2024年6月より各電力会社の電気料金が一斉に値上げされた。これは発電用燃料の価格が安定したため補助金がストップしたため。また現在ガソリン料金は補助金によって引き下げられているが、打ち切られればリッターあたり200円を超えるといわれている。そこで、もしも維持費が安いといわれる軽自動車に乗り換えたら、コンパクトカーと比べてどのくらいオトクなのだろうか?
画像ギャラリー2024年6月より各電力会社の電気料金が一斉に値上げされた。これは発電用燃料の価格が安定したため補助金がストップしたため。また現在ガソリン料金は補助金によって引き下げられているが、打ち切られればリッターあたり200円を超えるといわれている。そこで、もしも維持費が安いといわれる軽自動車に乗り換えたら、コンパクトカーと比べてどのくらいオトクなのだろうか?
軽自動車価格は装備の充実に合わせて上昇中
今の軽自動車は、コンパクトカーと比較して、価格差があまり生じない。その理由は、クルマの価格がサイズではなく、主に部品点数で決まるからだ。今の軽乗用車では、新車として届け出される台数の半数以上がスーパーハイトワゴンになる。全高が1700mmを上まわり、売れ筋グレードでは、左右のスライドドアに電動開閉機能も装着される。
さらにスーパーハイトワゴンは車内が広く、質感もコンパクトカーと同等に高い。シートアレンジも多彩で、収納設備も豊富だ。装備についても、売れ筋車種であれば、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能、サイド&カーテンエアバッグ、フロントシートヒーター、ロールサンシェードなどが採用される。
装備内容は、コンパクトカーよりも充実するほどだから、部品点数も増えて価格も高まった。その結果、軽自動車とコンパクトカーの価格差も減っている。
例えば日本国内の最多販売車種になる軽自動車のホンダN-BOXは、ノーマルエンジンを搭載する標準グレードの価格が2WDは164万8900円だ。右側スライドドアの電動機能など、実用装備のセットオプションを加えると174万9000円になる。
一方、コンパクトカーのホンダフィットは、直列4気筒1.5Lのノーマルエンジンを搭載した2WDのベーシックが165万5500円で、中級のホームは189万4200円だ。コンパクトカーのフィットが高いものの、15万円程度の上乗せに収まる。
軽自動車のスズキジムニーは、ターボエンジンを搭載して、上級に位置するXCの価格が200万2000円(4速AT)。ジムニーのボディに直列4気筒1.5Lエンジンを搭載して、外装パーツを加えたジムニーシエラJCは218万3500円(4速AT)だ。価格はシエラが高いが、ジムニーと比べた時の上乗せは約18万円に留まる。
同程度の装備の軽自動車とコンパクトカーの価格差は20万円以下
このように機能や装備が同程度の車種同士で比べると、軽自動車とコンパクトカーの価格差は20万円に達しない。そしてN-BOXとフィットを比べると、電動スライドドアの装着など、後者の装備が充実する。そのためにN-BOXが買い得と考えるユーザーも多く売れ行きも増えた。近年では、国内で販売されるホンダ車の40%近くをN-BOXが占める。
そして税金や保険料を含めた維持費でも、軽自動車とコンパクトカーでは差があまり生じない。最も出費が異なるのは自動車税で、フィットは年額3万500円、軽自動車のN-BOXは年額1万800円だ。購入時に納める3年分の自動車重量税は、フィット1.5ホームが3万6900円で、N-BOXの標準グレードは5600円になる。
軽自動車は、ボディサイズやエンジン排気量が制約を受ける代わりに、税額は昔から安い。しかし保険料は異なり、保険料収入と保険金支出のバランスで決まる。購入時に納める37か月分の自賠責保険料は、今はフィットが2万4190円、N-BOXは2万4010円だからほぼ同額になった。
またオイルやタイヤの交換費用は、軽自動車が安いが、これも差額は小さい。WLTCモード燃費は、フィット1.5ホームは18.5km/Lで、N-BOXの標準グレードは21.6km/Lだから、N-BOXであれば燃料代を約14%節約できる。
それでも軽自動車で節約効果が最も大きいのは税額だ。そのために軽自動車は、複数の車両を所有する世帯で人気が高い。フィットを4台所有すると、自動車税の合計が年額14万7600円に達するが、軽自動車であれば4万3200円で済む。
軽自動車が選ばれるのは税額が安いからだけではない
いい換えれば都市部を中心とした1台だけの所有では、軽自動車の税額を節約できるメリットは小さいが、最近はN-BOXなどの軽自動車が好調に売られている。その理由は、税額や維持費の安さよりも、車両のデザインや機能に魅力があるからだ。
軽自動車は国内向けに開発されるため、海外向けの小型/普通車よりも、共感の得られる商品が多い。つまり今の軽自動車は、日本のユーザーを見据えたクルマ造りによって販売が好調だ。税額など維持費の安さではなく、車両全体の魅力で選ばれる存在になった。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/ホンダ、スズキ