新型コロナ第8波は「鍋」で乗りきる(前編)

免疫力アップのためにはタンパク質も同時に摂りたい さて、私たちの免疫機能が野菜を食べることで強化されることを述べたが、それにはタンパク質も必要なのである。タンパク質は筋肉など体を構成する材料として不可欠だが、それ以外に免…

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新型コロナウイルスへの感染が急速に広がっています。現在の第8波では、昨年12月から1月10日までの間に1万人以上が亡くなってもいます。日本での新型コロナによるこれまでの死亡者数は6万人を超えていますが、その6分の1ほどがこの1か月で亡くなっている現実をとらえると事態は深刻です。

根本的にはやはり、自分自身の免疫力を高めておくことに尽きるのですが、野菜の力がこれまで以上に期待されています。なかでも「野菜スープ」、とりわけ「野菜は生で食べるな」「野菜は煮込んでこそ価値がある」という主張に注目が集まっています。ノンフィクション作家・奥野修司さんのレポートを、前編、後編の2回でご紹介します。※本記事は奥野修司『野菜は「生」で食べてはいけない』(講談社ビーシー/講談社)の一部を抜粋し再編集したものです。

ウイルスによる炎症は「活性酸素」が細胞を傷つけて起こる

新型コロナウイルスが蔓延するなかで、「最強の野菜スープ」ともいわれる野菜スープが話題になっている。考案したのは、抗がん剤の世界的権威でノーベル賞候補ともいわれた故・前田浩先生(熊本大学名誉教授)だ。もともと、がん予防のために生まれたスープだが、免疫力を上げるので新型コロナにも効果が考えられるという。本当に大切なのは、ウイルスに感染しない体をつくっておくことだろう。野菜スープがなぜそれに効果的なのかー-? 前田教授は2021年5月に亡くなられたが、これまでの前田教授への取材からQ&A形式でポイントをまとめてみる。

Q 新型コロナの対策として免疫力向上はよくいわれますが、野菜スープはなぜ有用なのでしょうか。
A 「免疫力をアップさせるのは野菜に含まれる多糖類なんですね。食物繊維やでんぷん、セルロースなどの仲間の物質がそうです。多糖類を一滴入れるだけで血液中の白血球の一種であるマクロファージが元気になって、バクテリアを攻撃してくれます。多糖類にはそういう作用があるのです。腸内細菌のなかでも善玉菌は多糖類が大好きです。免疫細胞の七割は腸にあって、特に善玉菌がそれを活性化しているのです。多糖類は腸内細菌を元気にすることで、間接的に体全体の免疫力をアップさせていると言えます」

免疫力を高めておけば、早い回復が期待できる

Q 野菜を食べて免疫力を高めておけば、感染しても早い回復が期待できますか?
A 「ただし、多糖類を吸収するのにも加熱する必要があります。でんぷんを考えてください。粉末のでんぷん(片栗粉)を水に溶かそうと思っても溶けませんが、加熱して初めて水になじんできます。寒天もテングサもそうです。加熱しないと溶けないのです。溶けないと腸内細菌の栄養にはなりません。私は野菜スープに、しいたけやまいたけなどのきのこを入れていますが、野菜スープで免疫力を高めておけば、たとえ新型コロナに感染しても、早い回復が期待できます」

前田教授の考えは、野菜スープがすべてではなく、野菜に含まれる抗酸化物質という“お宝”を無駄なく利用するには、「野菜は生で食べるな」というのが基本だった。つまり、野菜は煮て食べなさい、ということである。大事なのは、煮た野菜を「食べ続けること」だという。そうなると、一般的な煮野菜となれば料理の方法なども考えねばならず、毎日食べ続けるには、やはり作り方が超簡単なほうがいい。それが野菜スープだったというわけである。

寒い時期は「鍋」こそが最強の野菜スープになる

いっぽうで、健康のためとはいえ、同じスープだとやはり飽きてくる。「違った方法でスープを摂る方法はありませんか」と、前田教授に尋ねたことがあった。冬の頃だった。

すると、前田教授は笑いながらこう言ったのだ。
「この寒い時期、やっぱり鍋でしょう。鍋料理は最強の野菜スープですよ。鍋を囲んでおしゃべりしながら食べていたら、5分以上は煮込むはずです。食べる頃には野菜の細胞壁が壊れてファイトケミカルが外に出てきます。鍋の汁には野菜のビタミン類やポリフェノール、フラボノイドなど栄養素がたっぷり入っています。鍋の具を食べたあとで、最後にご飯を入れて雑炊にして食べませんか? 雑炊を食べることで汁を飲み干せば、野菜スープを飲むのと同じです。それに、野菜スープは野菜だけですが、鍋料理は種類によって魚や鶏肉、カキなどを入れますね。すると、タンパク質も同時に摂れるのですから、栄養バランスから言っても最強なのです」

野菜を煮込んだカレーも野菜スープと同じ

抗酸化物質などファイトケミカルを摂るには「野菜スープ」と思い込んでいる人も多いが、基本は野菜を煮込むことなのだから、鍋料理を含めて和食には野菜スープと同類のものはたくさんあるということだ。

考えてみれば、野菜カレーも同じだ。野菜を煮込んだあとカレー粉を入れるが、カレー粉の主成分はポリフェノールのクルクミンを含むターメリックだから、より多種類の抗酸化物質を摂ることができるはずである。

免疫力アップのためにはタンパク質も同時に摂りたい

さて、私たちの免疫機能が野菜を食べることで強化されることを述べたが、それにはタンパク質も必要なのである。タンパク質は筋肉など体を構成する材料として不可欠だが、それ以外に免疫システムを維持するための抗体や免疫細胞、それにホルモンや酵素などをつくるのにも必要だから、野菜スープだけ飲んでもタンパク質が不足すれば免疫機能は十分に活性化しない。

また、パセリやブロッコリー、カリフラワー、アスパラガスの穂先などには「グルタチオン」という強力な抗酸化物質が多く含まれるが、実は豚肉、牛肉、鶏肉、特にそのレバーには野菜以上にたくさん含まれている。冬になるとよく食べられるカキ鍋のカキもそうだ。そのうえグルタチオンは、慢性肝炎、口内炎、皮膚炎などの治療薬として承認されているほど抗酸化力が強いことから、アンチエイジングに効果的と注目されているのだ。野菜スープと一緒にタンパク質が摂れる鍋料理は非常に栄養バランスのいいメニューと言える。

文・奥野修司 

奥野修司


おくのしゅうじ。ノンフィクション作家。1948年、大阪府に生まれる。立命館大学卒業後、1978年から日系移民調査。帰国後、フリージャーナリストとして活動。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』(文藝春秋)で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。近年、『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(講談社文庫)、『本当は危ない国産食品 「食」が「病」を引き起こす』(新潮新書)などを通じ、日本を取り巻く食事情と食環境に警鐘を鳴らし続けている。

新刊情報
『野菜は「生」で食べてはいけない』奥野修司(著)講談社ビーシー/講談社

『野菜は「生」で食べてはいけない』


健康や美容のため、生野菜をたくさん食べ、野菜ジュースを日課とする人が大勢います。しかし実は、こうした生野菜の摂取は、健康効果の点からはまったくおすすめできません。むしろ、「野菜は生で食べるな」というのが基本。本書は、その理由と、「唯一の解決策」を追った健康ノンフィクションです。

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