前回(https://otonano-shumatsu.com/articles/372330)、ザ・入門編としてふたつの庭園を訪ね、じわじわ庭園の面白さに目覚め始めたオレ、「おとなの週末」ライター池田。今回のアプローチ…
画像ギャラリー前回(https://otonano-shumatsu.com/articles/372330)、ザ・入門編としてふたつの庭園を訪ね、じわじわ庭園の面白さに目覚め始めたオレ、「おとなの週末」ライター池田。今回のアプローチは“美術館と庭園”。相性のいいこのふたつの要素を持つ庭園は結構あるし、楽しむ上でも狙い目だよと。しかも、お次の庭園は「国指定名勝」にもなっているというではないか。何やら本格的でワクワク。
【今回の水先案内人】「おにわさん」by カレンフジ(庭園情報メディア)イトウ マサトシさん
2016年より日本全国の庭園を紹介しているウェブメディアの編集者。これまでに足を運んだ庭園は2000カ所以上。
[HP]https://oniwa.garden
『朝倉彫塑館』 @日暮里 数寄屋造の家屋と調和した美しい池と飛び石アトリエと屋上庭園も見どころ
じわじわ庭園の面白さに目覚め始めたオレ。今回のアプローチは“美術館と庭園”。相性のいいこのふたつの要素を持つ庭園は結構あるし、楽しむ上でも狙い目だよと。しかも、お次の庭園は「国指定名勝」にもなっているというではないか。何やら本格的でワクワク。
イ「『いいお庭ってどうやって探せばいいですか?』とよく聞かれるんですが、文化財になっている庭を調べていくのがひとつのおすすめです。庭園の国指定重要文化財である“国指定名勝”は全国に約250カ所あり、東京だけでも10カ所強あります」
池「ほ〜。で、今回行く谷中の『朝倉彫塑館』もそのひとつってわけなんですね」
イ「そう。さらにコンクリート造のアトリエ棟と数寄屋造の住居棟は、国登録有形文化財なんです」
池「明治から昭和年代に活躍した彫刻家、朝倉文夫氏が実際に暮らしたアトリエと住居ですね。ぐるりと回ると館の中央に、大きな池を中心に構成された中庭がある。うう〜、光も風も気持ちいい」
イ「アトリエ棟に対してコの字に住居棟が接していて、中庭は全体が大きな池。その中に飛び石が配され、大きな石もどかっとある。そうした石を眺めてるだけでそこに込められた芸術家の感性を感じます」
池「廊下や各座敷が庭に面していて、さらに2階や3階の座敷からも見られる。360度、いろんな角度から眺めると表情が違う。それがまたいいな」
イ「よく考えられた独特な造りですよね。座敷からの景色の話が出ましたが、日本家屋と庭との調和は見逃せない魅力のひとつでしょう。水面に反射した光が和室に差し込んだりするのもいいし、庭の光と室内の陰影のコントラストもいいですし」
池「朝倉氏がよく書き物をされたりした部屋があったんですが、僕はそこからの眺めがいいな。泉水の水音や風のざわめきも感じられて。氏は水をじっと見つめていると邪念が消えて浄化され、自身を芸術に邁進させると言ったとか。僕はさしずめ明治の文豪になったような気分になる」
イ「なるほど(笑)。ちなみに植えられている樹木は1月の梅から12月の山茶花(さざんか)まで白い花の木で、それは朝倉氏が白を純粋の色とみたからとか。ただ1本、赤い百日紅(さるすべり)も植えられている」
池「ひとつ外す。完璧を避けるってことらしいですね。そういえば庭石もひとつだけ角のない海石だったり。く〜、粋ですな、朝倉先生」
イ「さて、屋上に行ってみましょう」
池「ん?屋上にも何か?」
イ「『屋上庭園』があるんです。朝倉氏は自宅で『朝倉彫塑塾』も開校して園芸を必修科目に設け、当時は菜園でした。今も一部は菜園で、季節の花々やオリーブの大木などがあります」
池「ふえ〜。谷中の霊園やスカイツリーも見えて眺望も素晴らしい。中庭も見下ろせますね。お庭+美術館、いいですねえ。他にも知りたくなってきた」
イ「では、おすすめをもうひとつ。上野の不忍池ほとりにある『横山大観旧宅及び庭園(横山大観記念館)』。ここも大観の感性が反映されしみじみよいです」
池「日本画の大家・横山大観!その旧居と庭園、ここも国指定名勝なんだ。朝倉彫塑館からも近いし、セットで行くことも出来ちゃいますね」
[住所]東京都台東区谷中7-18-10
[電話]03-3821-4549
[営業時間]9時半〜16時半(最終入館は16時)
[休日]月・木(※祝休日の際は翌平日)、年末年始、そのほか臨時休館あり
[交通]JR山手線ほか日暮里駅北改札西口から徒歩5分
「おにわさん」に聞く ゆるりと楽しむ庭園めぐりのコツ
僕は「庭ってなんかいいな」っていう感覚、言語化できなくても、そういう感覚をまず大事にしたいなと思っています。その上で、庭園をより楽しむためのおすすめがふたつ。
ひとつ目は、ボランティアガイドを利用したり、施設の方にお話を聞いたりすること。たとえば手入れの仕方とか見どころを質問してみてください。所有者の方の思いが溢れるように出てきたりして、発見があったり、見方も広がります。
ふたつ目はゆっくり歩く。周囲を見渡しながらあえて倍の時間をかけるくらいのつもりで。そうすると「あの花何だろう?」とか「立派な石だな」とかいろんな要素が目に入ってきます。心も落ち着いてより五感で楽しめます。
また、何度も足を運ぶのもいいですね。季節ごとにそのときにしか見えない景色がありますし。今回文化財や石の話をしていますが、見るポイントを「水」にしても面白いです。
「東京の名湧水57選」で検索すれば湧水を利用したお庭も探せます。たとえば国分寺の『殿ケ谷戸庭園』などがおすすめ。武蔵野台地と関東平野の境目の崖線とそこから湧き出る水をデザインに生かしている。
好きな庭園ができたら庭師に注目するのもやはりよく、有名どころでは「七代目小川治兵衛」とか。
都内では麻布十番に近い『国際文化会館(旧岩崎邸)庭園』など、和のお庭がモダン建築や東京タワーを借景にしているのもとても魅力的です(談)
撮影/西崎進也、取材/池田一郎
※2024年5月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。