漠然とほめることは、うわべだけの評価となる また、ほめ方にもポイントがあります。全体を見て、漠然と「字が上手に書けたね」と言うだけでは、うわべだけほめられているような気がしてしまうものです。曖昧にではなく、どこかを具体的…
画像ギャラリーかつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、入学試験シーズンを前に集中連載でお届けします。
「もっときれいに書きなさい」は、ふてくされの元
第16代アメリカ合衆国大統領をつとめ、奴隷解放に尽力したエイブラハム・リンカーンは、「人は誰でもほめられることが好きなものだ」との言葉を残したと伝えられています。そして、「相手を動かそうとするときには、心のこもった押しつけがましくない説得の手を用いるように心がけることだ」とも――。
たとえば、子どもが書いた文章を見てみたら、字がすごく汚かった、というのはよくある話です。そんなとき、「もっときれいに書きなさい」というしかり方をすると、「せっかく頑張って書いたものなのに……」と、やる気をなくしてしまいます。「どうせ自分は字が下手なのだ」と、ふてくされ、以降はさらに雑に書いてしまうようになるかもしれません。
ダメな点より、よい点をほめることに重点を置く
いつも短所を探して、怒ってばかりでは、お互いにストレスがたまってしまいます。ダメな点に対して批判をするよりも、よい点をほめることに重点を置いて、子どもを伸ばすよう意識してみましょう。
字が汚いと指摘するのではなく、「この字がすごくきれいに書けている」とほめるのです。続けて、「その調子でほかもきれいに書いていったら、どんどん字が上達するね」と伝えてみましょう。自分の書いたものを評価されて、うれしくなった子どもは、向上心を持つようになり、字をていねいに書こうとするはずです。
子どもは、批判されることによって萎縮してしまいますが、励まし、ほめられることによって、「頑張ろう」と意気込むものです。
漠然とほめることは、うわべだけの評価となる
また、ほめ方にもポイントがあります。全体を見て、漠然と「字が上手に書けたね」と言うだけでは、うわべだけほめられているような気がしてしまうものです。曖昧にではなく、どこかを具体的にほめてみましょう。
ひとつの字を指さして、「この字が特にきれいに書けているね」と声をかけてあげるほうが、「しっかり見てくれている」と感じるものです。
大人に置き換えてみましょう。たとえば、「いいネクタイですね」とほめられたとき、もちろん悪い気持ちはしませんが、「まあ、よくあるお世辞かな」と感じてしまいますよね。
しかしそこで具体的に、「花の模様が独特で、センスがいいネクタイですね」と言われたらどうでしょうか。相手がどの部分がよいと思っているのかをきちんと指摘されてほめられると、「よく自分のことを見ているな」と感じて、単純にほめられるより、もっとうれしくなるでしょう。
同じように、子どもにも、「自分はよく見られているのだ」と感じさせましょう。親が自分のことを認め、評価してくれていると実感することで、子どもは今以上にやる気を出し、自分の中にある能力を引き出すことができます。
マンガと文/杉山奈津子(すぎやまなつこ)
杉山塾代表。1982年、静岡県静岡市に生まれる。静岡雙葉高校3年時の実力模試は「偏差値29」だったが、独学勉強法で1浪後、東京大学理科二類に合格。2006年、東京大学薬学部を卒業後は、作家、イラストレーター、心理カウンセラーとして活動。2020年、静岡市内に「杉山塾」を開き、小学生~高校生の学習塾代表として活動中。近著に『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー/講談社)がある。
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