鉄道ファン必読!廃線「愛国駅→幸福駅」切符の大ブームと、駅長さんとの交流「泣ける話」

愛国交通記念館

現在ではSuicaなどのICカード乗車券が一般化して、切符自体が珍しくなった。しかし、昭和の時代は切符しかなく、希少価値がある切符に、鉄道ファンだけでなく多くの人々の関心を集めた。かつてあった北海道の駅、愛国駅と幸福駅はとても小さな駅。かつての鉄道小僧・山口博氏が、この切符が大ブームを起こした背景、山口氏と駅長との交流を寄稿。当時は走っていたSLの3枚の秘蔵写真も公開する。(この記事は3回にわたる企画の第1回目)

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現在ではSuicaなどのICカード乗車券が一般化して、切符自体が珍しくなった。しかし、昭和の時代は切符しかなく、希少価値がある切符に、鉄道ファンだけでなく多くの人々の関心を集めた。かつてあった北海道の駅、愛国駅と幸福駅はとても小さな駅。かつての鉄道小僧・山口博氏が、この切符が大ブームを起こした背景、山口氏と駅長との交流を寄稿。当時は走っていたSLの3枚の秘蔵写真も公開する。(この記事は3回にわたる連載の第1回)

NHK「幸福への旅」で一躍有名となった北海道の広尾線

旧広尾線は帯広駅から広尾駅までを結ぶ全長75.7kmの路線です。昭和62年2月に、廃線となりました。

無名で赤字の広尾線は、昭和48年、NHKの人気番組「新日本紀行」で「幸福への旅~帯広~」と題した回が放送されてから全国的に有名になりました。放送は同年3月でしたが、夏前には、多くのTVや雑誌などでも取り上げられ、愛国駅(帯広市愛国町)と幸福駅(帯広市幸福町)の名前は日本中に知れ渡り、特に昭和49年から昭和50年の間におきた幸福駅ブームにより、広尾線の「愛国駅から幸福駅」の切符はもの凄い勢いで売れました。

愛国駅

私の古い記録ですが、昭和47年は7枚しか売れていなかった「愛国と幸福」間の切符が、昭和48年は8173枚、昭和49年には740万3295枚も売れました! 

著者が持っている切符は「幸福駅から愛国駅」行

そして、昭和50年は、156万3501枚、昭和51年は、63万4601枚、昭和52年は、33万1404枚となりましたが、当時、私が調べた新聞には、昭和54年9月時点で販売総数は1477万7695枚、愛国駅と幸福駅の切符などを含めた記念品の販売総額は、なんと、約7億9541万6000円とあります。

この大ブームもゆっくり収まり、広尾線にも静けさが戻り、国鉄がJRになった年、昭和62年3月に広尾線が廃線となると同時に、愛国駅の駅としての使命も終わりました。現在、当時をしのぶ施設として愛国交通記念館があります。

北浜駅の駅長さんとの思い出

昭和46年、私は釧網本線(せんもうほんせん)を走る蒸気機関車の写真を撮るために、初めて釧網本線の北浜駅に降りました。中学3年生になる直前の3月下旬です。

初めて北浜駅に降り立った著者・山口

その時、私達、SLファンの為に、とても親切に撮影場所などを、教えてくださったのが北浜駅の駅長さんです。まだ、中学生の私でしたが、ホームに立って、列車を見送る駅長さんの凛とした姿に、鉄道マンの責任感のある生き方を感じました。

昭和46年(1971年) ホームに立つ駅長さん
令和4年(2022年)の北浜駅

当時、北浜駅や隣の浜小清水駅そばにあるユースホステルに宿泊してSLの撮影をしましたが、今回、当時の資料を探していたら、なんと昭和45年頃からのユースホステルのスタンプ帳が見つかりました。

映画『網走番外地』のロケ地

北浜駅(原生花園ユースホステル)や浜小清水駅の他、札幌、塩狩峠、ニセコ、稚内など、他にも懐かしいスタンプがあります。北浜駅は、映画『網走番外地』(1965年)のロケで、故・高倉健さんが「網走駅」として、降り立った場面を撮影した駅です。

約半世紀ぶりに訪れた北浜駅の事務室は喫茶店に

北浜駅の駅長室、事務室があった部屋は、現在、軽食&喫茶「停車場」になっています。写真は、帯広を尋ねる前年の令和4年、約半世紀ぶりに北浜駅を訪れた時に注文した人気のハンバーグライスです。

北浜駅停車場ハンバーグ

駅長さんは、北浜駅の後、いくつかの駅の駅長をされて、広尾線の大正駅の駅長さんになられました。

帯広駅から広尾駅に向かうと、愛国駅、大正駅、幸福駅の順となりますが、当時、大正駅が愛国駅と幸福駅の駅長を兼務していましたので、大正駅駅長は愛国駅駅長でもありました。

私が最初に愛国駅に行く時に乗ったのは、小樽駅21時16分発の寝台車付の夜行列車「からまつ」で札幌駅から乗車しました。

今、この列車はありません。

朝、帯広駅に着いた後、広尾線の列車で大正駅を訪れました。当時、大雪が降り、大正駅には蒸気機関車によるラッセル車がありました。

大正駅を発車するラッセル車です


遠くで見送っているのが駅長さんです。この時、広尾線の蒸気機関車を数か所で撮りました。その中の3枚は、愛国交通記念館の新看板に使用されました。

文・写真/山口博(青山一丁目カイロプラクティック院院長)
昭和31年生まれ。早稲田大学卒業後、社会人を経て昭和62年からカイロプラクティックを始める。学生時代から鉄道が趣味で、今も鉄道の旅を続ける。メディア出演多数。放送大学「負けない体を作る姿勢学」講師  、(一社)日本姿勢教育協会理事、元早稲田大学オープンカレッジ講師。「青山一丁目カイロプラクティック院」(https://aoyama1.jp)は完全予約制(info@aoyama1.jp)

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