雑誌『おとなの週末』と並んで食のエンターテインメント雑誌として弊社より発売中なのが『第25回 業界最高権威 TRYラーメン大賞 2024-2025』だ。通称“ラーメン官僚かずあっきぃ”として数多くのメディアでラーメン情報を発信している田中一明氏は、そんなTRYラーメン大賞の審査員も務めつつ、日本中で年間700杯以上ラーメンを食べ歩いている。TRYは基本的に関東圏をメインに店舗を紹介しているが、本連載(※不定期)では田中氏にTRYの垣根にこだわらずに気になっているラーメン情報を紹介していただきたいと考えています。
ノールールでラーメン店を紹介してください
先日、グルメ情報メディア『おとなの週末』Webの編集の方から、「ラーメン店の紹介コラムを書いてみませんか」というお誘いをいただいた。「紹介する店舗の場所や味について、リクエストはありますか」とお尋ねすると、とにかく自由に選んで書いて構わないらしい。
オープンして間もない新店でも創業数十年クラスの老舗でも良いし、お店の場所も問わないという。これまで、私は、例えば、1年以内にオープンした一都三県の新店や、東京都内の行列店など、自分なりに何らかの設定を課した上で、紹介記事を書いてきた。
この『おとなの週末』では、あえて、そんな条件は一切設けずにノールールで、書きたい店について綴っていければと思う。「目的のない旅」のようだが、私も、そろそろそんな旅をしても許される年頃だろう(笑)。
自分が書きたい店を自由に選んで良いということなので、記念すべき第1回目は、2024年9月14日にオープンした、東京都板橋区の新店「中華そばの店みのひ」について書いてみたい。
ラーメンの食べ歩きをライフワークとする「ラーメンマニア」
さて。ここで私が一体何者なのかを、簡単に述べておこう。私はラーメンの食べ歩きをライフワークとする、いわゆる「ラーメンマニア」だ。「ラーメンマニア」とは何者か。答えは実に単純だ。ラーメン店へと赴き、ラーメンを食べる。
その繰り返しが「ラーメンマニア」の行動のすべてであり、私の場合、この行為を、かれこれ30年近くにわたり、ほぼ毎日繰り返している。
30年近くもラーメンを啜り続けると、どうなるのか。確実に言えることは、ラーメンという食べ物に慣れる。とにかく慣れます(笑)。
毎日ラーメンを眺め、味わい、感想を綴り続けると、やがて、ラーメンを観ただけで、そのラーメンの「あらまし」が予測できるようになる。
スープの色、油の浮かび方、麺の質感、チャーシューやメンマの形状などで、口を付ける前から、大体、それが、どんなラーメンなのかが分かるようになるのだ。
美味しいラーメンにも日常的に接するので、戴いた時の感動が他の人よりも薄れてしまうのは、悲しいことだ。食べ慣れることは、おいしいと感じる喜びの一部を逸失することなのかも知れない。
ただ、そんなラーメンのおいしさを知り尽くした、私のような重度のマニアであっても、ごく稀に、口にした瞬間、いや口を付ける前から、喩えようのない感動を覚える1杯に出逢うことがある。文句のつけようのない味。うーん、ちょっとニュアンスが違うな。感動を覚えるのは、決して味の良さだけが理由ではない。
これから先、ラーメンを食べ歩き続けても、少なくとも当分の間は、これを超えるものには出逢わないだろう。そんな感覚が、感動へと転化されるのだ。ラーメンマニアは、こんな1杯と出逢い、感動を与えてもらうために、ラーメンを食べ歩き続けていると言っても良いだろう。