亀戸「麺 ふじさき」 美しく澄んだスープ、華やかな醤油の香り、キメの細かなチャーシューの肉質――食べずとも、ただ者でないことがわかる。目指すのは、醤油が放つフローラルの香りを生かしたラーメン。それを最大限に生かすのが、鶏…
画像ギャラリー都内にラーメン店は数知れず。その中から、醤油・塩・味噌・豚骨、それぞれのおいしい店を調査。新旧の三ツ星店を一挙にお届けします。五臓六腑にしみわたる一杯をどうぞご賞味あれ。
梅屋敷「ひなり竜王」
食いしん坊の夢を具現化した一杯だ。丼の中に旨いもん大渋滞。掻きわけ掻きわけ麺を持ち上げれば、風味豊かな平打ちが顔を出す。実はここ、北品川『中華そば和渦TOKYO』など人気店を手掛ける高橋宏幸さんの4軒目となる新店。
「僕の全部を詰め込んだ集大成です」。高橋劇場第4章の巻。舞台は京急線、梅屋敷である。目指す味わいはスープや麺、どれもが突出し過ぎないバランス型だ。それは計算された高い技術があるからこそ実現する一体感。
スープは信玄鶏や岩中豚、乾物類に炒めた野菜をどっさり入れたやさしく奥深い旨みで、3種の小麦粉を配合した自家製太麺はツルッモチッとなめらかな舌触り。「特製」は高橋さんが好きなトッピングを全部入れちゃったそうで、吊るし焼きの鶏などその全てが美味の相乗効果。言ってしまおう、これぞ定番醤油味の究極形。
亀戸「麺 ふじさき」
美しく澄んだスープ、華やかな醤油の香り、キメの細かなチャーシューの肉質――食べずとも、ただ者でないことがわかる。目指すのは、醤油が放つフローラルの香りを生かしたラーメン。それを最大限に生かすのが、鶏と水のスープだ。食材は、すべて厳選したもの。
ただし、決して素材頼みではなく、たとえばスープを炊く際には旨み成分の出る40℃と、コクの出る60℃の温度帯を長く設定したり、タレとは別にたまり醤油を丼の奥に数滴垂らして提供することで後半に味の変化をもたらしたりと、おいしさへの探求心が光る。修業歴3年足らずでこのクオリティ。店主もまた、ただ者ではない。
森下「手打ち 蓮」
麺は、もち小麦を取り入れた流行りの手打ち麺。もちもちちゅるんとした独特の食感と強靭なコシ、強烈なうねりを併せ持つインパクトのある麺で、期待どおり口の中で暴れ回る。それを受け止めるスープもさぞかし力強いことだろうと思いきや、なんとまあやさしい味わいだこと!
水出しした冬どんこのダシで鶏や魚介を炊いていて、穏やかな旨みが広がる。店主の出身地である鹿児島の醤油をタレに使っているから、スープもほんのり甘め。1枚40gもある大ぶりのチャーシュー(しかも2枚!)と腕白な手打ち麺、やさしいスープによる絶妙な掛け合いに引き込まれていく。
…つづく「東京の本当うまい「町中華のラーメン」ベスト6店…なんと一杯《600円》、スープ絶品《浅草・大森・人形町・大井町・千歳烏山・清澄白河》で覆面調査隊が発見」では、あまたひしめく町中華のなかから、おいしいラーメンの店を紹介します。
『おとなの週末』2023年2月号より(本内容は発売当時のものです)