ニッポン“チャーラー”の旅

長野・飯田の旅で出合った食堂のチャーラーの旨さに衝撃! /ニッポン“チャーラー”の旅 第13回

長野・飯田の旅で出会った食堂のチャーラーの旨さに衝撃! /ニッポン“チャーラー”の旅 第13回

長野・飯田の旅で出会った食堂のチャーラーの旨さに衝撃! /ニッポン“チャーラー”の旅 第13回

チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。今回は、ひとり旅で長野県へ出かけたときに出合ったチャーラーのお話。地元で愛される食堂のそれは、理想のチャーラーでした。

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私事で大変恐縮だが、12年間乗った車を4月から社会人となる長男に譲り、前から欲しかった車を購入した。4年落ちのルノー・カングー。

機材の積み下ろしを考えると、スライドドアは必須だが、国産車はどれもデザインが今ひとつ。それがカングーを選んだ理由だった。実際に乗ってみると、視界の広さや、ややかためなシートの座り心地、高速での安定性などハンドルを握るのが楽しくなった。

行き先を決めないひとり旅

休日には行き先を決めずにカングーで旅をするようになった。好きな音楽を聴きながら、ひたすら国道を走り続けるのだ。これがまた楽しい。

午前中に出発して、夕方に帰宅することを考えると、片道約3時間。旅先で昼食を摂って、少し観光をするというスケジュールとなる。そこで考えたのは、昼食を“チャーラー”にすれば、そのまま「チャーラーの旅」になるのだ。

愛車のルノー・カングー

3月初旬の日曜日、黄砂と雨で汚れていたカングーを洗車したら、無性に出かけたくなった。気がついたら、国道19号線を愛知県春日井市から長野県方面へと走らせていた。19号線は、東名春日井インターを超えると、渋滞が少なくなる。信号も少ないのでドライブにはぴったりなのだ。

岐阜県多治見市を抜けて、恵那市、中津川市と、どんどん北へ。出発時は晴れていたのに、中津川へ入ったあたりから雪が強くなってきた。せっかく洗車したのに……。

岐阜県と長野県の県境まで来たところで昼になった。このまま19号線をまっすぐ行っても、飲食店は少ない。あったとしても観光客向けの店くらいしかない。そこで153号線で飯田方面へ走らせた。

『中華そば・大衆食堂 新京亭』外観。店はJR飯田線飯田駅から徒歩1分

飯田へ入ってからコンビニに車を止めて、チャーラーが食べられる店をスマホで検索。見つかったのが、JR飯田駅前にある『中華そば・大衆食堂 新京亭』である。店のHPによると、創業は1967(昭和42)年。半世紀以上にわたって地元で愛されているようで、これは期待できる。

店に到着したのは、13時半頃。あえて昼のピークを避けたのだが、店の前に5、6人が待っていた。やはり、人気店のようだ。店の前に置いてあった受付用紙に名前を書いてしばらく待つことに。

5分ほど経ったところで名前を呼ばれて店内へ。メニューを見ると、中華そばやチャーハン以外に麺類は五目そばや焼きそば、ご飯ものにカツ丼、親子丼などもあった。それが「大衆食堂」を店名に冠している所以だろう。

メニュー。「揚げ餃子」や「トン汁」も気になる

今でこそ街から食堂が消えつつあるが、実は、昭和30年代から40年代は食堂こそが飲食業界の花形だったという。何しろ、うどんやそばなどの麺類や丼もの、定食、さらには洋食や中華まで楽しめる、今で言うファミレスのような業態だった。

昭和の終わり頃から平成にかけてラーメンや中華、洋食などの専門店が増えると、食堂は人気のメニューを絞り込んで提供するようになった。おそらく、ここ『新京亭』も同様だろう。昔ながらのカツ丼や親子丼に心が揺らいだが、「中華そば」(650円)と「チャーハン」(750円)を注文した

ピロンピロンのトゥルントゥルンのモッチモチ麺

まず、チャーハンが目の前に。間髪入れずに中華そばも運ばれた。いかにも食堂のチャーラーである。うん、美しい。今どきのラーメン店のような華やかさはないものの、美しさを感じるのはなぜだろう。もう、このビジュアルを目にしただけで旨いと確信した。それでは、いざ実食!

「中華そば」(650円)。麺に特徴がある

中華そばは、澄みきった醤油ベースのスープにやや太めのストレート麺が印象的。具材は脂の少ないロースのチャーシューとメンマ、ネギといたってシンプル。

まずはスープをひと口。見た目の通り、あっさりとしている。後味がほのかに甘い。これは豚肉から染み出た旨みだろう。今どきのラーメンを食べ慣れていると物足りなさを感じるかもしれないが、食堂の中華そばはこれが正解なのだ。

そして、特筆すべきは麺。よく見ると、平打ちとまではいかないが、やや平べったい。というか、パスタのリングイネのように楕円形をしている。麺をすすってさらに驚いた。コシはなく、ピロンピロンのトゥルントゥルンのモッチモチなのである。それは稲庭うどん的であり、冷や麦的。少なくとも、私が暮らしている愛知県ではお目にかかったことがない。

あ、そういえば、何年か前に飯田市へ来たときに立ち寄った『上海楼』という老舗のラーメン店もここと同じような麺を使っていたことを思い出した。飯田ではこの麺がメジャーなのだろうか。

「チャーハン」(750円)。素朴なビジュアルとは裏腹にコショウがきいたスパイシーな味わい

口の中にスープと麺の旨みの余韻を残した状態でチャーハンを頬張ってみる。うん、チャーシューというか、豚の旨みと塩気がよい感じにまとまっている。パラパラ系の食感はこれまた食堂っぽい。具材はチャーシューとネギ、卵、そして、よく見るとコーンも。

ん? あれ? 後からコショウの辛みがじんわり。刺激を和らげるために中華そばのスープを飲むと、あっさり味と見事に調和している。

中華そばとチャーハンをそれぞれ単品で食べるよりもセットにして交互に食べた方が絶対に旨い! 果たしてこれは計算してのことなのか。それとも偶然だろうか。いずれにしてもチャーラーとしては理想的な形である。いやー、飯田まで来てよかった!

『信州平谷温泉 ひまわりの湯』。入浴料は大人(中学生以上)800円、小人(3歳〜小学生)500円

お腹が満たされたところで、せっかく飯田まで来たのだから、というよりは雪が降っていてムチャクチャ寒かったので温泉へ入って暖まりたい。そこで車で40分ほどの場所にある『信州平谷温泉 ひまわりの湯』に立ち寄ることに。

ぬるめのお湯にじっくりと浸かると、身体の芯から暖まった。それまで冷たかった足の指先もポカポカになった。で、湯上がりにコーヒー牛乳。うーん、染みるねぇ。

帰りも下道でのんびり。200km以上走ったと思うけど、全然疲れていない。行き先を決めないチャーラーの旅、次回は新緑の季節に行きたいなぁ。

取材・撮影/永谷正樹

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