岐阜県は、国的な知名度を誇る飛騨牛をはじめ、ブランド豚の美濃けんとん、奥美濃古地鶏など、食材の宝庫。今回は番外編として、岐阜で私が見つけた美味しい店『手打ちうどん 丼物 角浅(かくあさ)』を紹介しよう。
画像ギャラリー岐阜・笠松町にあるうどんの名店『角浅』がイタリアンとのコラボに挑戦!
全国的な知名度を誇る飛騨牛をはじめ、ブランド豚の美濃けんとん、奥美濃古地鶏など岐阜県は食材の宝庫。
今回は番外編として、岐阜で私が見つけた美味しい店を紹介しよう。
愛知県との境、岐阜県南部にある笠松町。
地元で知らない人はいないほど有名なうどん店がある。
それが創業68年の『手打ちうどん 丼物 角浅(かくあさ)』だ。
店構えこそ、どの町にもあるうどん店のように見えるが、その人気は凄まじく、昼11時の開店と同時に満席になるほど。
常連客も多く、祖父母と両親、子ども、孫の四世代にわたって通い続ける人もいる。
多くの客を唸らせているのが、4代目の店主、金森隆志さんだ。
人一倍探究心が強く、つゆや麺に使う材料を一から見直し、地元で古くから親しまれている味をブラッシュアップさせている。
「だしのベースとなるのは、東海地方のうどんには欠かせないムロアジです。
味に奥行きが出るように、荒削りしたものと燻煙したものの2種類を使っています。
華やかで力強い味わいをお楽しみください」(金森さん)
金森さんがもっともこだわるのは、手打ちの麺。
小麦粉は愛知県産の「きぬあかり」と三重県産の「あやひかり」をブレンドして打ち上げる。
一昼夜寝かせることで熟成させた麺は、やわらかいのど越しともっちりとした食感が特徴だ。
こちらは、白醤油のかえしを使った上品な味わいのつゆでネギと油揚げ、椎茸を軽く煮込んだ「しのだうどん」(600円)。
ムロアジのダシに椎茸の旨みと香りが加わったつゆは、絶品そのもの。
しのだうどんは、東海地方にしかないメニュー。
私もよく食べるのだが、ここまでコクのあるしのだうどんは初めて食べた。
さらに、箸が止まらないほど旨かったのは、これから暖かくなるにつれて食べたくなる「ころうどん」(550円)。
冷たいつゆで味わうので、金森さん自慢の麺ののどごしと弾力のあるモチモチとした食感を思いきり堪能することができた。また、やや甘めのつゆが麺そのものの美味しさを見事なまでに引き立てている。
とにかく、麺とつゆの一体感がハンパないのだ。
これは前出のしのだうどんも同様だ。
金森さんは、うどん以外にきぬあかりやあやひかりで生地を作って、ロールケーキやクッキー、タルト、シュークリームも作るというからスゴイ。
なかでも、手打ちの生パスタは趣味のレベルを超えている。
今年2月、『角浅』と岐阜市柳津町にある人気のパスタ専門店『abbondare(アッボンダーレ)』のコラボイベントが開催された。
金森さんが打った生パスタに『abbondare』のオーナー、丹度忍さんがそれに合うソースを作るというものだ。
当日は、肉料理や魚料理も付くコース(4400円)も用意するというので行ってきた。
まずは前菜。
写真右から、「大根のポタージュ」、「ゴルゴンゾーラのアランチーニ(ライスコロッケ)」、「カリフラワーのブランマンジェ」、「パテ ド カンパーニュ」。
どれもかなり手が込んでいて、否が応にも次の料理への期待感が膨らむ。
魚料理は、「真鯛のポワレ 春野菜添え 新玉ねぎのソース」。
真鯛の火の入れ方や味の加減は完璧。
春野菜ならではの濃厚な味わいが春の訪れを実感させる。
キリッと冷えた白ワインかスパークリングワインと合わせたいひと皿だ。
続いて、肉料理は「アンガス牛のグリル ポルト酒のソース」。
目の前に運ばれたとき、そのボリュームに驚いた。
メインであるパスタが食べられるかどうか不安だったが、ソースにやや酸味があり、肉もやわらかい。
不安をよそにペロリと平らげてしまった。
いよいよメインのパスタ。
こちらは私が注文した「豚バラとキノコの和風バターしょうゆ味」。
味のベースは、『角浅』で使用しているムロアジのだし。
バターを用いることで和風パスタではあるものの、かなり和のテイストは抑えられている。
これぞまさしく角浅流手打ちパスタの真骨頂だ。
パスタはきしめんのような平打ちのフィットチーネ。
噛んだときにはじき返すような、もっちりとした弾力が心地良い。
そして、噛むごとにパスタに染み込んだムロアジのダシと豚バラ、キノコの旨みが広がる。
『角浅』のうどんの進化形を目の当たりにしたような気分になった。
こちらは、同行者が注文した「海老とブロッコリーのトマトクリーム」。
この、トマトクリームのソースは『abbondare』の大人気メニュー。
ほのかな甘さの後に、海老の味と香りがふわっと広がる。
クリームソースと相性抜群のフィットチーネだからこそ、この味わいが完成したのだろう。
まさに、『角浅』と『abbondare』のコラボメニューである。
最後にデザート。
「クレームブリュレ」と「ロールケーキ」の2種盛り。
実はこのロールケーキも、金森さんがうどんに使用する粉で焼き上げたものだ。
しかも、そこらの洋菓子店よりもレベルが高い。
最後まで“金森ワールド”を楽しむことができた。
しかし、残念ながら、このイベントは1年に1回。
次回も必ず行くと心に決めた。
手打ちうどん 丼物 角浅
[住所]岐阜県羽島郡笠松町田代820-1
[TEL]058-387-2736
[営業時間]11時~21時
[定休日]水、第3火曜
abbondare
[住所]岐阜県岐阜市柳津町蓮池5-8 1F
[TEL]058-387-8868
[営業時間]11時~15時(14時半L.O.)、17時半~21時(20時45分L.O.)
[定休日]月曜 ※火曜はランチタイムのみ営業
永谷正樹(ながや・まさき)
1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。
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