舌の上ではかなく溶けていく絶品の煮こごり 菜「私がいいなと思ったのは『浅草ひら山』。ここのつまみはどれも洗練されたおいしさで、特に「穴子の煮こごり」が忘れられない。皿の上で型を保つのがやっとなほどふるふるの食感で、舌の温…
画像ギャラリー『おとなの週末』スタッフが、過去の調査店・取材店の中から「あれは旨かった!」と唸った蕎麦前の名品について座談会。ライター肥田木と菜々山、編集の門脇、武内、和賀が語り合います。
極上のムースか赤ちゃんのほっぺたか
肥「忘れられないのが千歳烏山の『東白庵かりべ』の「そばがき」。もうね、これはムースか赤ちゃんのほっぺたか、いやいやおしりか?と脳みそが混乱するほどふわふわ、ほわほわ。熱湯で一気にかき混ぜて仕上げるそうで、薬味とともに味わえばこれが日本酒に合う合う!
おまけにここの「天ぷらそば」もいいよ。かけ蕎麦と、才巻エビがたっぷり入ったかき揚げが別皿で登場するんだけど、これが芸術的にサクサクでいくらでも飲めちゃう。」
武「『かりべ』はそばがきもスゴイけど、実は「板わさ」も素晴らしくて。板わさって単なるかまぼこでしょ?と思って頼んだら、香り高くて上品な甘みがあって。ワサビをちょいとつければもう絶品。あれはビックリしましたね。聞けばハモを使っているそうで。「板わさ」を意識して食べるようになったのはそれ以降ですね。」
門「いいな~オレも目覚めたい。」
和「板わさといえば、学芸大学の『M』。今回掲載できなかったのが無念だけど、板わさを出している店は一度この店に修業に行った方がいいと思う(笑)。それほどに端正で美しくて。
「鰊のさんしょ漬」もたまりません。鰊がうっすら酢〆になっていて山椒もほどよい加減で。「そばがき」も古式ゆかしく手桶で供してくれる。ここで過ごした帰り道はなんだかすがすがしくて、謙虚な気持ちになるんです。」
門「いいね~謙虚な気持ちになりたいもんだね。」
舌の上ではかなく溶けていく絶品の煮こごり
菜「私がいいなと思ったのは『浅草ひら山』。ここのつまみはどれも洗練されたおいしさで、特に「穴子の煮こごり」が忘れられない。皿の上で型を保つのがやっとなほどふるふるの食感で、舌の温度で瞬時に溶けるはかない風情がいいの。」
門「く~。」
武「あっ。もうひとつ思い出した。浅草の『丹想庵 健次郎』の「そばがき」も良かった。小ぶりなそばがきに焼き海苔やワサビ、カツオ節が付いていて。そばがきをちょいとつまんで海苔にのせて、好みの薬味で味わうという。これがぬる燗とバツグンで。」
肥「『銀座 よし田』は「玉子焼き」はもちろん大好きなんだけど、もうひとつおすすめしたいのが「鴨鍋」。スライスされてきれいに並べられた鴨肉のほかに、小さく切られた肉がダシ汁に入っていて。これを煮込みながらぬる燗をチビチビやるワケよ。食べ終わったら鴨の旨みが染み出た汁に蕎麦を入れて鴨南蛮風にして。完璧でしょ!」
武「最高です!」
門「それにしても蕎麦前って年々好きになってくるなあ。蕎麦前最高!」
文/編集部
※2024年5月号発売時点の情報です。
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