オールシーズンタイヤは「サマータイヤ」と「ウインタータイヤ」のいいとこ取り オールシーズンタイヤは「サマータイヤ」とスタッドレスタイヤに代表される「ウインタータイヤ」のいいとこ取り。乾燥した路面でしっかりと走り、雨の高速…
画像ギャラリー週末は温泉にでも行ってみないか? 草津なんかいいよね! 久しぶりに妻を誘ってみた。
忙しかった仕事がちょっと一段落した週末、都心から3時間弱のドライブで気軽に行ける草津温泉に息抜きに行くことにした。
季節は晩秋……というか初冬。天気予報では週末は寒気に覆われると言っている。関東北部の山沿いは雪になるかもしれない。
でも心配はいらない。愛車にはオールシーズンタイヤを履いているのだ。オールシーズンタイヤとはその名の通り、夏も冬も、季節を問わず使用できるタイヤのこと。春から秋のスリーシーズンは一般的なサマータイヤで問題なく走行できるけれど、冬場、雪が降るとサマータイヤでの走行は厳禁。そのような状況でも安心して走ることができるのがオールシーズンタイヤなのだ。
都内~関越道は晴れていても冬の北関東は「冬用タイヤ」が必須なのだ
目的地は群馬県の草津温泉だ。都内からなら関越自動車道で渋川伊香保インターチェンジまで行き、あとは一般道を走る。都内から約200㎞の行程。3時間弱で到着する。週末のちょっとしたドライブ旅行にはちょうどいい距離感だ。草津温泉は関東では屈指の温泉地。立ち寄り湯もあり、日帰りでも充分に温泉街の雰囲気を楽しめる。
そうと決まれば早速出かけよう。助手席に妻を乗せ、クルマを走らせる。
関越道は晴れて気持ちのいい青空が広がるが、ちょっと風が強く路肩に設置される吹き流しは真横に流れるほどの強風。横風にちょっとハンドルが取られるが、タイヤがしっかりと踏ん張ってくれるので不安感はない。
ドライブのお供はグッドイヤーのオールシーズンタイヤ『VECTOR 4SEASONS GEN-3』を装着したスバルレヴォーグだ。このタイヤは2016年、いち早く日本市場にオールシーズンタイヤを本格導入したグッドイヤーが昨年、大幅に改良、進化させて新たに販売を開始した最新のオールシーズンタイヤなのである。
高速道路を100㎞/h程度で走っていると、車内で感じる“シャー”という高周波の音が初期の『VECTOR 4SEASONS Hybrid』に対し明らかに小さく、静粛度が格段にアップしたことがわかる。特徴的なV字型のトレッドパターン(タイヤの表面)は高速走行時の排水性や圧雪路面でのグリップ力には大きな効果を発揮するが、乾いた路面をハイスピードで走ると路面とタイヤ表面のミゾの隙間に空気を取り込み、その音が“シャー”という高周波の音となって聞こえるのだ。
「草津に着いたら何を食べようか?」、「温泉はどこがいいかな?」。車内が静かだから妻との会話も弾む。
『VECTOR 4SEASONS GEN-3』は、例えばトレッドパターンではミゾの切り方や間隔を工夫することでミゾの隙間に入り込む空気を減らすと同時に、どうしても発生するノイズは、互いに打ち消し合うような溝配列にするなどの工夫によって“シャー”音を劇的に低減しているのだという。横風によるふらつきは、新開発のコンパウンド(ゴムの素材)やタイヤが路面に接地する面の形状の工夫などにより、しっかり感が増したことで気にならなくなったのだ。車線変更時の反応もよく、スッと横揺れも収まるので乗り心地もいい。
ところで、ここまで書いてきていまさらなのだが、ここまでのシチュエーションでオールシーズンタイヤの必要性はまったくない。少なくとも関越自動車道を埼玉県内~群馬県に入って高崎インター、前橋インターと進み、渋川伊香保インターチェンジで一般道に降りるまで青空が広がり、路面は乾燥した状態が続いていた。サマータイヤでも全く問題なく走行できる条件だ。
高速道路の「冬用タイヤ規制」でもグッドイヤーのオールシーズンタイヤなら安心して走ることができる
12月中旬にもなると関越自動車道の渋川伊香保インターチェンジから先、谷川岳の山間部へと向かう区間では急激に天気が悪化して雨になることも多い。赤城高原サービスエリア(SA)を過ぎると、標高が高くなることもあって、それまでの雨が雪に変わることが多くなる。路面は融雪剤が散布されるものの、降りが強ければあっという間に白くなっていく。
赤城高原SAから先の区間で「冬用タイヤ規制」となることも多い。こうなるとサマータイヤでは走ることができない。規制の面から「走れない」、ということもあるが、なによりも危険なので走るべきではない。
こんな時、オールシーズンタイヤのありがたさを身をもって体験することになる。グッドイヤーが日本国内で販売するオールシーズンタイヤは、この『VECTOR 4SEASONS GEN-3』に限らず、すべてが「冬用タイヤ規制」に対応しており、当然、関越自動車道(に限らないが)の冬用タイヤ規制時にも安心して走ることができるし、実際に真っ白に雪が降り積もった高速道路でも安定して走ることが可能だ。
オールシーズンタイヤと言うと、日本のユーザーにとってはあまり馴染みがなかったカテゴリーかもしれない。ここ最近、日本国内でもオールシーズンタイヤの商品ラインナップが増えてきて、タイヤショップでも目にする機会が増えてきたが、その先駆けとなったのがグッドイヤーの『VECTOR 4SEASONS』だったのだ。
もともとアメリカでは新車装着時のタイヤがオールシーズンタイヤということが一般的。ドイツやイタリア北部などの欧州では冬季スノーたーやを装着するクルマが多いのだが、日本のスタッドレスタイヤとは異なり、高速走行の機会が多い欧州のスノータイヤは、オールシーズンタイヤ的な性格が強く、豊富な商品ラインアップを誇っているのだ。
グッドイヤー社はF1やインディカーレースをはじめとするモータースポーツのトップカテゴリーでタイヤ開発を続け、高い技術力を持つタイヤメーカー。1989年、米国オハイオ州で創業。今年創業125周年を迎えたしたタイヤ・ゴム事業の老舗企業だ。
現在、世界22か国、48の製造拠点を持ち、ベンツやBMWをはじめとする世界のプレミアムブランド自動車メーカーの新車装着タイヤにも指定されている。こうした高い技術力と実績を背景とした信頼性は、タイヤという、唯一路面に直接接するパーツには欠かすことのできない重要な指標となる。
草津温泉を前に雪が降り始める!! でもオールシーズンタイヤなら安心
自宅を出発して1時間半、関越時自動車道を渋川伊香保インターチェンジで降りる。一般道を走り渋川市内から中之条町を経てどんどん景色は山間部の様子となってくる。左手に吾妻川の流れが寄り添ってしばらく走ると八ッ場ダムだ。
ダムを見渡す絶好のポイントに道の駅があるので立ち寄る。ドアを開けると寒風に身が震えた。外は相変わらずの青空で陽は照っているのでエアコンをかけた車内では気が付かなかったのだが、外気温は6℃と低く、北風が吹いて体感温度はさらに低い。上州の”からっ風”が突き刺さる。
さらに先へとクルマを進める。国道292号線が吾妻川から離れ北に進路を取ると草津方面に向かい、左へ右へと曲がりくねった山道となりどんどんと標高を高めていく。先ほどまでの青空はすっかり雲に覆われ、雨が降り始めた。さらに進み標高が上がると、雨は雪へと変わった。まだ路面を白くするほどではないものの、路面は濡れており、降雪がこのまま続けば真っ白になるのも時間の問題だ。
もし、今日のドライブがサマータイヤを履いたクルマだったら、この時点で帰路のことを考えて引き返す決断をしていたはずだ。この時点の路面状況ではサマータイヤで走れたとしても、この先雪が降り続けば帰るころには積雪路面になっている可能性がある。
とは言え、草津温泉まであと10㎞を切った場所で引き返すのはあまりの残念なので、どこか駐車場にクルマを止めて、この先路線バスで草津温泉中心街を目指す、ということになったかもしれない。
そんなことになったら私の面目丸つぶれだ。日ごろから「クルマの運転は先読みが大切。最悪を想定して、そうならないような先手を打つことが安全運転の秘訣なんだよ」なんて、偉そうに妻に嘯いているのだから、冬タイヤの準備を怠り、草津温泉目前で引き返すなんてことになってはならないのだ。
オールシーズンタイヤを履いていてよかった。余裕の表情で、何事もなかったように先へクルマを進めた。
だが、今日のドライブは『VECTOR 4SEASONS GEN-3』を履いたレヴォーグなので、濡れて温度の低い路面状況を確認しつつ、慎重に、でも安心して草津温泉を目指すことができたのだ。この先雪が降り続き、夕方、帰る時に雪道になっていたとしても心配はない。これこそがオールシーズンタイヤのメリットだ。
レヴォーグは今年2月以来、『VECTOR 4SEASONS GEN-3』を履きっぱなし。春も夏も普通に使い、そして晩秋~初冬の今、週末ドライブでの心強い味方となってくれたのだ。
オールシーズンタイヤは「サマータイヤ」と「ウインタータイヤ」のいいとこ取り
オールシーズンタイヤは「サマータイヤ」とスタッドレスタイヤに代表される「ウインタータイヤ」のいいとこ取り。乾燥した路面でしっかりと走り、雨の高速道路でのハイドロプレーニングにも強く、降雪時にも対応する。
ただ一方で、冬専用のスタッドレスタイヤが存在するには理由がある。北東北や北海道のように冬季は雪が積もり、さらに気温が低くアイスバーンになるような環境下では、やはり専用に開発されたスタッドレスタイヤが必要だ。オールシーズンタイヤは圧雪路では高い安定性、グリップ力を発揮するが、凍結路面ではスタッドレスタイヤには劣るため、充分な注意が必要となることは、ここで伝えておく。
シビアなウインターコンディションであれば、スタッドレスタイヤの使用を強く推奨するのだが、今回の温泉めぐり週末ドライブのように、都内のような非降雪地域に生活拠点があり、たまに北関東の山間部や関越トンネルを越えて新潟県へ足を延ばしてスノーアクティビティを楽しむ、というライフスタイルであれば、オールシーズンタイヤという選択肢も考えたい。
年に2回、春と秋にタイヤを交換する手間を省けるし、外した交換用タイヤの保管場所の心配もいらない。
それに、都内でもひと冬に1~2度は雪が降り、積雪路面になる。実際、昨年1月6日は昼過ぎから降り始めた雪が次第に強くなり、夕方日暮れ前には路面を真っ白にしてしまった。朝は雨すら降っていなかったため、サマータイヤの愛車で出かけたドライバーが帰宅時にクルマを置いて帰らざる得なかった、ということもあった。こんな時にオールシーズンタイヤならば心強い。
私は自動車雑誌の編集という仕事上、冬場に積雪する地域にクルマで行くことも多いため、以前は4月と12月にタイヤ交換をしていた。ところが念のためにと履き替えたスタッドレスタイヤで冬季一度も雪道を走らないまま春になってサマータイヤに履き替える、ということも何度かあった。これだったらオールシーズンタイヤのほうが理にかなっているのでは? そんな思いをいっそう強くした今回の温泉巡りの週末ドライブだったのだ。
文/梅木智晴(ベストカー編集委員)、写真/平野学、ベストカー編集部
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