逆転合格!中学受験

多くの生徒が点数アップの方針を間違えている 偏差値70超が50台に…スランプの小6男児が成績を回復させた学習法とは

一つのミスが合否の分かれ目

イチロー選手の言葉と、ミスの根本的な解決策 ミスの内容によっては技術的な改善法もありますが、根本的には、「ミスは絶対しない」という強い意識を持つことと、ミスがないか確認する習慣をつけることが大事です。ミスの多い生徒にとっ…

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短期連載「逆転合格!中学受験」の第4回は、短期間で点数をアップさせる方法を探ります。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏が重視する“秘訣”とは―――。

夏休み後に成績が急降下、その原因は…

ある大手塾に通う小学6年のA君は、夏休みが終わり、さあラストスパートという時期に、突如スランプに陥りました。それまで塾の定期テストや模試の偏差値は60台後半で、70を超えることもありましたが、徐々に成績が低下し、ついに偏差値が50台半ばまで落ち込んでしまいました。

しかし学力が低下していたわけではありません。テストの後で解き直しをさせてみると、結構出来ていました。成績が落ち込んだ原因はケアレスミスでした。どの科目もミスが多く、それが足を引っ張っていました。たとえば算数なら、数字の転記ミスや、たし算の計算ミスなど、初歩的なミスが多発していたのです。注意すればすぐ成績も回復するかと考えていたのですが、なかなか状況が改善されず、気が付けば15も偏差値が落ち込むようになっていました。おそらくストレスなどの精神的な問題で注意力が散漫だったのではないかと思います。

一時は本人も落ち込んでいましたが、問題を解いたら見直しをする習慣づけを心がけ、あとは通常通りの学習を続けていたところ、ミスが減るとともに成績は回復し、2ヵ月ほどたって偏差値も元通り70前後取れるようになってきました。

20~30点をアップさせたい!

短期間で成績を急上昇させるには

夏休みが終わり、本格的な入試対策の時期に入ると、まずすべきなのは志望校の過去問を解くことです。過去問を数年分解くと、その学校の問題の傾向や、自分がどのような分野で点数が取れていないかが分かってきます。それをもとに、受験までの学習の方針を考えていきます。

それでは、その次にするべきことは何でしょうか。類似問題を解くこと?それとも、弱点補強?いいえ、違います。まず真っ先に取り組まなければならないのは、「取りこぼしをなくすこと」「取るべき点をしっかり取る」ことです。

模試や過去問で、どのような問題でミス(計算ミス、転記ミス、解答欄の間違い、問題の読み違いなど)をしたか、何点ぐらい落としたかを洗い出してみてください。すると、取れていたはずの点数を驚くほど落としていることが分かるでしょう。80%偏差値65ぐらいの学校(駒場東邦中や海城中クラス)を目指す子どもでも、算数だけで2問前後(10点前後)、総合点では20~30点、ミスで落としていることがザラにあります。このミスを減らすことで、点数が5~10点以上アップします。当落ラインの生徒にとっては、ミスが合否を分けると言っても過言ではありません。ミスが多い生徒は、まっさきにその改善に取り組むべきです。

点数アップの3つの方向性

点数を上げるには以下の3つの方向性があります。
(1)まだ解いたことのない新しい問題を解けるようにする
(2)解けなかった問題を解けるようにする
(3)ミスによる失点を防ぐ

中学受験を始めた最初の頃は、インプットすべきことが大量にあるので、(1)が中心の学習となります。しかしそのうちに、(2)の重要性に気づきます。ところが中には(1)の学習の習慣から抜けられず、(2)をおろそかにして次々と新しい問題やテキストにトライしようとする人がいます。新しいことをする方が楽しいし、力が付く気がするのでしょう。

しかしこれは誤りです。習ったことが定着していかなければ、ザルのように抜けて行って、成績はさっぱり上がりません。反復練習で定着させることが大事です。この定着の過程こそが「学習」です。教わって定着しなければ、本当の意味で学習したことにはなりません。

(2)の過程まではやっていても、(3)の過程に取り組んでいる受験生は少なくなります。一番の理由は、ミスを軽んじているからです。答えが違った時に、「単なるミスをしただけで、解ける力はついている」という意識があるからです。そのような生徒はなかなかミスがなくなりません。

上位層ほど、ミスによる失点の痛さを痛感するので、ミスは少なくなりますが、中間層以下では、かなりの点数をミスで失っていることが多々あります。ミスの多い生徒にとっては、ミスをなくすことは、新しい問題を解けるようにすることよりも効果的な点数アップ法だということを理解する必要があります。

受験までの得点アップ法

意識が変わればミスは減る

上位層が多いことで知られるある大手塾に通うB君は、算数の偏差値が当初は65前後でした。塾の学習は自分でこなせていたので、塾の勉強とは別に難問演習をしていました。

算数ではもともと計算ミスなどのケアレスミスが見られたのですが、A君と同じく、やはり夏休みを過ぎた頃からそれが顕著となり、成績が急降下しました。力はついているはずなのに、模試で30点以上もミスで落とすこともあり、一時は偏差値が50を切るまでになってしまいました。

しかしB君も、A君同様、その後ミスを減らしたことで成績が上昇し、10月にはもとのレベルに戻りました。もとのレベルとは言っても、春先とは違い、受験期が近づいた秋にその塾で60台半ばというのは、かなり良い成績です。

B君の場合、ミスが減るようになったきっかけは明白でした。安全圏と思われる学校の過去問を解いたところ、当初は6割程度しか得点できませんでしたが、全問正解を狙うことよりも、ミスをしないよう確認をしながら解くようにさせたところ、8割5分取れたのです。それをきっかけにミスが激減しました。おそらく、より多くの問題を解くよりも、解ける問題をミスなく解く方が高得点を取れるということを本人が自覚したからだと思います。

ミスを防ぐ3つのポイント

ミスをなくすというと簡単に思えるかもしれませんが、それほど容易なことではありません。「字が汚いために計算間違いが多い」などの技術的なことが原因の場合は、比較的改善は容易です。しかし性格的な問題や、根本的に注意力が欠陥している場合などは、改善が難しくなります。

ミスの原因やその改善法は人それぞれですが、よく見られるミスとその改善法をいくつか挙げます。

【算数や理科における計算ミス】
・計算は必ず見直しをして、間違いがないことを確かめる。
・字を乱雑に書かない。綺麗でなくても良いが、見やすい字を書く。とくに数字の「1」と「7」、「7」と「9」、「5」と「6」などが間違えやすいので注意。
・狭いスペースに小さい文字でごちゃごちゃ書かない
・計算はその都度するのではなく、まとめて行う
・工夫して計算する

【漢字の書き損じ】
・「はね」「とめ」「はらい」に注意する
・読みやすい丁寧な字をかくことを心掛ける

【設問の読み間違い、国語の文章の読み間違い】
・大事な箇所に線を引き、意識づける
・何を問われているのかを特に注意して読み取り、それに対する答えを書く

イチロー選手の言葉と、ミスの根本的な解決策

ミスの内容によっては技術的な改善法もありますが、根本的には、「ミスは絶対しない」という強い意識を持つことと、ミスがないか確認する習慣をつけることが大事です。ミスの多い生徒にとっては、ミスを0にするというのは難しく感じられるかもしれませんが、以下のような地道な取り組みで、それは可能です。

【「ミスをしない」という強い意識を持つ】
・ミスによる間違いは解けないことと同じ
・ミスで合否が左右される
・試験でミスは0にできる

【ミスがないよう確認する】
・計算は必ず見直しをする
・大事なところに線を引いて意識づける
・設問を正しく読み取り、それに対する答えを書く

このような地道な取り組みの大事さは、いくら言ってもなかなか生徒の心に刺さらないのが実情です。生徒自身に実際に取り組ませ、結果を実感できたときに、自覚が生まれ、成績が急激に上がります。そのときにきっと次のイチロー選手の語る言葉の意味が分かるのだと思います。

「特別なことをするためにすべきなのは特別なことではない」

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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