失敗を否定しなければ、子どもはチャレンジを続けられる もしサラさんの父親が、学校での些細な失敗を否定ばかりしていたら、彼女は起業をしてみようなんて気持ちさえわかなかったことでしょう。失敗を「してもいい」、むしろ「たくさん…
画像ギャラリーかつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、入学試験シーズンを前に集中連載でお届けします。
失敗やしくじりは誰しもにあること
すべてにおいて、完璧になんでもできる人間なんて、存在しません。テストで及第点がとれなかったり、スポーツの試合で負けてしまったり……誰しもが失敗やしくじり、挫折を経験していくものです。大切なのは、その後それらをどう受け止めるか、でしょう。
何かを失敗することは、決して悪いことではありません。失敗することと、「失敗者」になることは、まるで違います。何かを成し遂げた人は、たいてい、「失敗は成功のもと」という名言を残しています。
成功者の共通点を見つけ出し、『思考は現実化する』というベストセラー本を書いたアメリカの著作家、ナポレオン・ヒル氏は、「失敗や逆境の中には、すべてそれ相応かそれ以上の大きな利益の種子が含まれている」と、説いています。つまり、失敗は、成功のための「種」なのです。
失敗は、むずかしい何かに挑戦したということ
27歳で「Spanx(スパンクス)」という補正下着の会社を起ち上げ、世界最年少でビリオネア(億万長者)になったアメリカの起業家に、サラ・ブレイクリーさんという人がいます。彼女は、成功の秘訣を問われた際、「幼少期の父親との会話が、最高のアドバイスになった」と話したということです。
彼女の父親は、学校で成績表やテストのことを聞くのではなく、いつも、「今日はどんな失敗をした?」という質問をしていたそうです。失敗したというのは、つまり、今の自分にはむずかしい何かにチャレンジした、ということです。そして、失敗したことから、何を学んだか、どんな成長をしたかを話したのだそう。
サラさんは、会社を起こす前に、ロースクールの試験に二度失敗しています。ディズニーワールドで働くも、やりたい役につけず、販売の仕事をしても、拒絶ばかりされたといいます。しかし、そんなことで、彼女の「何かに挑戦していく」という姿勢は変わったりしませんでした。彼女の失敗に対する考え方に、父親の言葉が大きな影響を与えていたからです。
その後、彼女は起業に挑戦し、見事、大成功を収めました。「失敗を恐れて自分の考えを追求できない人がたくさんいます。失敗は次に起こる素晴らしいことにつながるのだと、父に教えられました」
失敗を否定しなければ、子どもはチャレンジを続けられる
もしサラさんの父親が、学校での些細な失敗を否定ばかりしていたら、彼女は起業をしてみようなんて気持ちさえわかなかったことでしょう。失敗を「してもいい」、むしろ「たくさんしたほうが成長できる」と肯定してあげることで、子どもはどんどんむずかしいことにチャレンジするように成長していきます。
幼少期に、親から失敗を責められるのではなく、たくさん失敗していいと肯定された子は、能力を伸ばすために、学び続けることができるのです。
失敗を責めることで、成功のための大切な種を踏み潰してしまうか。たくさんの水をかけて、大きな花を咲かせるようにするか。子どもの将来の能力を伸ばすためのカギは、親の「失敗」に対する価値観にかかっているのです。
マンガと文/杉山奈津子(すぎやまなつこ)
杉山塾代表。1982年、静岡県静岡市に生まれる。静岡雙葉高校3年時の実力模試は「偏差値29」だったが、独学勉強法で1浪後、東京大学理科二類に合格。2006年、東京大学薬学部を卒業後は、作家、イラストレーター、心理カウンセラーとして活動。2020年、静岡市内に「杉山塾」を開き、小学生~高校生の学習塾代表として活動中。近著に『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー/講談社)がある。