肉巻きをケチャップではなく、塩で食べるワケとは 食欲が刺激されたところで、どんどん注文。「豚バラ肉のチーズ巻」(770円)はしっかり焼き目のついた豚バラ肉と色鮮やかなピーマンのコントラストが美しく、中からトロ~リ溶け出す…
画像ギャラリー斬新な調理スタイルの「バズレシピ」や「至高のレシピ」で話題のリュウジさんは、お酒を飲みながら料理をするというYouTube動画が人気の料理研究家です。レシピの公開だけでなく、Twitter「リュウジの酒場探求記」では気になる飲食店の紹介も。SNSなどの総フォロワー数が790万人以上という「料理のお兄さん」が、感性の赴くままに歩いて街で見つけた「自分史上最高にウマくて、楽しく飲める店」について本音で語ります。
第10回は東京・本所吾妻橋の「居酒屋 君の席」です。
最後までアツアツを堪能できる店主の心遣い
昨年(2022年)末から、隅田川沿いで本所界隈の酒場を“ローラー作戦”で新規開拓しています。この辺りは個人経営の居酒屋が多く、手頃な値段ながら心のこもった料理を提供する店が立ち並び、高いクオリティを誇っています。
事前情報一切ナシ、直感を頼りにふらっと立ち寄ってお気に入りの店を探し当てる―――そんな魅力にあふれています。
その中で最近、何とも神秘的な店を見つけたのです。本所吾妻橋駅から三ツ目通りを1、2分歩き、左折してすぐの『居酒屋 君の席』。店構えはどこから見てもフツーの居酒屋。主に地元の常連さんらしきお客さんが、ボトルを入れて談笑しているどこでも見られる光景が広がっています。
メニューを一見したところ、特に目新しいものはないよう…。ただ、店主が中国の方のようで、お馴染みの中華料理をメインに揃っています。
早速、好物の麻婆豆腐(770円)から。ほどなくして、小ぶりの土鍋がグツグツと音を立てながら登場。香り豊かな湯気が立ち上り、迫力満点!土鍋があまりに熱いので、「やっとこ」という鍋つかみ専用のハンドルを使って出されるほど。あれこれ食べて飲みながらも、最後までアツアツを楽しめるよう、店主の心遣いに嬉しくなります。
肉は少なめですが、大きなさいの目の豆腐にネギがたっぷりのせられ、豆板醤(トウバンジャン)や甜麺醤(テンメンジャン)、豆鼓(トウチ)といった香辛料が見事に混ざり合って、辛い中にもコクと奥深い旨味を引き出しています。さらに香り豊かな花椒(ホワジャオ)が、痺(しび)れるような辛さを加えて、いままで食べたことのない衝撃のウマさ!
麻婆豆腐は、店によって辛さが異なりさまざまな味が楽しめますが、こちらは、僕の好みにベストマッチ。特に、発酵調味料の豆鼓の使い方が気になります。
豆鼓が持つ深みのあるコクを隠し味に加えた本場の味を参考に、家庭でも再現できるよう新しい麻婆豆腐のレシピを考案中です。
肉巻きをケチャップではなく、塩で食べるワケとは
食欲が刺激されたところで、どんどん注文。「豚バラ肉のチーズ巻」(770円)はしっかり焼き目のついた豚バラ肉と色鮮やかなピーマンのコントラストが美しく、中からトロ~リ溶け出すチーズが三位一体となって、絶妙なバランスで口の中に広がります。
肉巻きにはケチャップをつけるのかと思いきや、塩が添えられています。食べて納得、バラ肉の脂身に塩が絡んで甘味さえ感じられ、さらにピーマンの苦味をチーズと共に和らげて食べ応えアリ。
他にも、ニラ玉や回鍋肉などをいただき、〆は、カレーライス。小間切れ肉と玉ネギだけのシンプルな仕上がりですが、カレーソースに溶け込んだ濃厚な味わいは、やみつきになる美味しさ!
他にも、皮から手作りしているという餃子を食べたかったのですが、売り切れで断念。早速、また行かなくちゃ。
どれも素朴な料理なのに、圧倒的な特別感!
いつも食べている素朴な料理が、こちらではどれもみな圧倒的な特別感があります。「なんでこんなにウマいんだ!?」と、しばし、頭を抱え込んでしまうほど一品一品が、強烈な印象を残しました。言葉にできない美味しさの秘密は、考えれば考えるほど不思議な感覚に囚われ、惹きつけてやまない魅力があります。
僕はふだん店で食べながら、作り方のあらましの見当がつくのですが、こちらはかなり難しい。それこそ、奇をてらわず、素材に忠実に向き合い丹精込めて作られている正統派の証(あかし)でしょう。心底、料理が好きだからこそなせる業(わざ)でとても共感できました。それゆえ、全般的に味付けの系統が僕に似ているような…。
百聞は一見に如かず。ぜひ、店で味わってみることをおススメします。
『居酒屋 君の席』の店舗情報
〔住所〕東京都墨田区東駒形4-21-2
〔電話〕03‐6240‐4339
〔営業時間〕17時~翌0時30分(LO23時30分)
〔休日〕不定休
〔交通〕都営浅草線本所吾妻橋駅A2出口から徒歩1分
※新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前にお店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。
リュウジ
料理研究家。1986年、千葉市生まれ。Twitter やYouTubeで日々更新する料理動画やレシピが、「簡単に爆速で美味しく作れる」と大人気。YouTube チャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」の登録者数は357万人で、SNSを含めた総フォロワー数は790万人を超える。Twitter「リュウジの酒場探求記」2022年、定番料理100品のレシピを集めた『リュウジ式至高のレシピ』(ライツ社)で「第9回料理レシピ本大賞」を受賞。2020年、『ひと口で人間をダメにするウマさ!リュウジ式悪魔のレシピ』(同社)に次ぐ2度目の栄誉に輝く。「料理のお兄さん」として自炊の楽しさを広めようと、多方面で活躍している。