脂肪を落とす「有酸素運動」とは? ダイエットでは、短距離走や筋力トレーニングなどの激しい「無酸素運動」を短時間行うよりも、ウォーキング、サイクリング、水泳などのそれほど激しくない「有酸素運動」を長時間行う方が良いと言われ…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。連載「『食』のクイズ」では、三択形式のコラムで読者の知的好奇心に応えます。今回は、3月14日に迫ったホワイトデーを前に、カロリーやダイエットについて考えます。
【問題】
もうすぐホワイトデーですね。
プレゼントの定番はクッキーなどの甘いお菓子ですが、女性が気になるのはカロリー。でも、食べるときは美味しく食べて、その分、運動でカロリーを消費しましょう!
最近はマカロンが人気だそうです。カロリーが気になるところですが、バターなどをあまり使わない分、クッキーなどよりカロリーは低めです(ただし材料やその分量にもよります)。
体重53.4kg(26~29歳の平均体重)(参照[1])の女性が、マカロン1箱分(5個入り、335kcal)を食べた時、それと同量のエネルギーを消費するには、次のどの活動をすれば良いでしょうか?
(1)1時間のサイクリング
(2)3時間のウォーキング
(3)6時間の睡眠
答えは次のページ!
【答え】
(3)約6時間の睡眠
次のページで解説しますが、運動で消費されるエネルギーは自分で計算することができます。6時間の睡眠で消費されるエネルギーは336kcalで、ほぼマカロン1箱分となります。
(1)の1時間のサイクリングで消費されるエネルギーは224kcalで、これはマカロン約3個分です。1箱分のエネルギーを消費するなら、約90分のサイクリングが必要です。なお、自転車をこぐ速さによって消費エネルギーも変わってきますが、ここでは通勤時の速さ程度を想定しています。
(2)の3時間のウォーキングで消費されるエネルギーは589kcalで、マカロン約9個分。1箱分なら約100分のウォーキングで摂取したカロリーを消費できます。ウォーキングも歩く速さによって消費エネルギーは変わりますが、ここでは散歩程度を想定しています。なお、マカロンのカロリーは以下の条件で計算し、1個分のカロリーを67kcalとしています。各材料の100g当たりエネルギーは、「日本食品標準成分表 2020年版(八訂)」のデータに基づいています。(参照[2])
マカロン1個のエネルギー
材料 100g当たりエネルギー(kcal/100g) 使用料(g) エネルギー(kcal)
小麦粉 345 3.3 11
粉糖 393 5 20
グラニュー糖 393 2.5 10
卵白 44 3 1
卵黄 336 0.7 2
無塩バター 720 3 22
抹茶 237 0.2 0
水 0 0.6 0
合計 18.3 67
脂肪を落とす「有酸素運動」とは?
ダイエットでは、短距離走や筋力トレーニングなどの激しい「無酸素運動」を短時間行うよりも、ウォーキング、サイクリング、水泳などのそれほど激しくない「有酸素運動」を長時間行う方が良いと言われます。感覚的には、脂肪を落とすには激しい運動の方が良いような気がしますが、なぜそれほど激しくない運動の方が良いのでしょうか?
そもそも「有酸素運動」、「無酸素運動」とは何でしょうか?
また、具体的にはどのような運動をどれだけ行えば良いのでしょうか?
今回はそのような疑問に焦点を当てます。
脂肪を落とすなら無酸素運動より有酸素運動
食事で摂取したエネルギーは、グリコーゲン(糖質)として肝臓などに蓄えられますが、余った分は中性脂肪として貯蔵されます。したがって摂取した分だけ運動などでエネルギーを消費すれば、脂肪が増えるのを防ぐことができます。有酸素運動でも無酸素運動でもエネルギーを消費するので、「太らない」ためにはどちらも効果はあると言えるでしょう。しかし、一度ついてしまった脂肪を落とすのは、無酸素運動ではなく有酸素運動なのです。
有酸素運動では、酸素を使って中性脂肪を分解し、エネルギーを取り出します。ところが運動の強さが増していくと、酸素の供給が追い付かなくなり、酸素を使わずに糖質からエネルギーを取り出す解糖系という代謝が中心となります。(参照[3])
これが無酸素運動で、脂肪はあまり分解されないのです。なお、「無酸素」とは呼吸をしていないということではなく、細胞レベルでエネルギーを取り出すのに酸素を使っていないという意味です。
筋力をつけるなら無酸素運動
太りにくいスリムな体を作るなら、脂肪を落とすだけでなく、筋肉をつけることも大事です。筋力を鍛えるなら、有酸素運動よりも無酸素運動の方が効果的です。無酸素運動は糖を消費し、筋力と基礎代謝を向上させます。(参照[4])
これについてはまた別の機会に取り上げたいと思います。
必要な運動を求めてみましょう
運動によってどれだけのエネルギーを消費するかは、次の式で与えられます。(参照[5])
エネルギー消費量(kcal)=1.05×METs×時間(時)×体重(kg) (式1)
METsとは運動強度の単位で、安静時と比較して何倍のエネルギーを消費するかを示したものです。(参照[6])
国立健康・栄養研究所がMETsの一覧表を公表しています。(参照[7])
この表からMETsの値を求め、体重と運動時間を入れると、運動で消費されるカロリーを自分で計算することができます。
(計算例)
カルボナーラ・スパゲッティ(830kcal)(参照[8])を食べたときに、どれだけの運動をすれば摂取したカロリーを消費できるか計算してみましょう。
まず、どのような運動をするかを決め、METsを求めます(下記の表を参照)。たとえば立位作業では、METs=3.0となります。
(式1)に、分かっている値を入れます。
エネルギー消費量=830(kcal) (カルボナーラのカロリー)
METs=3.0 (立位作業のMETs)
体重=60(kg) (ご自身の体重)
これから、必要な運動時間を計算することができます。
時間=830÷(1.05×3.0×60)=4.4(時間)=約4時間半
METs一例
活動 METs
睡眠 1.0
入浴 1.5
掃除:掃き掃除、ゆっくり、楽な労力 2.3
皿洗い(全般、楽な労力) 2.5
調理や食事の準備 3.5
座位作業(パソコン作業、デスクワーク等) 1.5
立位作業(商店の販売員、書類整理等) 3.0
散歩 3.5
階段を上る 4.0
自転車に乗る(レジャー、通勤、娯楽) 4.0
出題:三井能力開発研究所 代表取締役 圓岡太治
(参考)
[1]「令和元年 国民健康・栄養調査報告」p116(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000710991.pdf
[2]「日本食品標準成分表 2020年版(八訂)」(文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会)
https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kagsei-mext_01110_011.pdf
[3] 無酸素性代謝閾値 / AT(厚生労働省、e-ヘルスネット)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-056.html
[4]トレーニング:無酸素運動とは(公益財団法人 長寿科学振興財団)
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/musanso-undou.html
[5]「健康づくりのための運動指針2006」p6(運動所要量・運動指針の策定検討会)
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/programs/pdf/guidelines2006.pdf
[6] メッツ / METs(厚生労働省、e-ヘルスネット)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-004.html
[7]「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/programs/2011mets.pdf
[8]摂取カロリー早見表(株式会社タニタ)
https://www.tanita.co.jp/content/calorism/table/index2.html