〆は、カレーで 洋食ときたら、煮込みハンバーグ(3200円)は鉄板メニュー。まん丸ふっくらしたハンバーグは、デミグラスソースの濃厚な香りを放ちながら、つやつやのニンジンのグラッセとともに登場しました。箸で切ると、肉ダネが…
斬新な調理スタイルの「バズレシピ」や「至高のレシピ」で話題のリュウジさんは、お酒を飲みながら料理をするというYouTube動画が人気の料理研究家です。レシピの公開だけでなく、Twitter「リュウジの酒場探求記」では気になる飲食店の紹介も。SNSなどの総フォロワー数が760万人以上という「料理のお兄さん」が、感性の赴くままに歩いて街で見つけた「自分史上最高にウマくて、楽しく飲める店」について本音で語ります。
第6回は東京・小石川の「洋食・ワイン フリッツ」です。
ランチのメンチカツに衝撃、引き立て役の「スーパー特選太陽ソース」もすごい
ランチがとびきり美味しい店は、ディナーの期待も裏切らない―。改めてそう感じたのは、出版社の人に連れられて入った洋食店「フリッツ」にて。店は、後楽園駅からほど近い由緒ある「えんま通り商店街」のビル2階にあります。街の洋食屋さんというよりは、フレンチレストランのような落ち着いた雰囲気に、胸が高鳴ります。
最初は、ランチに訪問。「ミックスフライ定食」(各種2000円台)をいただいた中で、特にメンチカツの衝撃が忘れられません。肉の旨味が全てぎっしりメンチに詰まって、頬張ると口の中で肉汁がじんわりあふれ出します。サクッと軽やかな衣まで、香ばしい。シェフの誠実な仕事ぶりが、メンチ1個からでも伝わってきます。
フライにかける「スーパー特選太陽ソース」というウスターソースもすごくよくて、メンチの味を引き立たせるまろやかな舌触りに、すっかり虜(とりこ)になりました。
肉の味がガツンとくる「パテ・ド・カンパーニュ」
ランチに感激したあまり、次はディナーで思う存分アラカルトを満喫すべく再度、訪れました。僕は、コース料理を注文するより、アラカルトで頼みます。自由に選ぶ楽しみがあるから。
必ず最初に頼むのが「パテ・ド・カンパーニュ」。豚肉や鶏レバーのミンチを固めて焼き上げたもので、使う肉やスパイスの種類や量によってシェフの個性が髄所に光る“お店の顔”とも言えるでしょう。
こちらのパテは、肉の味をガツンと効かせた正統派。塩加減も絶妙で、酒飲みの胃袋をつかんで離しません。早くも、白ワインがぐいぐい進みます。
店名の「フリッツ」は、「揚げ物」に由来しているんでしょうね。僕はふだん、あまり揚げ物を食べないけれど、こちらでは「アワビコロッケ」(1個3800円、要予約)をはじめ、名物のフライをいくつか注文しました。
特に印象的だったのが、ロースとんかつ(2200円)。肉厚のロースは柔らかく、中心は鮮やかなロゼ色に染まり、丁寧な火入れの様子がうかがえます。とんかつはソースではなく、ぜひ塩で食べるのがおススメ。ロースの脂に塩を強めにかけて噛むと、口の中で肉の甘味がじゅわっと溶け出し、言葉にできないウマさ!ビールではなく、赤ワインがよく合います。赤も白も、国内外のワインのラインナップが豊富なのもありがたい。
とんかつをみんなでシェアしながら、あれこれフライを食べても、胃もたれや胸焼けは全くナシ。安心して、他の一品料理に手が伸びます。
〆は、カレーで
洋食ときたら、煮込みハンバーグ(3200円)は鉄板メニュー。まん丸ふっくらしたハンバーグは、デミグラスソースの濃厚な香りを放ちながら、つやつやのニンジンのグラッセとともに登場しました。箸で切ると、肉ダネがぎっしり詰まったきめ細やかな断面が現れ、しばし手を止めて見惚れてしまうほど。これぞ、王道!巷で好まれるような肉汁あふれるハンバーグとは、一線を画しています。
どこか懐かしい味わいで、古き良きニッポンの洋食を思わせ、心が和みます。
〆には「カレーライス」(1人前680円)を。具材がカレーソースに溶け込んで、サラッとした口当たりながら、スパイシーなコクがあり、辛口でインパクト大。
ひとりのシェフが、日々腕によりをかけ、作り続ける渾身の逸品は、どれも値段以上の満足感があります。僕自身、料理の勉強にもなって、得られるものが非常に多い貴重なひとときでした。
時にはワインをボトルで頼み、ゆっくりとグラスを傾けながら、料理を心ゆくまで堪能すれば、明日への活力が漲ってくることでしょう。
『洋食・ワイン フリッツ』の店舗情報
〔住所〕東京都文京区小石川2-25-16 LILIO小石川2F
〔電話〕03-3830-0235
〔営業時間〕11時半~14時、18時~20時半
〔休日〕月、不定休あり。2022年の営業は12月25日まで
〔交通〕都営地下鉄三田線春日駅A5 出口から徒歩3分、地下鉄南北線後楽園駅8番出口から徒歩3分、地下鉄丸ノ内線後楽園駅4a出口から徒歩5分
※新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前にお店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。
リュウジ
料理研究家。1986年、千葉市生まれ。Twitter やYouTubeで日々更新する料理動画やレシピが、「簡単に爆速で美味しく作れる」と大人気。YouTube チャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」の登録者数は約340万人で、SNSを含めた総フォロワー数は760万人を超える。Twitter「リュウジの酒場探求記」2022年、定番料理100品のレシピを集めた『リュウジ式至高のレシピ』(ライツ社)で「第9回料理レシピ本大賞」を受賞。2020年、『ひと口で人間をダメにするウマさ!リュウジ式悪魔のレシピ』(同社)に次ぐ2度目の栄誉に輝く。「料理のお兄さん」として自炊の楽しさを広めようと、多方面で活躍している。