子どもの表情、話し方、動作、姿勢に合わせて会話する ミラーリングでは、真似すべきポイントとして、四つの要素があげられます。 一つめは、表情です。相手が笑顔になっているときは自分も口角を上げて笑顔をつくり、相手の表情が沈ん…
画像ギャラリーかつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、入学試験シーズン真っただなかに集中連載でお届けします。
「そうなんだ」に加えて、子どもの言葉をオウム返しする
相手の発言に対して、言葉をそのまま「オウム返し」をして繰り返すというテクニックがあります。カウンセラーやコンサルタントがよく用いる方法で、「ミラーリング」、または「バックトラッキング」といいます。
たとえば子どもが、「学校でテストの点数がよくて、うれしかった」と報告してくれたとします。このとき、「そうなんだ」と、相づちを打ってほめる人が多いと思います。次回からはそこに、「そうなんだ。テストの点数がよくてうれしかったんだね」と、相手の用いた言葉をそのまま付け加えた返事をしてみてください。
相手は、ただ相づちを打たれてほめられるだけのときよりも、自分の発言を「しっかり聞いてもらっている」という心地よさを覚え、深く肯定されているように感じます。
相手と同じ発言や動作によって、好意が伝わる
一緒にいると夫婦は似てくるといいます。実際のところ、人間はよい関係を築いていたり、好意を抱いていたりする相手と、同じような言動をするようになるという性質を持っています。相手の言葉を真似するミラーリングは、それを逆に利用したもので、相手と同じ発言や動作をすることにより、好意を持っていると感じさせるテクニックです。
ニューヨーク大学のターニャ・チャートランド博士が行った、「しぐさを真似することによる好感度」を調査した実験があります。
まず、初対面である参加者と協力者にペアをつくらせて、15分間会話をしてもらいました。協力者の半分には、参加者の声の調子やしゃべり方を真似してもらうように指示し、もう半分の人たちには、特に何も真似をすることなく、会話を続けてもらいました。
その結果、しゃべり方を真似された参加者のほうが、会話の中で共感されていると感じ、相手を好意的にとらえる傾向があったことが実証されました。人間は、無意識のうちに、同じ行動をする相手に対して、心を開くようになるのです。
子どもの表情、話し方、動作、姿勢に合わせて会話する
ミラーリングでは、真似すべきポイントとして、四つの要素があげられます。
一つめは、表情です。相手が笑顔になっているときは自分も口角を上げて笑顔をつくり、相手の表情が沈んでいたら、自分も悲しそうな表情に合わせましょう。
二つめは、話し方や声の調子です。話すときのスピードや、声の高さ、テンションなどを似せましょう(これを「ペーシング」と呼びます)。
三つめは、動作です。相手が足を組んだら、こちらも足を組んでみます。ほかにも、相手が飲みものに口をつけるタイミングで、自分も飲みものを飲んでみてください。
四つめは姿勢です。相手が、前かがみになってきたら、自分も身を乗り出すように話してみましょう。ゆったりとくつろいできたら、自分も力を抜きましょう。
このように、意図的に相手の行動や言葉を真似ることによって、知らず知らずのうちに、相手から好意や安心感を引き出すことができます。子どもの話を聞くときは、ぜひこの四つの要素を意識して、相手に合わせた会話をしてみてください。
マンガと文/杉山奈津子(すぎやまなつこ)
杉山塾代表。1982年、静岡県静岡市に生まれる。静岡雙葉高校3年時の実力模試は「偏差値29」だったが、独学勉強法で1浪後、東京大学理科二類に合格。2006年、東京大学薬学部を卒業後は、作家、イラストレーター、心理カウンセラーとして活動。2020年、静岡市内に「杉山塾」を開き、小学生~高校生の学習塾代表として活動中。近著に『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』(講談社ビーシー/講談社)がある。