オールシーズンタイヤをご存じだろうか? その名の通り、夏も冬も季節を問わず使用できるタイヤである。通常の舗装路面はもちろんのこと、冬の雪道でも安心して走ることができるのがオールシーズンタイヤだ。 冬の突然の降雪。そんなと…
画像ギャラリーオールシーズンタイヤをご存じだろうか? その名の通り、夏も冬も季節を問わず使用できるタイヤである。通常の舗装路面はもちろんのこと、冬の雪道でも安心して走ることができるのがオールシーズンタイヤだ。
冬の突然の降雪。そんなときも慌てず冷静に、当たり前のように愛車を走らせる。そんな“大人の余裕”をサポートするのがオールシーズンタイヤなのだ。
日本の四季を通して安心して使えるタイヤ
特に日本では冬場、雪が降る地域が多い。首都圏に住んでいるドライバーにとっても、ドライブでちょっと足を延ばして群馬県北部や栃木県北部に行けば、山間部では雪道に遭遇する。都心や中京圏、大阪都市圏でも、ひと冬に一度から二度は大雪が降って真っ白になることがある。
そんな日はクルマを使わなければいい……、という選択肢もあるだろうが、朝、出かける時は降っていなかった雪が、帰宅する頃に路面を真っ白にしてしまって身動き取れなくなってしまう、ということもある。
実際、2022年1月6日の都内では、昼過ぎから雪が降り始め、帰宅時間帯の夕方6時ごろには幹線道路でも路面が真っ白になる、ということがあった。夏用タイヤで出かけたクルマはそのままでは走ることができず、チェーンを装着するか、駐車場に止めて電車で帰るなどをするしかなかった。
首都圏や中京都市圏、大阪都市圏など、冬場でも非降雪地域に住むドライバーにとって、冬場にスタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)に交換するということは大きな負担になる。もう1セットタイヤを購入する費用的負担、交換するタイヤを保管しておく場所の負担、さらに、晩秋と初春にそれぞれタイヤを交換するという手間などだ。
実際、これらに地域で冬季、走っているクルマを見てもスタッドレスタイヤを装着しているクルマは少ない。
そこで注目したいのがオールシーズンタイヤだ。
通常の舗装路では一般的なサマータイヤと同等の性能で走ることができるのは言うまでもない。さらに冬季、都市部での突然の降雪や、ドライブで出かけた山間部の雪道でも、専用開発されたゴム素材の特性と、タイヤ表面の溝の形状によって雪をしっかりと掴んでスリップすることなく走ってくれる。
そんなオールシーズンタイヤをいち早く日本に導入したのがグッドイヤーだ。1898年に米国オハイオで創業したタイヤ・ゴム事業の老舗企業、ブランドとして知られており、今年で創業125周年を迎える。
グッドイヤータイヤはF1やインディカーレースなどをはじめとするモータースポーツのトップカテゴリーでタイヤ開発を続け、高い技術力を持つグローバルなタイヤメーカー。世界22か国、48の製造拠点を持ち、ベンツやBMWを始め、世界のプレミアムブランド自動車メーカーの新車装着タイヤにも指定されている。
タイヤは路面と接する唯一のパーツだ。しっかりとしたメーカーの、高い品質が保証された製品を選んでこそ、安心、安全なカーライフが送れる。そんなグッドイヤーが日本のドライバーのために送り込むオールシーズンタイヤとはどのようなタイヤなのか?
以前ベストカーの編集部に在籍したこともある自動車ジャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でもある塩見智氏がワンデードライブをしながら、お伝えしよう。
妻との久しぶりのドライブデート VEVTOR4SEASONS GEN-3で会話も弾んだ!!
「今度はどこで何を取材するの?」。珍しく妻が私の仕事に関心を寄せた。実際には仕事内容を知りたいわけではなく、私が時々話す取材先各地でのランチについて興味をもったのだろう。
「小田原から箱根方面だけど、たまには一緒に行ってみる?」と提案したところ、ふたつ返事で同行決定。かくして今回のテストドライブはやや私用の混じったものとなったのであった。
グッドイヤーのオールシーズンタイヤ『VECTOR 4SEASONS GEN-3』を装着したスバルレヴォーグでドライブへと出た。このタイヤは7年前の2016年、日本市場にいち早くオールシーズンタイヤを本格導入した同社が昨年日本での発売を開始した最新オールシーズンタイヤだ。
主に路面温度が著しく高い状況での走行フィールを確かめながら、東京都内から小田原方面へと足をのばした。
東名高速、小田原厚木道路と自動車専用道路を行く。一般道での印象は初期の『Vector 4Seasons Hybrid』とほとんど同じだが、高い速度域では明らかに『VECTOR 4SEASONS GEN-3』のほうが静粛性が高いことに気づく。特に“シャー”という高周波の音が小さくなっていて、車内での会話も話が弾む。
あれ? 普段こんなに妻との会話ってはずんでいたかなぁ? 新しいコンパウンド(ゴムの素材)とトレッドデザイン(溝の切り方や間隔)によってタイヤ変形を低減することで、操縦性能と静粛性が向上しているという。車線変更をしてみても、乗員の揺れが小さく、揺れが収まるのも早くスムーズだ。
6年前、グッドイヤーがオールシーズンタイヤ『Vector 4Seasons Hybrid』シリーズを日本で発売した。グッドイヤーといえば、我々の世代にとっては長らくF1にタイヤを供給し、数々の名勝負を生み出したアメリカのタイヤメーカーというイメージが強い。
どちらかというとスポーツタイヤが得意という印象で、冬用タイヤのイメージはあまりなかったので、オールシーズンタイヤを他のメーカーに先駆けて日本に本格導入したことがやや意外だったのを覚えている。
舗装路から雪道まで安心して走ることができるタイヤで、安心感が高まる
日本の乗用車ユーザーにとって、オールシーズンというカテゴリーのタイヤは、これまであまり馴染みがなかった。海外ではそういうタイヤも流通していると聞いたことがあったが、日本ではほぼ流通していなかった。
オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤのように雪道に加えて凍結路面にまで対応するわけではないが、雪が薄く積もり始めた程度の路面から圧雪路であれば走行可能な特性をもつ。関越道などの「冬タイヤ規制」区間も通行可能。それでいて暖かいシーズンにはサマータイヤに準じるフィーリングとグリップ力をもつ、いわばいいとこどりのタイヤだ。
トレッドパターンはおなじみのV字シェイプで、ひと目でオールシーズンタイヤだとわかるのだが、『VECTOR 4SEASONS Hybrid』よりも細かな溝(サイプ)が増えており、雨天での走行時の安心感が視覚的にも高まった。また新品に近い状態では見てもわからないが、溝の底ほど溝の幅が広くなる構造を採用しており、摩耗が進行した際のウェット性能の低下を抑制しているという。高速道路での突然の雨にも安心だ。
私自身、これまでは多くの乗用車ユーザーがそうするように、冬の始まりにスタッドレスタイヤを装着し、春の始まりにサマータイヤに戻していた。だが都内在住だとスタッドレスタイヤにしておいてよかったと感じる機会がひと冬に一度もないままサマータイヤに戻すシーズンもある。
いざという時の保険だとは理解はしつつも、もったいないかなと思うこともあった。また集合住宅住まいのため、使っていないほうのタイヤをベランダまで運んでみたり保管サービスを利用してみたり、毎度保管場所、方法にも頭を悩ませていた。
年中使えるタイヤと聞いて、渡りに船と当時乗っていたクルマに『VECTOR 4SEASONS Hybrid』を装着して使ってみたら、これが自分のライフスタイルにドンピシャだった。
私のような、念のためにスタッドレスタイヤを装着しているような地域や用途のユーザーには打ってつけなのだ。年に二度の交換から解放されるのが何よりうれしい。冬場に何度かスキー場も往復したが、凍結していない限り頼もしいグリップ力を発揮してくれた。
だから昨年夏に登場した VECTOR 4SEASONS シリーズの最新版『VECTOR 4SEASONS GEN-3』を早くテストしたいと思っていた。仕事でもあるのだが、また自分のクルマにどうかという私的関心からのテストでもある。そしてついでに妻の機嫌もとろうという下心もあった。
小田原漁港で食事を楽しんだ後は箱根ターンパイクへ
小田原漁港にある魚料理の「さじるし食堂」で半生アジフライ御膳をいただく。妻は特撰さじるし海鮮丼を選ぶ。これ以上の地産地消はなく、新鮮な海鮮は何度食べても、いつ食べても旨い。
腹を満たした後、関東随一の山岳観光道路、自動車雑誌の取材場所などでも知られる箱根ターンパイクを一気に駆け上がった。『VECTOR 4SEASONS GEN-3』は、ハイペースでステアリングを切っても、オールシーズンタイヤにありがちなタイヤの剛性の低さを感じさせず、ドライバーの操作に忠実に車体の向きを変えてくれる。
サマータイヤに比べれば切り始めの反応がややマイルドだが、決してグリップ不足というわけではなく、速度域、道路状況を問わず安心感が高い。
何よりオールシーズンタイヤのほぼ唯一の弱点とも言える“シャー”という高周波のロードノイズが大幅に低減されているので、ロングドライブに最適だ。長距離移動となれば、冬季、出発地は晴れていても目的地は雪という可能性も出てくるが、そんな状況こそこのタイヤが真価を発揮するはずだ。
いつの間にか助手席の住人が満足そうに目を閉じているのは、単に旨いランチで満腹になったからではないはずだ。それを見て、GEN-3は自分のクルマの次のタイヤの候補最有力となった。
【プロフィール】塩見智(しおみ さとし)
1972年岡山県生まれの51歳。地方新聞記者、『ベストカー』、『NAVI』などの自動車専門誌編集者を経てフリーランス・ライターおよびエディターとなる。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。趣味はゴルフ。
文/塩見 智、写真/平野 学、ベストカー編集部