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サバジェンヌが行く!

サバジェンヌが行く! by 池田陽子/2014年9月4日

サバジェンヌが行く! 第9回
注目のご当地グルメ
「若狭おばま 鯖おでん」

「鯖街道」のお膝元、福井県小浜市に新しく誕生した「鯖おでん」を求めて、全さば連(全日本さば連合会)のサバジェンヌ池田が現地へやってきました! 情熱のレポートをご覧あれ。

「鯖街道」のお膝元・小浜の新顔「鯖おでん」

左から『キッチン・ラグー』の木越裕和さん、KISUMO小浜代表の髙野滋光さん、木越祥和さん。木越さんは若狭塗箸専門店『箸匠せいわ』を営む。「鯖おでん」も、小浜名産のお箸で食べればさらに美味しい!

サバ立ちぬ~♪ いまーはー秋~♪
きょうからわたしーはー、お・ば・まの、サバびと~!!
 
こんにちは。いちいち替え唄が、昭和なサバジェンヌ池田です。涼しい風が吹き始めて、なんとなく人肌が恋しくなる季節。そして、サバファンのみなさん、サバ肌が恋しくなりませんか!? そんなときに注目の「ぬくぬくサバグルメ」が、福井県小浜市で今年春にデビューした「若狭おばま 鯖おでん」!

福井県小浜市といえば「鯖街道」のお膝元。古くより水揚げされたサバを小浜から京都へ運ぶ道は鯖街道とよばれ、地元に根付いたサバの郷土食が残っている。なんといっても代表的なのは、サバを1尾まるごと串に刺して焼いた「浜焼き鯖」だ。これをアレンジして、一躍全国的なヒットになったのが、かの「焼き鯖寿司」。近年のサバブームのさきがけ商品である。

が、その後に続く「サバグルメ」は誕生していなかった。そこで満を持して登場したのが「鯖おでん」。

開発にあたったのは、小浜の地域おこしグループ「KISUMO(キスモ)小浜」。小浜に「きたい、すみたい、もどりたい」と思ってもらえる町にしたい、と熱い思いを持つ有志たちが集まって、結成された団体だ。理念は、「熱く! 楽しく! 元気よく! 未来の小浜と子供たちのために活動する」。小浜命、小浜LOVE、小浜大好きなメンバーが、集客力のあるご当地グルメをきっかけとした街おこしをと、開発がスタートした。
「多くの人から愛される特産品を開発しようと熱い議論を重ねました」とKISUMO代表兼情報発信部会リーダーの木越祥和(よしかず)さんは語る。じつに「熱い小浜人」の情熱の賜物が「鯖おでん」らしい。

当初、食材として上がったのは、やはり「サバ」だった。が、KISUMO代表兼特産品開発部会リーダーの髙野滋光さんによると「じつは以前、サバのちらし寿司がご当地グルメとしてデビューしたことがありましたが、いまひとつ定着しなかった」ために、あっという間に却下。

熱い議論の結果、大相撲巡業が小浜で実施されているという所以と、小浜には素晴らしい食材がたくさんあり、それを全部詰め込みたいという理由で「ちゃんこ鍋」、あるいは地元に自生するアブラギリという樹木の葉を使った「アブラギリ寿司」で話が進んでいた。

しかし、さんざん熱い議論を重ねてきたにも関わらず「なんだか、最終的にピンとこなかったんです」と木越さん。みんなで、またまた熱い議論をした結果。

「やっぱり、サバ……?」

小浜人のサバDNAはハンパではなかったらしい。結果、全員一致で「じゃあ、やっぱり、サバで」と決まったら、あとは話が早かった。「ちゃんこ鍋」の流れで、浮上してきたのが「おでん」。あっという間に「じゃあ、『鯖おでん』で」と決定したそうだ。

なぜ、「小浜」でおでんなのか?

小浜はおでんが名物なわけでもないし、無類のおでん好きが集う町でもない。おでんには、いろいろな食材を入れられるという目的はあれども、ようは「勢い」である。うずきだした「小浜サバDNA」は、もはや止められなかったのだと思う。なにせ、おでんのシーズナリティ的に「夏はどうする」ということは、「全員、サッパリ考えていなかった」(木越さん)らしい。

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鯖しょうゆと鯖きんちゃくが決め手の「鯖おでん」

かくして完成したのが、日本初の「鯖おでん」。サバの切り身が、ゴロンと入っているわけではない。だしに「鯖しょうゆ」を使い、おでんダネにサバの身が入った「鯖きんちゃく」が使われているのが特徴だ。
 
おでんのベースとなるだし、そして鯖きんちゃくは、料理研究家の若林三弥子さんの協力を得て、レストラン『Kitchen Boo』のオーナーでもある髙野さんが、開発に取り組んだ。

だしのポイントとなる「鯖しょうゆ」は、福井県立大学が開発した特殊加工技術「速醸法」により生み出されたしょうゆ。サバの旨み成分が凝縮されている。「これを使うと、だしがとても奥深い味わいになるんです」(髙野さん)。

しかも、だしはなんと2種類。昆布ベースの「癒しの白」と、トマトベースの「情熱の赤」と名付けた、和風と洋風のだしを開発したのだ。

鯖きんちゃくも、それぞれのだしに合わせて2種類を開発。「白」のだし用のきんちゃくには、焼き鯖のフレークとネギ入り。「赤」のだし用のきんちゃくには焼き鯖、鶏肉、セロリ、にんじんを使ったつみれが練りこんであるというこだわりようだ。

「小浜では、浜焼き鯖をほぐして、ネギと一緒に炊いて食べる風習があるんですよ。そのまま食べるより、このほうが好きだっていう人もいるくらい。僕もそうなんですけどね(笑)。そこからヒントを得て、『白』のだし用のきんちゃくに詰め込んでみました」と高野さん。きんちゃくの中には、小浜の食文化もしのばせてある。

「そもそも、『きんちゃく』にも、意味があるんです」と木越さん。小浜市田烏(たがらす)地区では、明治時代、全国でも先駆けとして「巾着網漁業」を導入し、サバの大量漁獲に成功していたのだ。「鯖きんちゃくは、『きんちゃく網』をイメージしているんです」。小浜の歴史まで反映された、「鯖おでん」は実に深いのである。

「鯖おでん」は現在、加盟する小浜市内8カ所の飲食店で食べられる。前ページで紹介した、KISUMO小浜オリジナルのだしと鯖きんちゃくを使い、アレンジして提供する店舗、または「若狭おばま 鯖おでん」の定義である「鯖しょうゆ」を使い、「おでんダネに鯖きんちゃくを使う」にのっとって、オリジナルを提供する店舗がある。

サバの内臓から醸造した「鯖しょうゆ」。独自の製法で、クセがなく、まろやかな味わい

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まるで“サバだし温泉”な「癒しの白」

「癒しの白」(600円)。お好みで若狭町産「獅子ユズ」と小浜産コシヒカリを使った米麹、小浜産の唐辛子を使った調味料「柑なんば」をつけて召しあがれ

KISUMO小浜オリジナルのだしと鯖きんちゃくを使った「鯖おでん」を提供するのが『やまと庵』。豊富なメニューで、小浜の老若男女に愛される創業30年の老舗レストランだ。

KISUMO小浜メンバーである、社長の小泉伊久治さんは、生まれは群馬だが育ちは小浜。「小浜は住み心地がよいし、人柄も熱く、温かく、美味しいものもたくさん。ぜひ、鯖おでんが小浜の元気を生む起爆剤になれば」という思いから、「鯖おでん」が完成して早々に店のメニューに加えたが「最初はなかなか注文がなかったですね……」。

ここにきて、例の問題である。販売がスタートしたのは5月。「なぜ、いま、おでん?」感全開だったのだ。

しかし、KISUMO小浜メンバーの猛烈なPRが功を奏し、メディアで取り上げられるたびに鯖おでんのオーダーが増え「これは美味しい!」と評判になった。

そんな「癒しの白」をいただく。おおっ、鯖しょうゆの旨みが、だしに深い奥行きを醸し出している。クセがなくやさしい味わいだけれど、豊かな表情があってうまい! サバをどこまで主張させるかで、メンバー一同、かなり熱く議論したそうだが、ほどよい塩梅。うーん、まるで“サバだし温泉”。このまま舌を温浴させたい……。

鯖きんちゃくは、香ばしい焼きサバとネギが、だしとあわさってもなお、パンチのあるおでんダネとしてしっかり主張。サバ好きなら、コンビニのおでんコーナー進出を切に望むに違いない。もちろん、“サバだし温泉”にひたひたした、大根や厚揚げ、がんもなどの具も、サバオーラをまとって実にいい風味。おかずにもなれば、日本酒のつまみにもバッチリのおでんだ。

ワインをよぶ“ビストロおでん”の「情熱の赤」

「情熱の赤」レディースセット(1000円)。トマトベースのだしに、じゃがいも、しいたけ、たこ、牛すじなどの具。メンズにも、なんとかしてありついていただきたい

そして「情熱の赤」。鯖しょうゆがトマトにバシッとコクを与え、牛すじ、タコなどの具から出たダシを合わさって濃厚な味わいに。なんというか、ビーフシチュー的なコクうまモード。うわー、これはもう“ビストロおでん”ですよ! 付け合わせのパンにのせ、パスタをからめながらいただくと、ワインが欲しくなる「フレンチ化現象」を起こすという、奇跡のおでん! どちらも季節に関係なく食したい味わいだ。

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3日がかりの力作「シェフ本気の鯖おでん」

小浜市街にある『キッチン・ラグー』は、京都のホテルでシェフを務めていた木越裕和(ひろかず)さんが腕をふるい、お酒に合うさまざまな洋食が堪能できるレストラン。こちらで楽しめるのが、同店オリジナルの「シェフ本気の鯖おでん」。

ちなみに木越裕和さんは、KISUMO小浜代表・木越さんの弟である。「鯖おでん、頼んだぞ」と兄の勅命。もちろん「本気」を出さないわけはない。

というわけで、木越ブラザーの「本気」はものすごい。なにせ、作るのに3日がかりである。

初日は昆布とカツオをベースにした白だしで大根を煮て引き揚げ、だしに「大根の旨み」を加える。2日目はだしに鯖しょうゆを入れて整え、具材を入れて煮込む。そしてじっくり寝かして、3日目に完成。ちなみにお店は「おでん屋」ではない。念のため。

「シェフ本気の鯖おでん」(840円)。だしが染みた卵も美味しすぎる。じつは『キッチン・ラグー』の裏メニューという「しめさば」と「さばずし」も絶品らしい……!

そして鯖きんちゃく。見よ! このデーンという、存在感。「僕はとにかく、サバを食べるなら『サバと、ごはん派』。サバは絶対にごはんに合う! なおかつ地元の『サバの醤油干し』こそ、ごはんに最強!」と熱く語る木越さん。小浜では、干物はおもに醤油干しにすることが多く、魚の旨みを醤油でグッと引き立たせているのが特徴だ。木越さんの「サバ×ごはん」魂を詰め込み、きんちゃくの中には、もち米とサバの醤油干しのフレーク入り。「くずして、リゾット風にして食べる」のがポイントだ。

さっそく、3日仕上げの「鯖おでん」をいただく。様々な食材の旨みがさざ波のように押し寄せ、鯖しょうゆのコクが深海へ誘う……わー、ど、どこに連れて行かれるんだー! 美味しさに溺れる「漂流だし」である。大根、卵、厚揚げなど、ひとつひとつにしっかりと味が染みて、なおかつひとつひとつが完成した味わい深さ。エイジングおでんに脱帽。

さらに最後のお楽しみは、鯖きんちゃく。箸で割ると、サバの醤油干しと、もち米がだしに染み込んで……。さらに旨み度がアップしただしと、それを吸い込んでもっちりしたもち米。いきなり「ときめきのサバリゾット状態」! 1皿で2度美味しすぎる、「極上2WAY鯖おでん」!! 何度も言うが、お店は「おでん屋」ではない。念のため。

そのほかにも創意工夫にあふれる鯖おでんをぜひ、小浜で楽しんでほしい。KISUMO小浜では、10月11日(土)に、「鯖おでんコンテスト」を開催、11月22日(土)~24日(月・祝)に姫路で開催される「全国おでんサミット」にも出店を予定している。小浜人の深いサバ愛がつまった鯖おでんで、今年後半戦は身も心も、サバのぬくもりに抱かれてみては。


【お店のデータ】
■やまと庵
住所:福井県小浜市四谷町20-13/TEL:0770-53-3450/営業時間:11時~20時半/休み:不定休

■キッチン・ラグー
住所:福井県小浜市竜前5-13-1/TEL:0770-56-1131/営業時間:11時半~13時半L.O.、18時~22時L.O./休み:水


●池田陽子(いけだ ようこ)/
サバを楽しみ、サバカルチャーを発信し、サバで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動し、イベント「鯖ナイト」を実施する「全さば連」(全日本さば連合会)広報担当「サバジェンヌ」。本業は薬膳アテンダント/食文化ジャーナリスト。本誌では「元気になる若返り薬膳」を連載。著書に『ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『春夏秋冬ゆる薬膳。』(扶桑社)。


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