に寒くても、会場内は暖かい場合があります。セーターなどはやめた方が無難です。

(d) やってはいけないこと「答え合わせ」

試験が終わった後は、解いた問題が出来たかどうか、あるいは解けなかった問題の答えが何だったのかが気になります。しかし、その学校の試験がすべて終わるまで、答え合わせは絶対にやってはいけません。出来ていなければ気分が沈みますし、出来ていても油断につながります。どちらにしてもプラスになることはありません。終わった科目のことは考えないことです。それよりも休み時間の間に気持ちをリセットして、つぎの試験に向けて準備をしましょう。

入試直前の心得とは

「900点満点で890点」と言ったら、女子高生が泣き出して

友だちから試験の内容を聞かれても、それについて話をするのもやめましょう。自分にとってマイナスになるだけでなく、友だちに与えた影響が気になって、集中力がそがれる場合があります。大学受験で、次のようなケースがありました。

センター試験で全国一位の成績を取ったB君のお話です。センター試験の会場には、さまざまな高校の生徒がいます。2日間の試験で、最後の科目が数学だった時のこと。休憩時間に、B君は廊下で友人と話をしていて、「次の試験(数学)が終われば、890点(900点中)だな」と何気なく語ったそうです。

B君の実力なら、数学は満点が取れますので、そのような言葉が口をついて出たのでしょう。実際そうなりました。ところが、近くにいた他校の女子高生がその言葉を聞いていて、泣き出したそうです。B君と比較して、自分ができていないことに愕然としたのかもしれません。一方で、B君も他校の女子高生の予期せぬ反応に、多少なりとも動揺したことでしょう。このように想定外の事態に発展することもあるのです。

【連載を終えて】「学問に王道なし」人生に一度きりの中学受験

連載が始まって約3カ月、志望校の合格ラインに達していない生徒が「逆転合格」を果たすにはどのように勉強すれば良いかについて述べてきました。「学問に王道なし」と言われるように、奇をてらった勉強は何もありません。受験勉強の要諦を一言でまとめると、現状を正しく把握し、どの時期にどのような勉強を行うか、段階を踏んで進めること。ただそれだけです。

入試に定員がある以上、必ずその定員(合格者)の中に入れた人と、そうでない人とに分かれます。たった1点の違いでも合格者と不合格者に分けられるのが入試です。それだけでもシビアなのですが、以前述べたように、中学受験の機会は人生に一度きりしか与えられません。したがって、その結果を後から塗り替えることは出来ません。

まだ小学6年生という年代でその結果を受け止めなければいけないわけですから、中学受験はある意味、非常に過酷な競争だと言えます。

中学受験を経験した時点で「すでに成功」

しかし、人生で貴重な体験であることも間違いありません。私自身を振り返っても、中学受験が、一番必死に勉強した時期だったと思います。大学受験を経て今に至るまでも、その後の勉強や仕事の仕方や取り組み方に影響を及ぼしています。

全国の同年代の小学生の中で、中学受験をする生徒たちはごく一部です。中学受験の勉強をした生徒としなかった生徒とでは、明確に学力の差が認められます。もし、中学受験の勉強をしていなかった子どもさんを想像し、比較してみればお分かりになると思います。したがって、中学受験生の学力は、同年代の小学生の中では上位にあります。その意味で、遊びたい盛りの小学生が、仮に嫌々ながらであっても中学受験の勉強に取り組み、やり遂げたこと自体が、すでに成功と言えます。

ただ、ここまで頑張ったのですから、最後まで第一志望の合格を目指し、努力の集大成を入試にぶつけて欲しい、試験終了のブザーが鳴るその瞬間まで闘いきって欲しいと思います。結果がどちらであっても、大きな成果を掴み取れるはずです。そう強く信じています。

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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