旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■ホクホク
正解:トチの実
難易度:★★★★★
食べられるまで1カ月以上!?
トチの実とは、ムクロジ科トチノキ属に属する落葉高木、トチノキの果実の中にできる種子です。一般に「トチの実」と呼ばれている栗のような部分は、厳密には果実の中に入っている種子です。
見た目は丸みを帯びた栗に少し似ていますが、表面は漆塗りの工芸品のように滑らかで、深い赤褐色と艶やかな光沢を持っています。
トチノキの果実が熟すのは、9月から10月頃。樹高が25mほどに達することもある大きな木で、秋を迎えると厚い果皮が割れ、中から黒褐色の種子が地面へ落ちてきます。
ただし、拾ったばかりのトチの実をそのまま口にすることはできません。生の種子にはサポニンやタンニンなどのアクの成分が含まれ、強い苦味やエグ味があるためです。食用にするには、十分なアク抜きをする必要があります。
アク抜きの方法は地域によって異なりますが、昔ながらの方法では、食べられる状態になるまで1カ月以上かかることもあります。
農林水産省が紹介する京都府綾部市の製法では、まず拾い集めた実を2日間ほど流水にさらし、その後約1カ月間天日干しにします。乾燥させた実をお湯で温めて皮を軟らかくし、鬼皮と渋皮を丁寧にむき取ります。
さらに、実を水からゆでて木灰を加え、2~3日間保温しながらアクを抜きます。木灰からできるアルカリ性の灰汁を利用し、強い苦味やエグ味を取り除いていくのです。
灰の量や温度、漬ける時間の見極めには、長年の経験が必要です。アクが十分に抜けなければ強いエグ味が残り、処理の仕方によっては実が崩れてしまうこともあります。
このように、トチの実のアク抜きには専門的な知識と経験が必要なので、市販されているアク抜き済みの実や加工品を利用すると安心です。
アク抜きを終えたトチの実は、独特のほろ苦さと香ばしい風味を楽しめます。
もっとも代表的な食べ方が「とち餅(栃餅)」です。アク抜きした実をもち米と一緒に蒸してつくことで、淡い茶色をした風味豊かな餅に仕上がります。
そのほかにも、生地に練り込んだせんべいやあられ、クッキー、羊羹など、各地の山間部で伝統食や郷土銘菓として受け継がれています。



