東西「ビフカツ」対決(コラム:マッキー牧元×門上武司の往復書簡)

さてもさても、大変な挑戦状が、東から西へ。牛肉文化圏の大阪出身であり、“ビフカツ愛”を掲げる門上氏へ、その後進都市である東京出身の牧元氏から、敢えてのお題提案。片やイギリス式、もう一方はイタリア式のその味を、とくとご覧あれ。

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今回のお題【ビフカツ】

ビフテキ対決 東/カルネヤ サノマンズ vs. 西/洋食レストラン Kiitos

【東】マッキー牧元 カルネヤ サノマンズの「さの萬 熟成牛のパレルモ風カツレツ」

 門上様、今回は挑戦的なテーマを選びました。
 なにしろビフカツの本場関西に、不毛の土地から挑もうというのですから……。
 不毛と書きましたが、新橋「おかだ」や人形町「そよいち」など、安くておいしいビフカツの店も、少なからずあります。ただ、「へれかつ」がない。一部高級店をのぞけば、まったく出会えない。これがビフカツ後進都市の現実でしょうか。
 そのため今回は店選びに悩みました。選んだ店は、ステーキが中心の店ですが、熟成させたホルスタインを、カツに仕上げてくれます。ディジョンマスタードとパルミジャーノでパン粉を接着して、衣にオリーブ油をかけ、フライパンでソテーしたビフカツです。
 シチリアでは、牛肉に直接パン粉をまぶし、ローストするらしいのですが、そこからヒントを得たと、シェフの高山いさ己さんは言っていました。
 香ばしい衣に歯が入ると、猛々しい肉のエキスが溢れ出て、肉を食らっているぞ! と叫びたくなる。さらにチーズと肉の熟成香の出会いがエッチで、ご飯より断然、赤ワインが恋しくなります。だから昼より夜が似合う。もちろん昼も、食べたいけれど。
 門上さんもぜひ、東京へいらした際は、美女を誘って出かけてみてください。

噛んだ瞬間から官能が駆け巡る、猛々しい妄想にかられる“夜”のカツレツ

▲さの萬 熟成牛のパレルモ風カツレツ(200g) 5500円
「肉に歯がぐにゃりと入る瞬間から、あぁ、もうエロい(笑)。肉の熟成香とチーズの発酵臭がこれまた罪で、ランチで頂いていたとしても、脳内は完全に夜モードと化す。絶対に赤ワイン所望」 (牧) 。ランチでの提供もあり。ライスorパン、サラダ、ドリンク付き4800円

カルネヤ サノマンズ
東京都港区西麻布3-17-25 [TEL]03-6447-4829 [営]11時半~15時(14時LO)、18時~23時(21時半LO) ※土はディナー17時~22時半(21時LO)、ランチは同じ 日、月のランチ [席]テーブル32席、カウンター4席、個室4席 カード可/予約可/夜のみサービス料10%(個室利用は15%) [交]地下鉄日比谷線広尾駅3番出口から徒歩7分

【西】門上武司 洋食レストラン Kiitosの「英国風ビーフカツレツ」

 牧元さん、今回のテーマは僕にとってもなかなか手ごわいものでした。
 なにせ牛肉文化の関西、おまけに人生最期の食事はビフカツサンドと考えているので、候補が多すぎました。そして「ヘレカツ」が東京には少ないというのは驚き。
 大阪の谷町4丁目にある「キートス」という洋食店のメニューには「英国風ビーフカツレツ」と書かれています。日本の洋食文化は英国の影響を多分に受けています。カツレツもその一つで、牛肉に塩・胡椒をして小麦粉と溶き卵にパンをつけ、多めの油で片面がきつね色になるまで揚げ焼き。これを裏返し、チーズとパセリを振ってオーブンに入れ火入れとなります。「これが英国式のスタイルです」と店主の川岸健二さんは話し、「大阪の古い洋食屋『いそむら』の仕事を残してゆきたいと思っています」と付け加えてくれました。
 ビフカツは噛む、クチャとなったところでソースとの絡み具合を確認しながら喉元を通り過ぎゆく。ここで白ご飯が欲しくなるのが日本の洋食のなせる技だと思います。ここは鶏の唐揚げもおすすめです。
 牧元さん、洋食三昧いかがですか?

洋食文化の礎となる“英国式”を今に残す、伝統と革新の味わい。これぞ関西きってのビフカツの雄

▲英国風ビーフカツレツ 2000円
「ドミグラスソースは開店以来2年余追い足しですが、仕込むのは3ヶ月ごと。この濃厚な味わいと牛肉の出会いは至上の喜びといっていいほど。カリッとした衣、チーズのコクなどと牛のエキスが一体となる感激も、ここならでは」(門)

洋食レストラン Kiitos
大阪市中央区徳井町1-1-7 [TEL]06-6942-2377 [営]11時半〜14時、18時〜22時半(22時LO) 日、祝日の月 [席]テーブル30席、カウンター9席 カード可/予約可/サなし [交]大阪市営地下鉄谷町四町目駅4番出口から徒歩1分 ※基本、ビーフカツは夜メニューだが、混雑時間帯でなければ昼もオーダー可。付け合わせ内容が昼と夜で変わる。

プロフィール

【東】
マッキー牧元/タベアルキストを自称して早30年、ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく、各誌への寄稿に励むコラムニスト。東の食雑誌『味の手帖』編集主幹でもある。

【西】
門上武司/小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。

2015年11月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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