目黒「支那ソバ かづ屋」 提供されたワンタンメンのスープをひと口。ほんのり魚介の香り。そしてコクと重層的な奥行き。鶏ガラと豚ゲンコツ、香味野菜に煮干しや昆布も使うという味わいがじんわり体に染みる。そのスープと絶妙に絡むス…
画像ギャラリー長く愛される味には人を惹きつけてやまない魅力がある。ここでは、約20年以上続く名店を中心にご紹介。新店のルーツともいえる味もあり、深遠なる世界を感じられるはず。
醤油ラーメン編
浅草「来集軒」
日常の幸せってこういうことをいうのかな。いつ訪れても安心の味がそこにある。昭和がふわり漂う店、名だたる著名人にも愛された浅草の老舗『来集軒』である。
初代が「すぐ食べられてお腹を満たすラーメン店が人の役に立つ」と昭和25年に創業。歴史を繋ぐ3代目が落合秀実さんだ。レシピはなく、体で覚えた感覚が頼り。「モヤシそば」は冬の人気で、常連の林家正蔵師匠もお気に入りとか。
手揉みのちぢれ麺は親戚が営む製麺所の特注。豚足、豚骨、鶏ガラに野菜のダシを加えたスープがとろんと馴染む。熱々をふうふうして頬張れば、心までぽっかぽか。明日の活力をもらいに行こう。
目黒「支那ソバ かづ屋」
提供されたワンタンメンのスープをひと口。ほんのり魚介の香り。そしてコクと重層的な奥行き。鶏ガラと豚ゲンコツ、香味野菜に煮干しや昆布も使うという味わいがじんわり体に染みる。そのスープと絶妙に絡むストレートの麺は自家製麺だ。
麺帯の状態でひと晩寝かされた麺は加水率が高く、ぷるしこで旨みもあってのど越しもよし。ともかくバランスがいい。そして創業以来人気のワンタン。とろとろプルルンの皮の中にジューシーな肉餡がたっぷり包まれ、ふっと生姜が効いてるのがいい感じ。ちゅるんと食感を楽しみつつ、箸が進んで最後まで食べ飽きない。30年の人気は伊達じゃない。
塩ラーメン編
仲御徒町「らーめん 天神下 大喜」
目まぐるしく変わる東京のラーメン業界で、1999年の開業から今も第一線に立つのが店主の武川さん。独立前は日本橋の割烹で腕を振るった和の職人だ。醤油やつけ麺、煮干しと数あるメニューの中でも、店の代名詞が「とりそば」。
昨年から濃度を増したというスープを飲めば、鶏の澄んだ滋味が広がり細打ちの自家製麺からあふれる小麦の風味と受け止める。食べ進むうちに、皮目を炙ったチャーシューの香ばしさ、薬味の柚子の香り、さらには瑞々しい白髪ネギやカイワレが丼の中で溶け合って、加速度的に旨さが増幅。スープ、麺、具材が一体となったバランスの妙に感服するしかない。
上野「珍々軒」
ガード下に張り出した店先で、アメ横らしい雑踏を感じながら注文。ほどなく提供されたタンメンには、もやし、キャベツ、ニラ、玉ねぎ、にんじんと豚肉がどさっと乗る。野菜は注文ごとに迅速にラードで炒められ、シャキシャキ感が魅力的。
そして塩味のスープと絡んだところを豪快にワシワシ。スープはベースの鶏の旨みに豚のコクを感じさせながらシンプルに旨い。ケレン味なくも力強さを感じさせる味だ。黄色い中華麺が小麦の香りを感じさせ、スープに絡む。豚バラチャーシューのつけダレをカエシに、ゴマ油も少々。食後に力が漲るような満足感。町中華の枠を超えた傑作だ。
『おとなの週末』2023年2月号より(本内容は発売当時のものです)
…つづく「東京の本当うまい「町中華のラーメン」ベスト6店…なんと一杯《600円》、スープ絶品《浅草・大森・人形町・大井町・千歳烏山・清澄白河》で覆面調査隊が発見」では、あまたひしめく町中華のなかから、おいしいラーメンの店を紹介します。