こどもの週末

「千と千尋」の世界観を再現!スタジオジブリの魅力を解き明かす「鈴木敏夫とジブリ展」

「鈴木敏夫とジブリ展」の開会セレモニー

開会セレモニーにはカオナシも登場! 開催前日の6月30日に行われた開会セレモニーには、鈴木プロデューサーが登壇。「子供の頃から自分が大事だと思ったものを取っておくクセがあって、幼稚園の時の帽子とか、小学校4年の時に絵を描…

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スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは、高畑勲監督や宮崎駿監督とともに映画史に名を刻む数々のアニメーション作品を世に送りだしてきました。7月1日から東京・天王洲の寺田倉庫で始まった「鈴木敏夫とジブリ展」は、日本が誇る名プロデューサーの背景に迫る展覧会。スタジオジブリの要ともいうべき、鈴木プロデューサーは、どんな少年期を過ごし、出版社の編集者を経て、映画作りに携わるようになったのか。世界に名をとどろかせるスタジオジブリの作品づくりに、どう向き合ってきたのか。本人の半生を振り返るとともに、ジブリ作品の魅力を解き明かす貴重な機会です。

蔵書8800冊を一挙展示

「鈴木敏夫とジブリ展」は、2019年に東京・神田明神で開催され、その後、長崎や京都を巡回。今回は、3年前の東京展にはなかった蔵書の空間に加え、さらに展示品を大幅に増やして、ファンの期待に応えます。

展示されているのは、少年期や青春時代の写真、影響を受けた漫画や書籍、映画関連の印刷物、雑誌「アニメージュ」の編集部時代やスタジオジブリに関する資料など多岐にわたります。1948年に名古屋で生まれ、いわゆる「団塊の世代」の鈴木プロデューサーが、大学入学で上京し、出版社の編集者時代を経て、スタジオジブリのプロデューサーとして歩んできたこれまでの足跡を俯瞰する内容です。

やはり、圧巻は、鈴木プロデューサーが子供の頃から青春時代を経て現在に至るまで読んできた蔵書の公開です。その数は約8800冊という膨大なもの。手塚治虫などの漫画をはじめ歴史本やノンフィクション、文学全集などいろんなジャンルの書籍が本棚に収まっています。

8800冊を一カ所に展示した圧巻のコーナー

蔵書を展示した広い空間は、鈴木プロデューサーの隠れ家「れんが屋」をモチーフにして作られました、中央辺りには、『千と千尋の神隠し』に出てきた「カオナシ」が、椅子に座って本を開くオブジェも。並んだ書籍のタイトルを眺めているだけでも、想像が膨らみます。アニメーションのプロデュース、アニメ雑誌の編集など手掛けてきた数々の仕事につながる鈴木プロデューサーの思考の過程に触れることができるでしょう。

今回の東京展限定「油屋別館」が登場 『千と千尋の神隠し』の世界を体感!

アニメ雑誌の編集部時代の仕事の様子、スタジオジブリの設立から現在に至る変遷を紹介した展示も大きな見所です。『風の谷のナウシカ』の制作当時の写真が掲示された回廊や、『千と千尋の神隠し』などの作品ポスター、メモなどの貴重な資料も豊富です。『となりのトトロ』のトトロが展示されたコーナーでは、撮影も可能です。

『風の谷のナウシカ』の制作当時の写真が掲示された回廊
トトロと撮影できる

ほかにも、鈴木プロデューサーが少年時代を過ごした自宅の「四畳半の部屋」の再現、大学生時代に観た映画作品を記録したノートや手帳などプライベートに関する展示も充実しています。会場を進めば、本人の人生の歩みを感じ取ることができます。

再現された自宅の「四畳半の部屋」

蔵書の空間を抜けると、『千と千尋の神隠し』の「油屋別館(あぶらやべっかん)」を再現した巨大な空間にたどり着きます。本展の最終コーナーです。赤い提灯が吊るされた光景は、まさに『千と千尋の神隠し』の世界に来場者を誘います。

八百万の神様とともに楽しむ冷やし足湯「せんとうちひろ」(利用は、特典付きチケットの事前購入が必要)は最高の涼感を与えてくれる粋な催し。酷暑のストレスがやわらぎます。

ほかにも、サイネージの前に立つと、画面上にカオナシになった自身の姿が現れる「カオナシなりきりAR」も。今回の展示全てを堪能するには、数時間は必要となる分量です。

開会セレモニーにはカオナシも登場!

開催前日の6月30日に行われた開会セレモニーには、鈴木プロデューサーが登壇。「子供の頃から自分が大事だと思ったものを取っておくクセがあって、幼稚園の時の帽子とか、小学校4年の時に絵を描いてデパートに貼りだされたものとか。捨てられない性格だったんです。(大学入学で暮らし始めた)東京にも持ってきたんです。そこからまたいろんなものを取って置く」と振り返り、「他人から見たらどうでもいいものだけど、自分から見て大事なものをしまっておいたんです。それをこんな形で披露するとは思ってもみませんでした。改めて思うのは歳を取るのもいいことだなと。今年の夏で74歳を迎えるんですけど、歳を取ったことで、こんな展示会をやってもらえるので、よかったかなと思っています」と続けて、多くの来場を呼びかけました。

開会セレモニーには、カオナシも登場。鈴木プロデューサーとのフォトセッションにのぞみ、場を盛り上げました。

フォトセッションでカオナシと

本展の最大の見所は、やはり、所蔵する約8800冊もの書籍の展示です。この後行われた報道陣との質疑で鈴木プロデューサーは「本を読むことが大好きなんです。今回の展示で唯一、提案したのは、自分の持っている本を一カ所に全部展示してほしいということ。いろんな所にバラバラに置いてあったものを一堂に会するとどうなるんだろうという期待があった。雑誌まで含めると8800冊なんですけど、一つのスペースに全部収めるのが実現したときは単純に嬉しかった」と経緯に触れ、本展開催の喜びを語りました。

読書のスタイルは、「乱読」型。ただ、子供のころから、一貫して読み継いできたのは、手塚治虫の漫画だったそうです。「僕は昭和23年生まれ。(漫画の『鉄腕アトム』は昭和20年代に連載が始まっており)時代の、ぼくの隣には手塚さんがいたから、描き続けた作品を読み続けたんだと思います」。そして、手塚作品とは別に、何度も繰り返し読んできたのは、バロン吉元の漫画『柔侠伝』を挙げました。

手塚治虫の作品

最近の読書量について質問すると、「読書量は歳とともに減ってきた。前は、一晩で1冊を読んだりしていましたけど、今は体力の関係で難しい。1冊を一週間かけて読むということが増えています」と明かしてくれました。

今も、読書は、鈴木プロデューサーの“創造力”を支える「大事なもの」のようです。

文・撮影/堀晃和

鈴木敏夫

すずき・としお。1948年、名古屋市生まれ。慶應大学文学部卒業後、徳間書店に入社。雑誌「アニメージュ」創刊に携わり、副編集長や編集長を歴任。雑誌編集のかたわらで、高畑勲、宮崎駿両監督の作品の製作にも関わってきました。85年に、スタジオジブリの設立に参加。89年からはスタジオジブリ専従となり、以降はほぼすべての劇場作品をプロデュースしています。現在は、株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。

「鈴木敏夫とジブリ展」概要

会期:2022年7月1日(金)~9月7日(水)
会場:東京・天王洲の寺田倉庫B&C HALLとE HALL
交通:りんかい線天王洲アイル駅のB出口から徒歩4 分、東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅の中央口から徒歩5分
開場時間:10時~20時(※最終入場は19時半まで)※定時 (1時間)ごとの日時指定予約制、各回開始時間1時間後まで入場可、最終回のみ閉館の30分前が最終入場
チケット:一般1800円(税込)、中・高校生1500(税込)、小学生1100円
特典付きチケット:一般2600円、中・高校生2300円、小学生1900円
※チケットはローチケ、日テレゼロチケで購入可
公式サイト:https://suzukitoshio ghibli.com/tokyo/
問合せ先:DISK GARAGE 050・5533・0888(平日12時~15時)

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