トロッコ電車で雄大な自然と天然湯を満喫 話を戻そう。翌朝、もうひとつの露天風呂からの、まるで絵画のように切り抜かれた景色と源泉掛け流しの温泉を堪能してからチェックアウト。 その足で向かったのが黒部峡谷鉄道の宇奈月駅。そう…
画像ギャラリー長い酷暑が落ち着いて、やっと訪れた秋。温泉が恋しくなる頃でしょう?旅館や公衆浴場で湯に浸かってホッ、そのあとはおいしい料理と酒での〜んびり。そんなゆるりとした時間を1泊で過ごす「湯とメシの旅」を、東京から行きやすい温泉地でご提案。お好みの場所へ、日帰り、あるいは1泊でお出かけください。今回は、東京から電車で約2時間半。雄大な景色を拝むことができる宇奈月温泉へ。露天風呂やトロッコ電車から見える山々が色づき、見頃を迎えます。美しい自然と極上の湯を満喫してきました。
無色透明の美肌の湯でお肌“つべつべ”
「生きているうちに、ぜったい一度行った方がいい」
宇奈月温泉から戻って以来、会う人全員にこの言葉を口にしている。早い話、それまで名前すら知らなかったこの地に魅了されたのだ。ともあれ関東では割と知名度の低い宇奈月温泉について少し触れておくと、北陸新幹線 「はくたか」に乗って黒部宇奈月温泉駅で下車。そこからローカル鉄道に乗り換えて約30分と電車でのアクセスもしやすい。ちなみに今年は開湯からちょうど百年の節目だそうだ。
そんな温泉地で今回選んだ宿が数年前にリニューアルした『やまのは』。チェックイン後、直行したのが棚田のように湯船が階段状に作られた展望露天風呂だ。目の前には雄大な自然が広がっていて、無色透明の湯に身を委ねれば、自分が木々と一体になったような不思議な感覚。
今朝方、人ごみをかき分けながら上野駅を発ったことが嘘みたいだ。出たり入ったりを繰り返していると、全身の肌が“つべつべ”(富山弁でツルツルすべすべの意味)に。湯から上がれば夕食タイム。こちらはバイキング方式で職人さんが握ってくれる寿司に、その場で作る串揚げや炭火焼き、ご当地ラーメンとライブ感を重視した料理のラインナップがめっぽう楽しい。
と、ここで宇奈月グルメ情報。『ささや』は和洋中揃うお食事処で「ヤキメシ」他、どれも素朴な味わいにぐっとくる。宿滞在の前、もしくは後のランチにどうぞ。
『ささや』ヤキメシ 900円、チャーシューメン 950円
さらに『カフェ モーツァルト』は本格喫茶。手作りのケーキと、マスターがハンドドリップで淹れてくれる香り高いスペシャリティコーヒーで旅の小休止にもうってつけだ。
『カフェ モーツァルト』特製レアチーズケーキセット 970円
『黒部・宇奈月温泉 やまのは』
[住所]富山県黒部市宇奈月温泉352-7
[電話]0765-62-1311
[交通]富山地方鉄道宇奈月温泉駅から徒歩3分
[利用時間]13時〜16時(最終受付15時半)※土は〜15時(最終受付14時半)、日13時半〜16時(最終受付15時半)
『ささや』
[住所]富山県黒部市宇奈月温泉243-4
[電話]0765-62-1620
[営業時間]11時〜15時、17時〜21時
[休日]木
[交通]富山地方鉄道宇奈月温泉駅から徒歩2分
『カフェ モーツァルト』
[住所]富山県黒部市宇奈月温泉294-1
[電話]0765-62-1255
[営業時間]8時半〜18時頃
[休日]不定休
[交通]富山地方鉄道宇奈月温泉駅から徒歩2分
トロッコ電車で雄大な自然と天然湯を満喫
話を戻そう。翌朝、もうひとつの露天風呂からの、まるで絵画のように切り抜かれた景色と源泉掛け流しの温泉を堪能してからチェックアウト。
その足で向かったのが黒部峡谷鉄道の宇奈月駅。そう、宇奈月温泉は黒部峡谷への玄関口でもあるのだ。残暑の涼風を感じながらガタゴト揺れるトロッコ電車に乗って日本一深いV字峡谷を縫うように進めば、人をよせつけない急峻な山々が連なっていた。
その眺望はまさに鳥肌モノで胸に迫るものがある。途中、香淳皇后(こうじゅんこうごう)の父君によって「錦繍関(きんしゅうかん)」と風雅な名前を付けられた場所もあり、取材時は緑だった木々が秋になって色付けば、それこそ綾錦の刺繍をまとった如くだろう。
終点・欅平(けやきだいら)駅までのおよそ80分間、ずぅーっと飽きずに景色ばかりを眺めていた。欅平駅では、黒部川本流に架かる朱塗りの「奥鐘橋(おくかねばし)」や、岩壁が人を飲み込むようにせり出した「人喰岩」など、観光スポットをめぐりながらしばし散策。河原のすぐそばに作られた硫黄の香りのする天然温泉の足湯は清流のせせらぎが心地の良いBGMだ。
もし時間に余裕があれば、駅からすぐの『猿飛山荘』で源泉掛け流しの露天風呂に浸かってみるのもいいだろう。そんなこんなであっという間に旅は終了。宿の露天風呂からの眺めに、神秘的な黒部峡谷に、今もずっと興奮が止まらない。紅や黄色で化粧した山々を楽しめる宇奈月は、これから11月下旬までがベストシーズンだ。
撮影/小島昇 取材/菜々山いく子
※2023年11月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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