愛知県岡崎市の八丁味噌や碧南市の白醤油、みりん、半田市の酢など愛知県は古くから醸造業が盛ん。江戸時代、それらは知多半島から船で江戸に運ばれて、寿司の酢や蕎麦つゆのみりんに用いられたのである。つまり、愛知県産の調味料がなければ、江戸前の食文化は成立しなかったのだ……。
からあげも! レモンサワーも! 旨いだけでなく、身体にもよい発酵食品がテーマの居酒屋/名古屋エリア限定グルメ情報(9)
愛知県岡崎市の八丁味噌や碧南市の白醤油、みりん、半田市の酢など愛知県は古くから醸造業が盛ん。 江戸時代、それらは知多半島から船で江戸に運ばれて、寿司の酢や蕎麦つゆのみりんに用いられたのである。 つまり、愛知県産の調味料がなければ、江戸前の食文化は成立しなかったのだ。 名古屋人の私としてはハナ高々である。
そんな愛知県の醸造文化に着目し、今年7月、柳橋中央市場の近くにオープンしたのが『醸しメシ かもし酒 糀や』。 ここでは、自家製の塩麹や醤油糀、ヨーグルトのほか、厳選した味噌や醤油、みりんなど発酵食品を使った料理が楽しめる。
「私自身、塩麹を使った料理にハマって、ついには自分で塩麹を作りました。瀬戸内海の藻塩がベースですが、市販のものとは比べものにならないほど美味しかったんです。この塩麹を使った料理が出せないかと思ったのがきっかけです」と、語るのは、マネジャーの佐藤正和さん。
メニューは、巷の居酒屋でよく見かけるものばかりだが、すべてに発酵食品が用いられている。 たとえば、「発酵五種ポテトサラダ」(580円)。 その名の通り、アンチョビとヨーグルト、チーズ、塩漬けにした大豆を発酵させて干した豆豉(トーチ)、乳酸発酵させた北欧ピクルスの5種類の発酵食品が入っている。 「ポテトサラダにヨーグルトを加えると、マヨネーズの量を抑えることができます。ヘルシーですが、豆豉やチーズが味に深みを与えます」(佐藤さん) 発酵食品がそれぞれケンカすることなく、見事に調和している。 こんな合わせ技ができるのも発酵食品ならではだろう。 ジャガイモの旨みを引き出しているだけでなく、佐藤さんの言う通り、味に深みを感じる。
ここの真骨頂は、発酵食品を使った鶏肉料理。 「国産若鶏の菌肉からあげ」(780円)は塩麹に漬け込んだ若鶏のもも肉を米油で揚げた一品。 驚くほどやわらかく、ジューシーな肉汁がほとばしる。こりゃ旨い! カレー塩で食べると、なお旨い!
佐藤さんの自信作は、「発酵やきとり」(2本700円)。 「塩麹と石川県奥能登産の魚醤『いしる』でマリネした鶏むね肉を使っています。むね肉は焼くとパサつきますが、塩麹と『いしる』によって、しっとりとした食感に仕上がっています。また、冷めても美味しく召し上がれます」(佐藤さん)とか。
これらのメニューとともに楽しみたいのは、「酵素レモンサワー」(600円)。 皮を剥いたレモンを3ヵ月以上漬けた焼酎と、レモンと砂糖と麹で発酵させた酵素レモンシロップで作ってあり、レモン本来の自然な味わいが楽しめる。 塩麹や醤油麹は何年か前に大ブームとなった。 最近では、甘酒や塩レモンが注目を集めている。 ここの客層のメインは流行りモノ好きな女子と思われるかもしれないが、健康を意識している中年男性が多いという。そりゃそうだ。アラフィフの私にとってもど真ん中なのだから。
永谷正樹(ながや・まさき) 1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。
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