桜模様の入った透彫など流派によって趣が異なる刀装金具 鐔(つば)をはじめとした「刀装金具」の名品も並びます。江戸時代に熊本で発展したものを「肥後金工」と呼び、主な流派は林派、平田派、西垣派、志水派があります。永青文庫に所…
画像ギャラリー肥後熊本の藩主だった細川家由来の美術品や歴史資料を管理し、一般公開も行っている「永青文庫」(東京・目白台)。2023年1月14日から始まった『令和4年度早春展 揃い踏み 細川の名刀たちー永青文庫の国宝登場ー』(〜5月7日)では、国宝刀剣4口と、重要文化財、重要美術品の刀剣・刀装金具の全てが公開されます。永青文庫設立者の細川護立(ほそかわ・もりたつ)(1883〜1970年)が「母親に小遣いを前借りして手に入れた」という刀収集への情熱が窺える逸話や、肥後金工の鐔(つば)など精巧な刀装具の魅力を堪能できる展覧会です。刀剣をモチーフにしたキャラクターが登場するオンラインゲーム『刀剣乱舞』で人気の高い、「歌仙兼定(かせんかねさだ)」と「古今伝授の太刀」も展示されます。
所蔵される国宝8件のうち刀剣全4口が展示
細川家第16代当主の細川護立は美術に造詣が深く、稀代の刀剣収集家としても知られています。1948年には日本美術刀剣保存協会を設立し、初代会長に就任しました。護立が刀に興味を持ち始めたのは、学習院中等学科在学中に助膜炎(ろくまくえん)にかかり、療養のため休学をしたことがきっかけです。当時、細川家に出入りをしていた刀の装飾を製作、手入れをする肥後金工師の末裔・西垣四郎作(にしがき・しろさく)(1791〜1850年)や刀剣愛好家らと研究会を開き、知見を深めていきます。
価値のある品を見極められるようになった護立が、母親に小遣いを前借りしてまで手に入れたかった「生駒光忠(いこまみつただ)」は、後に国宝に認定されます(国宝「刀 金象嵌銘 光忠 光徳(花押) 生駒讃岐守所持(生駒光忠)」)。
国宝3口も、護立の収集動機が書かれた『刀剣回顧談』(1938年)を参照にした逸話が添えられ、護立の刀剣への粘り強い情熱や人柄に触れることができます。
桜模様の入った透彫など流派によって趣が異なる刀装金具
鐔(つば)をはじめとした「刀装金具」の名品も並びます。江戸時代に熊本で発展したものを「肥後金工」と呼び、主な流派は林派、平田派、西垣派、志水派があります。永青文庫に所蔵される肥後金工の多くは護立の収集品で、叔父の長岡護美(ながおか・もりよし)(1842〜1906年)や、西垣四郎作らから譲り受けたものです。
室町時代に後藤祐乗(ごとう・ゆうじょう)から始まった金工師の家系・後藤家は、足利将軍家や織田信長、豊臣秀吉といった為政者(いせいしゃ)に幕末まで仕えました。銅に金や少量の銀を混ぜた「赤銅(しゃくどう)」の黒色の地板に、金で立体的な模様を描いた作風は「家彫(いえぼり)」と呼ばれ、格調高い美しさが珍重されました。
庶民の金工により自由な発想で発展していった、「町彫(まちぼり)」の逸品も鑑賞できます。
2023年3月31日に映画も公開!『刀剣乱舞ONLINE』で人気の「古今伝授の太刀」「歌仙兼定」
日本刀を擬人化したキャラクター”刀剣男子”が登場するオンラインゲーム『刀剣乱舞ONLINE』(2015年1月14日サービス開始)は、パソコンブラウザ版の登録者数は 200万人、スマホアプリ版では累計800万ダウンロードを超えています(2022年1月14日時点)。過去にはゲームを原案としたアニメ放送や舞台公演があり、2023年3月31日には4年ぶりの映画が公開されます。細川家にゆかりのある「古今伝授の太刀」と「歌仙兼定」は、このゲームの人気キャラクターのモチーフになっています。「一度、本物の刀を見てみたい」など、ファンからの声がSNS上に多く寄せられ、展示されることになりました。文京区と『刀剣乱舞ONLINE』のコラボレーション企画も、展示期間中に合わせ、スタンプラリーや、等身大キャラクターのパネル展示などがあります。
文京区 × 刀剣乱舞ONLINE コラボレーション
「細川の名刀と巡る文のみち ~目白台・関口の雅~」
【最新情報特設サイト】https://bunkyo-touken.jp/
【問い合わせ】03-5803-1174(文京区アカデミー推進課観光担当)
『令和4年度早春展 揃い踏み 細川の名刀たちー永青文庫の国宝登場ー』展の概要
【開催期間】2023年1月14日〜5月7日
【会場】東京都文京区目白台1-1-1 永青文庫
【開館時間】10時〜16時半(入館は16時まで)
【休館日】月曜日
【観覧料】一般1300円/大学生・高校生800円
※中学生以下、障害者手帳を提示、及び介助者は無料
※観覧はオンラインによる日時指定予約制
(時間枠の定員に空きがある場合に限り、入館可能)
【電話】03-3941-0850(永青文庫)
【永青文庫】
神田川沿岸の樹々に囲まれた閑静な一画にある永青文庫は、細川家の下屋敷跡につくられた東京で唯一の大名家の美術館です。白い壁が印象的なこの洋館は、細川家の家政所(事務所)として昭和初期に建設されました。1950年、細川護立によって設立され、細川家伝来の美術工芸品や禅画、刀剣、近代日本画など国宝8件、重要文化財34件を含む9万4000点を所蔵し、テーマごとの展覧会を開催しています。隣には大きな池を回遊して景観が楽しめる日本庭園「文京区立 肥後細川庭園」があります。