家族で力を合わせ、あるいは仕入れに力を入れ、月に1~2度は通えそうな価格で楽しませてくれるのが町の寿司店。本当に嬉しい存在です。ここでは新しく発見したお店に過去の秀逸店を合わせて紹介します。
気負わず通える風情と値段。老舗の江戸前仕事に唸る『蛇の目鮨』@成城学園前
成城と言えば高級住宅地。そんな場所で暖簾を出す寿司屋はさぞかし……と身構えつつ入ってみれば、いい意味で肩透かしを食らった。
店内はカウンター席に小上がりのある昭和の町寿司そのまんまの風情。夜でも握りもチラシと庶民派だ。
豊洲と川崎の両方の市場で目利きしてくるネタの良さもさることながら、店で炊くカンピョウに、香りを残しつつふっくら煮た穴子、チラシのご飯の上で彩りを添えるおぼろまでもと、細やかな江戸前仕事の積み重ねが56年間、看板を支えてきたのは間違いない。
さらに二人三脚で切り盛りする、純一さんとお母さんのやりとりも“味”で、飾らない親子の会話に加われば、自分が一見だったことも忘れてしまう。
明朗会計、つまみも絶品。代々木八幡『おすし磯部』
外から覗いでみれば、カウンターでひとり酒盃を傾けている人にも、賑やかにテーブルを囲む人にも、お客の中には女性の姿が目立つ。
それは味もコスパも雰囲気も、欲張りを全て叶えてくれる店だから。品書きは明朗会計で1貫110円~。豊洲の他に、長崎の漁師から届くちょっと珍しい魚種を見つけるのも楽しみだ。
加えてつまみ、なのである。和食の経験もある店主が作る一品料理は気が利いていて、日本酒と合わせれば握りに行く前からえびす顔。
初めてなら「大将のお任せコース」(前日までに要予約)に身をゆだねてしまおう。
前菜、揚げ物、刺身に焼き物、さらに美しい姿の寿司10貫もついてこの値段は、コスパに厳しい客もきっと満足する。