開店60年、千葉の老舗ローカル高級スーパー「京北スーパー」が“割高でも売れる”理由 “お高めPB商品”でリピーターを獲得

千葉県北西部の柏市、流山市、我孫子市にスーパーマーケット9店舗を展開する「京北スーパー」(本社・柏市)は、60年前の開店当初から、品質に特化した品揃えを誇る地域密着型の高級スーパーです。目利きのバイヤーが、全国を飛び回っ…

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千葉県北西部の柏市、流山市、我孫子市にスーパーマーケット9店舗を展開する「京北スーパー」(本社・柏市)は、60年前の開店当初から、品質に特化した品揃えを誇る地域密着型の高級スーパーです。目利きのバイヤーが、全国を飛び回って吟味した選りすぐりの商品のほか、生産者や地元メーカーらと組んだプライベートブランド(PB・自社企画商品)は、割高なのに根強い人気を誇ります。物価高騰に翻弄される小売業界にあって、異彩を放つ老舗ローカルスーパーの魅力とは。

柏で初のスーパー、「紀ノ国屋」創業者との親交を経て

京北スーパーは、1963年(昭和38年)柏市で初のスーパーとして開店しました。今年で60年を迎えます。

その10年前、東京を拠点とする高級スーパーの紀ノ国屋が開業しています。紀ノ国屋のホームページ(HP)には、同社の歴史紹介の中で「1953年、お客様自ら商品を選び、レジで精算する日本初のセルフサービス・スーパーマーケットを東京・青山に開店」と書かれています。紀ノ国屋創業者の増井徳男氏は、店で取り扱う商品の生産地まで足を運び、安全性を確かめたうえで販売し、多くの客の信頼を得てスーパーの発展に貢献しました。

同じ頃、柏市で初のスーパー開業に向けて奔走していたのが、京北スーパーの初代社長、石戸孝行現相談役でした。石戸氏は増井氏と親交があり、その熱意に触発され、自らも「食の安全・安心を追求する高質スーパー」を掲げ、品質に特化した品揃えで、地域経済を牽引、「京北に行けば、安心して美味しいものに出合える」と、長年、多くの固定客に支持されています。「高質」とは、「高品質」を略した京北スーパーのキャッチフレーズです。

精肉は、尾崎牛やアグー豚といった国産生肉のみ販売、総菜も中国産を一切使っていません。総菜のフライで使われた植物性の廃油は、バイオマス発電に再利用するなど、積極的なエコロジー活動も推進しています。

単に「高品質な商品を売る」ことにとどまらず、「健康を売る」という理念のもと、喫煙の被害が社会問題化していた1984年、全店舗でタバコ販売を廃止。率先して食の安全に努めています。

売り場面積の55%が生鮮食品、高級魚や珍しい鮮魚も…旬の味がズラリ

6月初旬、柏市街地を走る国道6号沿いの「京北スーパーapris」を訪れると、店先にはラベンダーやクチナシといった旬の鉢植えから、バラやムクゲの苗木、パプリカやバジルの苗まで20種類以上の花々や苗木が彩りを添えています。これからの季節、暑さのため取り扱う植物は少なくはなりますが、ホームセンターの園芸コーナーを訪れたかのような充実ぶりに目を見張ります。

店先に季節の鉢植えや苗が並ぶ「京北スーパーapris」=千葉県柏市南柏

店内に入ると、鮮魚、精肉、青果といった生鮮食品の売り場面積の広さに圧倒されます。一般的なスーパーでは、生鮮食品が売り場全体に占める割合は、35%ほどが多いようですが、こちらでは55%をも占めているとのこと。

中でもこの時期、鮮魚売り場に並ぶのは、県内の銚子港で水揚げされたばかりのカツオやイワシをはじめ、北海道産のホッキ貝や三陸のホヤから、日本海のメバル、玄界灘のアマダイやケンサキイカなど、北から南まで日本近海から届けられた魚介類がズラリ。スーパーの魚売り場ながら、港町の魚市場にいるような豊富な種類と珍しさ、活きの良さに溢れています。客の好みに応じで捌いてくれるサービスもあります。

冬場には幻の魚と言われる玄界灘のクエや、下関産のフグ、秋田産のハタハタや茨城産のアンコウなど、他店ではお目にかかれない珍しい魚をいただくこともできます。

「目利きのバイヤーが毎日市場に出かけ、その日のうちに売り切るのを目標に仕入れて、鮮度や美味しさを保つよう徹底的に管理して届けています」と、下西琢也社長は胸を張ります。
京北スーパーの前身は、鮮魚や乾物を扱う小売店だったと聞き、いつ来ても充実した鮮魚のラインナップに納得です。

旬の鮮魚は丸ごと1匹ズラリと並んでいる。他店には見られない珍しい魚もあり、活きの良さが伝わってくる

店内でネタを捌く寿司のお味は!?値段も◎

これら鮮度抜群の魚をネタにした「魚屋さんの寿司」は、京北スーパーの看板商品の一つとして、高い人気を誇ります。

寿司ネタの中には、冷凍していない魚も多く、店内で捌いているため、脂乗りが良く肉厚で食べ応え十分。スーパーで売られている寿司とは思えないほどの、クオリティの高さが魅力です。

この日いただいたのは、大トロ、本マグロ、イクラ、サーモン、タイ、ホタテ、エビ、イカ、ネギトロ、卵と10貫入って1000円強と安さも◎。大トロバチマグロ6貫も同価格。旬を迎えたアジの握りは、口に入れた途端、ふわっととろけるほどの脂乗りで6貫600円強とは驚きです(値段は時価による)。他にもズワイガニやアナゴの押し寿司など十数種類ほど揃えており、家で気軽にいただけるのに満足度がかなり高く、おススメです。

鮮度抜群のネタは店内調理、脂乗りが良く厚切りで、口の中に入れるととろけるよう

300品目に上る自慢のPB商品、地域活性化にも一役

生鮮食品だけではありません。調味料から乾物、乳製品や加工食品など300品目のPBにも、京北スーパー独自の戦略がうかがえます。ふつうPBと言えば、有名メーカーの商品より安価なのが当たり前。さらに有名メーカーと共同開発している場合が多いことから、似通った品揃え感が否めません。

一方、京北スーパーのPBは、メーカーの同じカテゴリー商品より2割ほど高い商品が多いにも関わらず、「一番におススメできる自信作」(下西社長)と言うだけあって、つい手が伸びる“仕掛け”があるようです。

タッグを組んでいるのは、各地の老舗メーカーや生産者ら。地域活性化をも視野に入れ、材料や製法にまでこだわったPBは、開発から販売に至るまで半年以上もかけて生み出した自慢の商品だけあって、他にはない“やみつきになる”ものばかり。少々値が張っても「美味しくて健康に良いもの」を求めるリピーターを増やしています。

人気のハンバーグステーキ

人気商品のひとつ、チルドタイプの「ハンバーグステーキ」(120グラム、410円)は、創業40年の山形県の食品メーカー「サカタフーズ」が、地元産の牛・豚肉を中心に国産のみを原料とし、玉ねぎは職人が蒸気釜で色付き具合を見ながら炒めた後、ひと晩寝かせる徹底ぶり。材料をすべて混ぜ合わせたら、一つずつ手作業で捏ねて形を整えてから、ジェットオーブンで焼き上げて旨味を閉じ込めます。

真空パックで販売されているハンバーグは、湯煎するとジューシーで柔らかく、肉のうまみがあふれていますので、ソースをつけなくとも美味しくいただけます。化学調味料などの添加物は一切使用していないので、安心です。

「Pro Spaghetti 1.7ミリ」(300グラム、302円)は、90年にわたりパスタ製造を手がける「ニューオークボ」(柏市)のもの。最良の小麦を使い、ソースが絡みやすいよう麺の表面に凸凹を施し約100時間かけて乾燥させており、モチモチの食感と弾力がたまりません。生パスタと共に、首都圏のレストランにも多く卸しており、小売りで入手できるのは、京北スーパーのほか柏駅構内など限られています。

他にも「ふるさと牛乳」(1000ミリリットル、319円)は、1950年から「低温殺菌ひとすじ」に励む「タカハシ乳業」(本社・群馬県前橋市)が製造。65℃で30分加熱殺菌処理した本来の生乳の風味に近い味わいとあって、乳製品の中でダントツの売れ行きです。低温殺菌牛乳はいまでこそ他店でも見かけますが、京北スーパーでは30年も前からPBとして扱ってきました。先見の明に改めて驚かされます。

紺地に「KEIHOKU」の白い丸文字が目印のPB商品は、調味料から加工品まで充実している。割高ながら、品質の高さが際立つとあって、多くのリピーターに愛されている

「柏マルイ店」オープンで新たな顧客を取り込め

2022年にオープンした「柏マルイ店」は、生鮮食品を扱わず、PB商品も控えた新形態の店舗として、地元で話題を集めました。若者に人気の商業ビル内への出店とあって、20代~40代の購買層向けに、柏市内の人気店「肉の大山」の焼肉弁当や、中華料理店「知味斎」の総菜を中心に、菓子や酒類を主力としており、仕事帰りのサラリーマンに好評だとか。

相次ぐ値上げや人口減少、コロナ禍が収束に向かいつつあるいま、小売業は新たな岐路に立たされています。京北スーパーは、いくつもの荒波を乗り越えて60周年。地元に愛されてきた秘訣について、下西社長は「(単に)有機栽培だから体に良い、という価値観で商品選びはしていません。お客さまが『美味しいからまた買いたい』『京北に行けば、こだわりの商品が買える』と継続して購入いただけるよう、独自の目線で本当に安心して健康に良いものを提供する店づくりに努めています」と話します。

オンライン販売は残念ながら実施されておりませんので、気になる方はぜひ、店舗を訪ねてみてください。

※文中、商品の値段は参考価格です。

2022年にオープンした「柏マルイ店」は、弁当や総菜、菓子、酒類を中心とした品揃えで20~40代の若い購買層を主なターゲットにしている

「京北スーパーapris」の店舗情報
【住所】千葉県柏市南柏2-12-2
【電話】04-7145-1000
【通常営業時間】10時~19時45分
【休】年始
【アクセス】JR常磐線各駅停車南柏駅西口出口から徒歩6分

「京北スーパー柏マルイ店」の店舗情報
【住所】柏市柏1-1-11柏マルイ2F
【電話】04-7167-5701
【休】年始
【通常営業時間】10時~20時半
【アクセス】JR常磐線柏駅改札から徒歩1分

文・写真/中島幸恵

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