ニッセイ・バックステージ賞とは、舞台芸術を裏から支え、優れた業績を挙げていらっしゃる舞台技術者、いわゆる「裏方さん」たちを顕彰する賞です。華やかな舞台の裏側で舞台づくりに不可欠な仕事をされている方に光をあて、そのご労苦に報いるとともに、後継者の人材育成のための一助になればという願いのもと1995年に創設されました。そして、2024年11月27日に日生劇場にて第30回の受賞者の表彰式が行われました。
画像ギャラリーニッセイ・バックステージ賞とは、舞台芸術を裏から支え、優れた業績を挙げていらっしゃる舞台技術者、いわゆる「裏方さん」たちを顕彰する賞です。華やかな舞台の裏側で舞台づくりに不可欠な仕事をされている方に光をあて、そのご労苦に報いるとともに、後継者の人材育成のための一助になればという願いのもと1995年に創設されました。そして、2024年11月27日に日生劇場にて第30回の受賞者の表彰式が行われました。
裏方さんが主役〜華やかな舞台を支える「裏方さん」を顕彰〜
「舞台芸術は総合芸術である」と言われ、数多くの分野の人材、あるいは才能の結集によって制作、上演されています。表舞台に立つ、作者、演出家、俳優といった方々は脚光を浴びる機会が多い一方、「舞台を支える=『裏方さん』」は、ともすれば注目されることもなく評価を得難いのが現状です。
公益財団法人ニッセイ文化振興財団では、これら舞台を支える「裏方さん」たちにスポットを当てることにより、華やかな舞台の裏側で、舞台づくりに不可欠な仕事の数々を紹介してきました。
1995年に創設以来、これまで大道具、小道具、衣裳、照明、音響、歌舞伎床山、舞台監督、ピアノ調律、ライブラリアン等様々な分野において、永年に亘って舞台づくりに貢献されてこられた素晴らしい方々が受賞されています。
第30回「ニッセイ・バックステージ賞」受賞者
こちらでは第30回「ニッセイ・バックステージ賞」受賞者をご紹介いたします。
※敬称略
石坂慎二/児童演劇統括団体の運営
1947年富山県滑川市生まれ。1966年に上京し、児童劇作家の斎田喬氏に師事。
1970年「学生児童劇団<ピッポ>」を創立。1974年(社)日本児童演劇協会(現在【公社】日本児童青少年演劇協会)の事務局次長として入局。
1988年に事務局長に就任後、2024年まで50年以上に亘り、児童青少年演劇の普及と発展に取り組む。主に「児童演劇地方巡回公演」事業の運営に従事し、特に演劇に触れることの少ない離島や過疎地、障がいを持った児童たちなどに向けた巡回公演を企画制作し児童青少年演劇の普及に尽力した。
また、1988年より(アシテジ【ASSITEJ】国際児童青少年演劇協会)日本センター事務局長に就任し、児童青少年演劇分野においてアジア諸国を中心とした国際交流にも尽力し、2020年には第20回アシテジ世界大会の日本での開催(新型コロナウィルスの影響を受け1年の延長を余儀なくされるも、対面とオンラインのハイブリット型での開催により成功させた)を副実行委員長として支え、日本における児童青少年演劇の振興に大きく貢献をした。
櫻井忍/ステージグリーンコーディネーター
1955年神奈川県横浜市生まれ。武蔵野美術短期大学卒業。
株式会社東光園(現グリーン・ワイズ)に入社、百貨店生花装飾に携わる。退社後は、フリーランスとしてロイヤルコペンハーゲン専属の生花装飾を担い、Georg Jensenのクリスマス装飾なども手掛けた。
1991年配偶者・櫻井俊郎が有限会社C-COMを設立。これを機に、植栽担当として舞台の世界へと活躍の場を広げることとなった。
1996年『草迷宮』(蜷川幸雄演出、中越司美術)にて本格的に舞台装飾のデビューを飾る。
2006年『秘密の花園』(三枝健起演出)、翌年の『動物園物語』(青井陽治演出)では、舞台美術家の朝倉摂と出会い、公私共に様々な教えを受けた。ほかにも、2012年には初演『ジェーン・エア』(ジョン・ケアード演出、松井るみ美術)に携わった。
生花装飾を応用し、より舞台に適したサスティナブルな草、木、花の開発を目指すとともに、独自の手法で新たな素材を編み出すなど数多くの実績を築き上げ、唯一無二の舞台植栽家として多くの美術家からも信頼を得ている。
現在は、植物の樹形、分布、季節からみた造形の在り方、自然と舞台との調和について実作業を通して後進の育成に努めている。
第30回記念特別表彰「奨励賞」受賞者
続いて第30回記念特別表彰「奨励賞」受賞者をご紹介いたします。
※敬称略
新井智子/かつら製作
東京アナウンス学院演出デザイン科を卒業後、2004年に細野かつら店に入社。以降かつらや髭の制作について学び始める。和物から洋物まで幅広いジャンルの舞台を経験し、女形・立役に拘らず現在もより優れた表現方法を求め日々研鑽を摘んでいる。
文学座や文化座等様々な劇団の舞台や石井ふく子舞台作品「初蕾」「女たちの忠臣蔵」「春日局」や蜷川幸雄舞台作品「新・近松心中物語」「NINAGAWA・マクベス」等に一社員として参加。
2度の産休、育休を経ながら仕事を続け、近年は習得した技術を使い2.5次元舞台に作品を提供したりイベントやバラエティ番組等にも携わっている。
牧純子/舞台美術・背景製作
愛知県立芸術大学日本画学科卒業。2009年㈱俳優座劇場舞台美術部入社。2011年背景課に配属。同じ課の先輩、奥野可奈氏に師事。様々な大道具の仕事の中でも特に幕に絵を描く仕事(描き割り)の技術や細やかなコツやヒントなどの指導を受ける。
また、アメリカの技法トランスルーセント幕に魅了され、2014年にScenic Art Studioの門戸を叩き、現在でもJane Snow氏に師事するほか、テレビドラマ、映画の現場でエイジングを学んだりと、様々な技法を習得。
現在は日本画で学んだスキルとデッサン力を活かし、得意とする空幕や日本画の題材、墨絵、人物画を中心に描くことが多く、劇団☆新感線、劇団四季、劇団民藝の作品や、「屋根の上のバイオリン弾き」「イン・ザ・ハイツ」「マイフェアレディ」など、舞台の仕事を中心に国内外で通用するScenic Artistを目指して活躍している。
山本周平/舞台美術製作
武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。舞台美術に興味を持ち、2009年金井大道具株式会社に入社。生産管理本部 大和工場美術グループ所属。国立劇場の歌舞伎・文楽・舞踊公演を中心に、古典芸能の背景作画などの美術業務に携わる。
主な公演としては、「伊賀越道中双六」「南総里見八犬伝」「蝙蝠の安さん」「京乱噂鉤爪」「夢市男達競」等。国立劇場の公演以外では、新春浅草歌舞伎、四国こんぴら歌舞伎大芝居、松竹大歌舞伎、NHK 古典芸能鑑賞会などを担当してきた。
また、2017年・2019年には、ニューヨークのScenic Art Studioにてルーセントドロップの美術研修に参加し、異なる分野の舞台美術に触れる事で知見を深め、作画技術の幅を広げている。日本の古典芸能の作画技術を未来へ繋いでいく為、培った経験と知識の次世代継承にも取り組んでいる。
文/おとなの週末Web編集部
写真/おとなの週末Web編集部、日生劇場