【栄養士解説】酢豚にパイナップルって必要? 「味と栄養」から永遠のテーマを徹底検証!

酢豚を注文して、パイナップルが入っていたらどう思いますか? 「やった!」と喜ぶ人、「許せない! 入れないで~!」と拒絶反応を示す人にわかれます。もちろん、これは味の好みの話。でも、かなり賛否が分かれるのに、酢豚にパイナッ…

画像ギャラリー

酢豚を注文して、パイナップルが入っていたらどう思いますか?

「やった!」と喜ぶ人、「許せない! 入れないで~!」と拒絶反応を示す人にわかれます。もちろん、これは味の好みの話。でも、かなり賛否が分かれるのに、酢豚にパイナップルを入れるのには理由があるはず……というわけで「味、栄養、歴史」という3つの面から検証してみました。

“美味しい”の基準は人それぞれですが、好みはいったん置いておいて、フラットに検証してみましょう。大前提としてパイナップルは缶詰ではなくフレッシュなものを使うこととします。

文/藤岡操(フードコーディネーター・栄養士)、メイン写真/gontabunta-Stock.Adobe.com

【味を検証】「酢豚にパイナップル」で美味しくなるのか?

まず注目したいのは、パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素。

酢豚に使われる豚肉はゴロッと大きめの角切りだから、肉が硬いと食べづらいうえに美味しく感じられません。そこで豚肉とパイナップルを揉み込んでおくと、パイナップルに含まれる酵素の働きで肉のタンパク質が分解され、しっとり柔らかくなります。

タンパク質分解酵素を持つ野菜や果物は多く、ショウガ焼きを作る際、豚肉にすりおろしたショウガや玉ねぎを揉み込んでおくと、柔らかく仕上がるのも同じ理由です。

野菜や果物に含まれるタンパク質分解酵素は、熱に弱いのが特徴。最後にパイナップルを加えたのでは肉を柔らかくする効果は得られないので、加熱する前にパイナップルを加えて揉み込んでおくことが大切です。

もうひとつ、パイナップルの魅力はジューシーさと甘酸っぱさです。酢豚の甘酢あんも、甘酸っぱいのだから、普通に考えると合わない訳はありません。

ところが、「ごはんのおかず」と思っている脳にとって、パイナップルをかんだときに出る甘酸っぱい果汁は違和感としてキャッチされてしまうのかも?

もし、パイナップルがピューレ状になっていて、甘酢ソースの中に潜んでいたら……。違和感なく、美味しい! と感じるのかもしれませんね。

【検証結果】
パイナップルの酵素の力で肉が柔らかくなり、美味しくなる!
しかし、「ごはんのおかず」という認識のもとでは、「パイナップルのフルーツ感=違和感」となってしまいがち……。

【栄養を検証】パイナップルに栄養的なメリットはある?

果物として馴染み深いパイナップル。酢豚と組み合わせる栄養的なメリットはある? (Photo/K-Stock.Adobe.com)

食材やメニューの組み合わせは、栄養的に理に叶ったものが多くあります。酢豚はどうでしょう?

パイナップルに含まれているのは、ビタミンC、マンガン、ビタミンB群のビタミンB1、B6、パントテン酸、そして、食物繊維、クエン酸などです。

ビタミンC、B群、マンガン、クエン酸は、いずれも代謝に関わる栄養素。代謝をスムーズにすることで、疲労回復、筋肉増強、脂肪燃焼などを後押しします。

豚肉に衣を付けて油で揚げ、甘酢に片栗粉でとろみを付ける酢豚は、糖質、脂質が多め。そこにパイナップルが加わることで、糖質や脂質の代謝を助け、エネルギー化を促してくれるのです。

つまり、酢豚にパイナップルは栄養的には理に叶っているのです!

【検証結果】
酢豚に多く含まれる糖質、脂質の代謝をパイナップルがサポートする!
つまり、栄養的には酢豚にパイナップルは◎

【歴史を検証】本場・中国でも酢豚にパイナップルを入れる?

こちらはパイナップル「なし」の酢豚。本場・中国における“酢豚にパイナップル”の歴史は?(Photo/篠原コーヘイStock.Adobe.com)

酢豚は、広東料理の「古老肉」(グーラオロウ)がルーツ。保存用の設備が充分ではなかった時代、豚を一頭さばいて、少しずつ食べていくうちに、ちょっと古くなった肉を美味しくいただくために、ケチャップまたはしょうゆ、酢、砂糖などを使って甘酢味にしたのが始まりだと考えられています。

「日本人がアレンジして酢豚にパイナップルを入れたのでは?」と思われるかもしれませんが、最初にパイナップルを入れたのは中国人。欧米の影響が強い香港や上海などで、欧米からの要人をもてなすために、古老肉に当時高級だったパイナップルをプラス。もともとの甘酢にパイナップルの甘酸っぱさがマッチし、根付いたのだとか……。

このいわれの真偽は定かではありませんが、パイナップル入り酢豚の発祥が中国であることは事実。中国語でパイナップルは「菠蘿」。「菠蘿古老肉」(ボールオグーラオロウ)という名のパイナップル入りの酢豚が存在します。

とはいえ、中国でもパイナップル入れる派、入れない派に分かれるようで、日本と同じくパイナップルを使ったものもあれば使わないものもあるようです。

【検証結果】
酢豚のルーツは中国の「古老肉」という料理。
そこにパイナップルを入れたのは中国人で、中国でもパイナップル「あり派」、「なし派」に分かれる!

◆  ◆  ◆

ちなみに、中国では白いごはんはあまり食べません。主食は饅頭、麺、お粥などで、おかずオンリーの食事も珍しくないようです。白いごはんと合わせず、饅頭との組み合わせなら、ハワイアンハンバーガーのような雰囲気になりそうですね。それなら、酢豚にパイナップルはあり!?

画像ギャラリー

関連キーワード

この記事のライター

関連記事

収穫を感謝する「加薬うどん」 美智子さまと雅子さま夫妻で交わす大切な重箱

講談社ビーシー【編集スタッフ募集】書籍・ムック編集者

【難読漢字】地名当て かの有名な物語の里

【11月22日】今日は何の日? 辛い!おいしい!美容にうれしい!

おすすめ記事

『琉球かめ~食堂』の“母のちまき”は台湾の味 パイナップルを食べて育ったあぐー豚のチャーシューが入ってる!縁起の良い7種の具材

おひとりさまで「近江牛」を気軽に!『焼肉ライク』でブランド牛がサクッと食べられる

“タワマン”の日本初の住人は織田信長だった? 安土城の「天守」ではなく「天主」で暮らした偉大な権力者の野望

芝浦市場直送の朝締めホルモンは鮮度抜群 高円寺『やきとん長良』は週末の予約は必須

不思議な車名の由来は「ブラックボックス」 ”ミレニアム”に鳴り物入りでデビューした革命児の初代bB 

大分県に移り住んだ先輩に聞く(2) 移住でウェルビーイング「移住とはコミュニティの中でその想いを受け継ぐこと」

最新刊

「おとなの週末」2024年12月号は11月15日発売!大特集は「町中華」

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。11月15日発売の12月号は「町中華」を大特集…