「独学力」向上!トレーニング受験理論

問題が解けずに“硬直状態”の受験生 イチロー選手も語る「当たり前のことをする」大切さ

トレーニング受験理論

「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第14回では「普段通…

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「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第14回では「普段通り当たり前のことができること」に注目します。

机の上に放置されたペットボトルやゴミ

十数年前の話です。私立中高一貫男子校に通うM君は、成績不振のため高校3年の1学期に入塾してきました。決して不真面目な生徒ではなく、「勉強しなければ」という意識は強かったのですが、学校の授業のレベルに追いつけない状態でした。お母さんのお話によると、M君が自宅の部屋で勉強している姿をドアのすき間からそっとのぞいて見ると、机に向かってはいるものの、問題が解けずに、長時間硬直したままで座っている、とのことでした。そのような状況のためか、M君は入塾当初は笑うこともなく、寡黙で、周りを寄せ付けない雰囲気を放っていました。

さて、M君が入塾して間もない頃、M君の机の上には飲み終わった後のペットボトルや不要となったゴミくずなどがいつもそのまま放置されていました。はじめのうちは注意することもなく様子を見ていましたが、しばらくたったころ、ゴミはその都度ゴミ箱に捨てるようにと軽く注意をしました。するとM君は明らかに不快感を顔に表し、そのまま無言で部屋を出て行こうとしたのです。すぐにM君を引き留め、席に座らせ、なぜそのようなことが大事なのかについて、話をしました。M君も一時的に感情的になって外に出ようとしたものの、落ち着いて話をすると理解してくれ、それ以降はゴミはすぐに捨てるよう心掛ける姿が見られました。

ペットボトルを置きっぱなし、ゴミを出しっぱなしにしていたM君の性格は、問題を解くときにも表れていました。問題を解くのはいいのですが、解いた後は解きっぱなし。解けなかった問題をきちんと解けるようにすることにはあまり取り組んでいませんでした。

やりっぱなしはよくない

当たり前のことですが、数学が出来るようになるためには、解けなかった問題を解けるようにすることが大事です。しかしこの当たり前のことがなされていないケースが少なくありません。誰でも出来ないことや嫌いなことに取り組むのはエネルギーがいることです。しかし、それを避けていては学力は身に付きません。

「特別なことをするためにすべきなのは特別なことではない」

ここで思い出すのがイチロー選手の言葉です。

イチローの名言集にはこう、ある。「特別なことをするために、特別なことをするのではない。特別なことをするために、普段通りの当たり前のことをする」と。(引用:「鉄人」 イチロー・世界記録への挑戦|PRESIDENT Online)

当たり前のことがいかに大事かが、これほど説得力を持って語られた言葉をほかに知りません。前人未踏の「特別なこと」を成し遂げたイチロー選手ならではの言葉と感服します。
引用元の記事では、次のようにも書かれています。

「グラウンド入りしてからのルーティンワークは有名で、ストレッチも一つひとつ丁寧にやる。特別なことをやるのではない。股関節を柔らかくするマタ割り、肩甲骨の周りをしなやかにする肩のストレッチ……。並みの選手が1年365日続けられないことを、イチローは1日も欠かさずにやるのである」(引用:「鉄人」 イチロー・世界記録への挑戦|PRESIDENT Online)

イチロー選手の言葉

数学学習における「当たり前のこと」

数学の場合、標準的なレベル(文科省検定教科書のレベル)の学力を身に付けるには、やるべきことはほとんど決まっています。定理・公式を理解して身に付け、基本問題や典型問題の演習を行い、解けるようにすることです。その内容も、進学校とそうでない学校との間に違いはあまりありません。この段階では演習量がものを言います。必要な量の演習をこなせば、ほとんどの場合、教科書レベルの学力は身に付けることが出来るのです。

イチロー選手の言う「当たり前のこと」とは、ここでは基本問題や典型問題の演習に置き換えることができます。当たり前のことを当たり前のようにやりさえすれば、必要な学力は身に付けられるのです。

もちろん、「当たり前」にはレベルがあります。イチロー選手にとっての「当たり前」と、我々にとっての「当たり前」とを同列に置くことはできません。しかし、まずは自分のレベルでの「当たり前」をこなしていくことではないでしょうか。少しずつ上達すれば、当たり前のレベルも上がっていくことでしょう。

M君の場合は、まず机上のゴミを片付けることからでした。もちろん、「特別なこと」まで起こせたわけではありませんが、少なくとも勉強への取り組みが変わり、徐々に問題を解き進められるようになりました。「硬直状態」からはすっかり解放され、標準的なレベルの学力は身に付けることが出来ました。

(引用サイト)
「鉄人」 イチロー・世界記録への挑戦|PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/14958

硬直状態に……

【トレーニング受験理論とは】
一流アスリートには常に優秀なトレーナーが寄り添います。近年はトレーニング理論が発達し、プロアスリートやオリンピック・メダリストはプロトレーナーから的確な指導を受けるのが常識。理論的背景のない我流のトレーニングでは、厳しい競技の世界で勝ち抜けないからです。自学自習が勉強時間の大半を占める受験も同様です。自学自習のやり方で学力に大きな差が出るのに、ほとんどが生徒自身に任されて我流で行われているのが実情です。トレーナーのように受験生の“伴走者”となり、適切な助言を与えながら、自学自習の力=独学力を高めていく学習法です。

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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