ワインを楽しむ店のメニューでよく目にする“シャルキュトリー”。生ハムやサラミ、パテなどが有名ですが、同じメニューでも作り手によって全然違う味わいなのも面白いところ。このシャルキュトリーの数々を日々作り続け、長年メニューに据えている『ローブリュー』の櫻井信一郎シェフにその魅力と“なんたるか”を伺いました。
【お話を伺った人】『ローブリュー』の櫻井信一郎シェフ
約5年のフランス修業時代にレストランだけでなくシャルキュトリー店でも経験を積む。帰国後は代官山『パッション』、原宿『オー バカナル』シェフなどを経て2002年に自身の店をオープン。シャルキュトリーの名手として名を馳せる。
フランスの食文化に根差した職人の仕事
「シャルキュトリーというのは、簡単にいうと肉の加工品のことです」と教えてくれた櫻井シェフ。シャルキュトリーにはソーセージやパテ、ハムなど主に豚肉を加工したものが多いという。
「フランスにおけるシャルキュトリーは、日本でいう魚の加工品のかまぼこやはんぺんみたいなものじゃないでしょうか。誰もが知っていて、我々の日常に何食わぬ顔でいる。そういう存在なんです」
「パテ ド カンパーニュ」
フランスでは、料理人とシャルキュティエ(※)はまったく別の職業だという。レストランの厨房ではシャルキュトリーを作ることはなく、馴染みのシャルキュトリー専門店から仕入れるのが当たり前だ。そんななか、櫻井さんはフランス修業時代に「シャルキュトリー店で働いてみたい」と言いだして修業先のシェフを呆れさせた。
※シャルキュトリー専門店で働く職人のこと。ちなみに食肉加工品もそれを売る専門店も、フランス語では同じくシャルキュトリーと言う。
「そりゃあそうですよね。向こうの感覚だと魚屋で修業していたのに、いきなり花屋で働きたいと言い出したようなものですから(笑)。でもフランスで食べるとソーセージでも何でも旨くてね。日本で食べたものとは別物だった。そこでどうやって作っているのかどうしても見てみたかった」
フランス料理を学ぶなら、フランス人が日常でどんなものを食べているのかを知りたいと考えていた櫻井さん。フランスの食生活に根差したシャルキュトリーもまたそのひとつであった。