69歳のオイラ。血圧高めのジジイとして、塩分の摂りすぎを気にしているので、醤油をたくさん使う酒肴については、じつは案外控えています。 でも、大寒(だいかん=1月20日からの2週間)の頃に出回る、青森・十三湖産や、島根・宍…
画像ギャラリー69歳のオイラ。血圧高めのジジイとして、塩分の摂りすぎを気にしているので、醤油をたくさん使う酒肴については、じつは案外控えています。
でも、大寒(だいかん=1月20日からの2週間)の頃に出回る、青森・十三湖産や、島根・宍道湖産の大ぶりのしじみを見つけると、心が騒ぐのです。この時期のしじみは「寒しじみ」と呼ばれ、とくに重宝されます。寒さゆえ、湖の底深くに潜っていて「栄養をたっぷり蓄えているから」とされています。
「あ~~、しじみが食べたい。味噌汁もおいしい。でも、もっと食べたいのは……」
はい、それは醤油の中でしじみが泳いでいるような一皿。ツルンとした味わいが絶妙の「しじみの紹興酒醤油漬け」です。
しじみの紹興酒醤油漬けは、台湾料理店などでよく出てくる一皿です。限りなく生に近い食感で、紹興酒とにんにくがきいた醤油味の一品。
もちろん、それほどたくさん食べるものではありませんが、お酒のスタートには最高の一品と感じています。疲労回復の働きをするアミノ酸・オルニチンが豊富で肝臓にもいいらしい。
その昔、オイラがこのしじみの一皿に出会ったのは、六本木のバーでした。30年以上も前のことです。「都会のおとなは、こんなうまいものを肴に酒を飲んでいるんだな」と感心したものです。
台湾でも食べたことがありますが、生のしじみを凍らせて紹興酒と醤油に漬けているからこその「ツルン、プルン」の味わいだったと思っています。
生しじみは「加熱してから漬ける」が鉄則
ネットで検索してみると、今も冷凍庫で凍らせた生しじみを使ったレシピも出てきます。そのうえで、フライパンで炒めて、ほんの少しだけ口が開いたもの(半生状態か……)を使うなど、「しじみワザ」はいろいろあるようです。
ただし、しじみは二枚貝。感染性胃腸炎の原因となるノロウイルスの感染源は、二枚貝もそのひとつとされています。さすがに今のご時世、うまいからといってしじみを生、もしくは半生で味わうわけにいきません。
もちろん、普通に加熱すれば何も問題はありません。そこで、先人たちはいろいろ工夫をこらして、限りなく生に近い味わいのしじみ紹興酒醤油漬けを追及されています。
料理愛好家の平野レミさんもその一人。オイラは仕事で何度かご一緒させていただきましたが、そのしじみ愛は素晴らしく、「酒好きの逸品 ほろ酔いしじみ」として、独特のレシピをご自身のウエブ「remy」にアップされておられます。文章も、お味も絶品、さすがです。
ならば「オイラも……」と、限りなく生に近い加熱したしじみ紹興酒醤油漬けに、ここ数年挑戦してきました。もちろん、厚生労働省が推奨する「中心部が85度~90度で90秒以上の加熱」に留意しての手作りです。
結論から申し上げると、加熱しても十分おいしい一皿になります。
しじみを冷ましたうえで紹興酒と醤油に漬け、さらに冷蔵庫で冷やしから食べるため、その食感はツルンとした味わいを保っているのです。
台湾料理店、居酒屋以外ではなかなかお目にかかれない味で、オイラの記憶では、デパ地下でもお目にかかったことはありません。まさに、手作りならではの大寒の味わいなのです。
超かんたん「しじみ紹興酒醤油漬け」作り方
しじみ紹興酒醤油漬けの作り方はとても簡単です。砂抜きしたしじみをゆで、紹興酒と醤油、にんにく、しょうが、赤唐辛子を合わせて、さました漬け汁に一晩漬けるだけです。
おいらは、そのうえで、買ってきた生しじみを一度冷凍してから作っています。しじみを冷凍することで、肝臓によいとされるオルニチンが何倍にも増えるという説もありますが、要は台湾などでではしじみを凍らせてから作るのがお約束ともうかがったからです。
また、オイラの作り方は、にんにくと赤唐辛子をかなり多めに使います。このあたりはお好みで加減してください。
ざっくりとした作り方をご紹介いたします。
●仕込み編
1)しじみは殻をこすりつけるように水洗いする。
2)塩水で砂出しをする。しじみ400~500gなら、同量の水に粗塩大さじ1(15g)を加えて、小さめのバットやボウルなどに入れしっかり砂出しする。
3)砂出しが終わったら、しじみを重ならないように、ジップロックなどの冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で冷凍する。
【ポイント】砂出しが不完全だと、食べたときにジャリっとなります。冷蔵庫に入れるか、冬なら野外に置いて4~5時間は砂出ししたいところです。 冷凍は、丸1日で十分らしいのですが、オイラは10日間くらい入れっぱなしのものでも作っています。それでも、ゆでると、ちゃんと貝が開きます。これは「冬眠」状態になっているからなのか?
●漬け編
4)しじみの漬け汁をつくる。生しじみ400~500gに対しての分量です。
5)漬け汁の材料は、しじみ400~500gなら、紹興酒60ml、醤油60ml、にんにく4片、しょうが1かけ(15gくらい)、赤唐辛子3本。
6)小鍋に5)の材料を入れ、ひと煮立ちさせ、ガラスボウルに入れてさます。
【ポイント】にんにくは、薄切りにしても、包丁の柄などでつぶすだけでも大丈夫。しょうがは薄切りにしたほうがいい感じです
7)冷凍しておいたしじみを水洗いし、沸騰した湯の鍋に入れ、ゆでる。
8)しじみから出る白い泡のようなアクを取りながら、しじみの口が開いたら、スプーンなどで、ザル付きのボウルにさっと上げていく。しじみは大きさが異なるため、口が開く時間がそれぞれ違います。なので、口が開いたら、即すくい出します。
9)すくい出したしじみはザル付きボウルのまま、さます。しじみのゆで汁1カップ(200ml)を別の容器に取り、同様にさましておく。
10)ガラスボウルに入れた漬け汁、口の開いたしじみ、しじみのゆで汁が完全にさめたら、ガラスボウルの漬け汁に、しじみと、しじみのゆで汁1カップを入れ、合わせる。
しじみが漬け汁にひたるくらいのガラスボウルを用意します。この状態で冷蔵庫に一晩おけば、出来上がり。3日以内に食べきるようにしましょう。
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…つづく連載の「うまい酒肴を『ドカンと食べたい』…物価高騰、年金生活の60代男性が編み出した『身の丈を楽しむ』意外な秘策」」では、66歳の筆者の二十四節気「しめ鯖づくり」、その手仕事をお伝えしています。
文・撮影/沢田浩
さわだ・ひろし。書籍編集者。1955年、福岡県に生まれる。学習院大学卒業後、1979年に主婦と生活社入社。「週刊女性」時代の十数年間は、皇室担当として従事し、皇太子妃候補としての小和田雅子さんの存在をスクープ。1999年より、セブン&アイ出版に転じ、生活情報誌「saita」編集長を経て、書籍編集者に。2018年2月、常務執行役員パブリッシング事業部長を最後に退社。